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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
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2-42:動きあり

何て言うか、本当に話の構成下手くそな作者でスマヌ。

 「お待たせ。状況は?」

 「今朝7時頃より、共和国軍の陸戦部隊がシャングリラ内へと展開を開始。市内において聖戦師団と武力衝突へと発展しています」

 「それと時を同じくして、教団から高速艦フリーバー号の護衛依頼が宙賊艦隊に入りましたの。護衛航路はシャングリラからコンラッド迄ですわ」

 「その、フリーバー号ってのは?」

 「教団の保有する要人移動用の艦艇ですわ」


 パルメニア教団が治める宙域にフォラフ自治国家宙域を出撃した共和国艦隊が到着し展開したのが、予想より遅れた昨日11日の夜遅く。そして、12日の朝から教団の中心地たるシャングリラへと陸戦要員を展開させた。教団側からの呼び掛けには一切応じず、いきなりの武力行使に移った様だ。結果として、教団傘下の聖戦師団が共和国軍と市内各地で衝突する騒ぎになっている。そして、そのタイミングで教団保有の艦艇に対する護衛依頼がシャンイン率いる宙賊艦隊へと舞い込んだって訳だ。素人考えで悪いが、乗員はシャングリラからの脱出を目指す教団幹部と見て良いか。星女がその中に含まれているか迄は分からないが。メインとなる宇宙港は既に制圧されているだろうから、他に緊急用の隠蔽された宇宙港があると見るべきだろうな。


 「依頼を受けると言っても、この状況でシャングリラに近づく事は可能なのか?」

 「正面から馬鹿正直に行くのは無理ですね。あれだけの数を前にしては、護衛対象と合流する前に撃沈されるのが関の山です」

 「戦闘艦だけでも300隻近くあれば、シャングリラ周辺に十分な警戒網を展開出来ますわ。その中へと潜り込みながら、かつ護衛もとなると極めて困難ですの」

 「状況的に宙賊艦隊だけでは厳しいな。そもそも、共和国が何故このタイミングで教団傘下のコロニーへ侵攻したのかも気になる。とは言え、悠長に調べている時間も無いだろうし……」


 今まで、3大勢力は何れも教団とは距離を置いて来た。それにも拘らず、今回の共和国軍による軍事侵攻が行われたって事は、共和国内で明らかに大きな方針転換があった事を示していると見て良さそうだ。それが何かは情報を収集して分析するしか無い。とは言え、今は目の前の事態にどう此方が動くかだ。


 「確か、主力艦隊はコンラッドコロニー宙域から離れてたよね?」

 「はい。現在は共和国艦隊の動きに合わせて、主要航路から外れた廃棄コロニーへと一時的に退避させています。秘匿艦隊も間も無く合流する予定ですが、動かしますか?」

 「そうだね。切り札になる秘匿艦隊は除いて30隻対300隻。ガチでやり合うのは厳しいだろうけど、共和国艦隊の注意を引き付けるだけなら、何とかなるんじゃないかな?」

 「その隙を付いて、フリーバー号を私の艦隊で護衛してコンラッドまで退避させれば宜しいのですね?」

 「うん。かなり、と言うか相当に無茶な作戦だけどね。艦艇の脚の差を活かせれば、逃げるだけなら何とかなるとは思う」


 主力艦隊で強襲し、敵艦隊を可能な限り引き付ける。その間にシャンインの宙賊艦隊にシャングリラ宙域へと突入させてフリーバー号を迎え入れる。後は、脇目も振らずにトンズラするだけ。共和国艦は、最も脚の速い駆逐艦でも時速250万kmしかないからな。最高速に乗るまでの初動が上手く行けば、逃げる事は出来る筈だ。とは言え、コンラッドコロニーに逃げた所で直ぐに共和国軍の追撃があるのは間違い無い。


