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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
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2-37:要塞襲撃①

罠に掛かった人々。要塞視点のみ

 「どうされたのですか?」

 「ん? あぁ、パルメ嬢をどうしたものかと思ってさ……」

 「今代の星女ですか」

 「そう。助け出すって約束したからね?」


 既に要塞のレーダーで捉えられる地点まで元共和国艦隊の残党達は接近してきていた。オッサン達は、事前に仮眠を取って、今は軽食を摘まみながら司令室で彼らを待っている状態。ちなみに、迎撃に当たる艦隊は未だ要塞内で待機している。事前に展開させてしまうと、気付かれて逃走されるかもしれいからね。キッチリと引き寄せてから叩かないと。後、周辺宙域にばら撒いていた思考機雷も一旦、ルート上からは下げている。爆雷で吹っ飛ばすと色々と都合が悪くてね。大人の事情って奴だ。


 で、そんな状況で時間的な余裕もあったので取り留めの無い思考をしているって訳だ。パルメ嬢には、星女の立場から救い出すと約束した。勿論、彼女がそれを真に受けていない可能性は高い。今の状況にかなり絶望してたしね。しかし、男子足るもの1度言い出した事は出来る限り果たしたい。でも、ぶっちゃけ良い案が浮かばないんだよな。共和国の動きも予想より早かったしね。ぶっちゃけ、共和国が教団傘下のコロニーを占領してくれた方が良いかもしれん。


 「共和国艦隊とのどさくさに紛れて何か出来る事は無いかとも思うけどさ。ぶっちゃけ、戦力を他に割く余裕なんