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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
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2-38:要塞襲撃②

要塞襲撃編続き。

 戦闘アンドロイドによる臨検の際に多少の抵抗はあったものの、想定より幾分かは短時間で8隻の元共和国軍艦艇の軍港への収容が完了した。勿論、火器管制等は全て此方のコントロール下にある。流石に要塞内で魚雷なり発射されるとか洒落にならないからな。で、今は取り合えず軍事ブロックにある監房に押し込んだ。人数が居たので、1つの部屋に付き限界を優に上回る人員を詰め込む事になったが致し方が無いだろう。流石に、其処までの人数を拘束する様な前提で監房は設置されていなかったからな。今後の事を考えると拡張も必要かもしれない。せめて、士官と下士官を分ける位の部屋は必要だな。


 「それで、彼らは何か言ってる?」

 「聞くに堪えない暴言か、卑猥な言葉のオンパレードですね」

 「盛りの付いた猿と大差ありませんの」

 「まともな人間は?」

 「精々、数人と言った所でしょうか。まぁ、全体の雰囲気にのまれて加担した者達も多そうではありますが……」


 その辺の区別が難しいよね。勿論、騒動を先導した連中に手加減する心算は無い。一方で、担ぎ上げられたり乗せられた軍人まで一緒くたにってのは出来れば避けたい。とは言え、それをどの様に判別するかだ。


 「取り合えず、首謀者ないし主導的立場を果たした者を割り出す為に共和国軍のデータベースを参考に人物像をチェックしよう。で、大まかに過激派・反帝国派・和平派に分けて待遇に差を付けて様子を見る」

 「これを機に和平派を取り込むのですか?」

 「いや? 首謀者はどの派閥であろうとキッチリと処罰するよ。それ以外の連中は、あれでもガルメデアコロニーでは貴重な労働力だ。だから、単に彼らを仲違いさせて今後同じ企みを起こさせない為の予防策だよ。1回、空中分解させてしまえば、軍隊とは言え組織なんてものは脆いからね。主導した連中を売ろうとする下っ端も出てくるかもしれない。それに、和平派とは言え引き入れて要塞内の監視対象を、今より更に増やすのは得策とは言えないしな」

 「首謀者には処罰を与え、それ以外の者達は仲違いさせた上でガルメデアコロニーに送り返す形ですね」


 基本的なスタンスはそれで良いと思っている。処罰って言うか、ぶっちゃけ処刑だな。騒動を起こした連中を要塞で養うのは資源の無駄だし、かと言ってガルメデアコロニーに送り返したら再び騒動を起こすだけだろう。ならば、此処でキッチリと断罪し後顧の憂いを確実に断っておきたいと思うのは自然だろう。まぁ、完全に切るのは無理だろうけどな。


 「今回の事もあるし、彼らを送り返し後で補給艦と駆逐艦はこっちで押収させて貰おう。コロニー側に渡したら、また今回の様に悪用されるリスクがあるしな。スキンヘッド紳士は渋るだろうけど、そこは押し切るしかない。送り返す際は、秘匿艦隊から駆逐艦を一時的に抽出してガルメデアまでの護衛に付かせよう」

 「では、急ぎ首謀者の割り出しと分断の手配を行います」

 「なら、私はガルメデアコロニーのサントス氏に事後処理について方針を説明しておきますわ」

 「宜しく頼むよ。俺はちょっと、クロシバと話をしてくる」

 「了解です(わ)」


 今は、オッサンの下に付いているとは言え、彼らはクロシバの古巣の仲間達だからな。食堂とかで会っても、気になるのかソワソワしていて落ち着かない様子だから、ちゃんと話をしておこうと思う。




 「……って感じになるよ」

 「ふむ……。あの者達とて軍人、此度の事も覚悟あっての事だと思いたい。であるならば、私が何かを言うのは間違いだろう」

 「まぁ、首謀者以外は基本的に元の生活に戻るだけだから。多少は、コロニーでの扱いが悪くなるのは避けられないだろうけどさ」

 「それは、必定ゆえ香月殿が気にされる必要は無い。捕虜であろうと、少なくともガルメデアでは人並みの生活が出来ていた。それを自ら泥水へと捨てる様な行為をしたのだ。むしろ、処罰が緩い位だと私は思うがね?」

 「ん~、実質的なうちの損害なんて、弾薬と推進剤の消費位だからな。勿論、首謀者は許さないけど、それ以外はどうでも良いってのが本音だよ」


 極端な話。今回の騒動に関わった共和国の捕虜達を全員処刑してしまっても良いのだ。スキンヘッド紳士から労働力の低下で抗議は受けるだろうが、騒動を起こした方が悪いし、何よりコロニー側に手引きした馬鹿がいる以上、彼が強く出てくるのは無理だろう。じゃ、何故それを選ばないのかって言われたら、気がのらないからってのが最も近い答えだと思う。


 「彼らを片っ端から殺す事で、フォルトリア星系に平和を齎すのが早まるって言うならば、率先して手を汚すさ。でも、実際には何も変わらないと思うよ。なら、彼らにはガルメデアで労働力として奉仕して貰った方が意味があるでしょ?」

 「確かに。香月殿の言う通り、何も変わらないであろうな。むしろ、余計な民意が動いて、本国が更に大きく動く切っ掛けとすらなりかねん」

 「だろ? ならば、最低限の断罪に済ませて終わらせるべきだと思う。後は、コロニー側で適当にやってくれるさ」

 「香月殿。本来ならば知るべき立場に無い私に、わざわざ知らせてくれて感謝する」


 そう言って、頭を下げるクロシバ。何て言うか物凄く律儀だよな。実際、オッサンとクロシバの出会いって敵同士だった訳だしさ。いや、むしろ一方的に此方から戦闘を仕掛けた側だわ。無論、彼がオッサンに忠誠を誓ってくれている訳ではない。あくまで、お互いの利害が一致しているってだけだ。でも、それだけで無い関係を何となく築けている様な気もする。オッサンが日本人で、彼が柴犬を遠き祖とするからだろうか?


 「香月殿。分を弁えぬ質問であるとは思うのだが、副官のコサック少佐は居たのだろうか?」

 「コサック少佐? あぁ、フリーダムの副長か」

 「そうだ。あの男は、周囲に流されやすい性格の持ち主でな。私も何度か注意はしたのだが。今回の騒動を聞いて、何となくだが主導する側に引き込まれている様に思えてな。無論、だとしても加担した責任は彼自身が負うべきだがな」

 「今、主導的な役割を果たした人間を割り出している最中だよ。コサック少佐が関わっているかどうか、どの立場だったか、そう時間を置かずに分かるとは思う」

 「そうか……」


 そのクロシバの呟きにどの様な意味が込められていたかは分からない。同じ艦で共に戦ってきた副官だ。彼なりに思う所もあるのだと思う。とは言え、コサック少佐が結果として主導的な立場であったのならば、厳罰に処す事に変化は無い。そこは、決して譲ってはならない部分だからな。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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