 「コンラッドコロニーに逃げても、共和国の目的が教団幹部だとしたら、直ぐに追手が掛かるだけだよな。シャングリラから大した距離でも無いし……」

 「そもそも、教団の意図が不明ですわ。彼らだって、その程度の逃亡では直ぐに見つかる事は分かっている筈ですもの」

 「……或いは、そっちは元から囮とか?」

 「騒ぎになって警戒網に綻びが生じたタイミングで、本当に重要な人物を別の艦で脱出させると?」

 「あくまでも、思い付きだけどね?」


 囮となる人物が乗艦した艦が派手に逃げ回って見せる事で共和国の注意を引きつつ、本当に逃がしたい人物を別ルートでコッソリと送り出す。昔から影武者とか使った脱出とかあった訳だし、教団が同様の事をやってもおかしくは無いよな。最近、あの宙域で暴れ回っているシャンインの艦隊が護衛に付けば、共和国側が警戒して相応の数の艦を振り向ける可能性もある。まぁ、それが無いにしても万が一を想定して追撃部隊を派遣するだろう。必然的に、警戒網は多少緩くなる。


 「あくまで仮定だけど。そこまでして逃がすとなると、向かう先は何処だ? コンラッド方面は有り得ないし、かと言って逆方向のフォラフ自治国家は共和国の占領下だしな。自治国家近隣宙域も共和国軍の支配下だろう? 自ら罠に飛び込む様なものだよな」

 「教団の保有する艦艇クラスでは長距離航行は難しいですね。途中で補給を受けつつ、帝国乃至連邦方面でしょうか? 或いは、民間の貨物船なりに荷物として紛れ込むかですね。とは言え、共和国側もそれは確実に警戒します」

 「何れに向かうにせよ、共和国の勢力圏下を抜ける必要がありますわ? 或いは、何れかで協力関係にある地下組織にでも接触するのか……」

 「……何れにせよ、情報が手に入らない限り仮定の域を出ないか。一旦、話を戻そう」


 仮定の話を進め過ぎると、その内に仮定の仮定の話とかに飛躍するからな。あくまで、今は確実な事のみで話しを進める必要がある。


 「トロイ用の共和国艦艇が、秘匿艦隊と共に主力艦隊と合流するのが今日の昼過ぎ。ある意味、良いタイミングだったな。これなら、主力艦隊による誘引戦に紛れる形で送り込む事が出来る」

 「偶然とは言え、良いタイミングで送り出しましたね?」

 「まぁ、何事も想定通りにはいかないけどさ。実際、共和国艦隊の動きが全く読めないからな……」


 共和国の一連の動きを、此方の管理AIは此処まで全く掴めていない。艦隊内で、ネットワークを介さない原始的な指示命令系統が構築されているのだろう。どうしても、対応が後手に回らざるを得ない。


 「護衛が上手く行ったとして、問題はコンラッドまで護衛した後ですわね?」

 「護衛完了後は、コンラッドコロニー宙域で主力・秘匿・補給・宙賊艦隊を集結させて迎撃態勢を整える。トロイ艦隊は、シャングリラ宙域の共和国艦隊内に上手く紛れ込んでくれる事を願うしかないな。後は、追撃してくるであろう共和国艦隊を、最大戦力で迎え撃つ。此処からは予定でしかないけれども……、殲滅後は補給が完了次第シャングリラ宙域へと此方から侵攻する。タイミングを合わせて発動させるトロイの木馬作戦が上手く行けば、混乱している最中の共和国艦隊へ仕掛けられるのは大きい」

 「何れにせよ、1つでも想定外が起これば、破綻し兼ねない微妙なバランスですね」

 「既に色々と予定通りとは言えない以上、出来る事をするしかありませんわ」

 「上手く行く。そう思って指揮を執るしかないな」


 全部、上手く行くなんて甘い考えを持ってはいけない。必ず想定外が起こるって気持ちでいないと、いざって時に動けなくなるからな。何事も、用心用心。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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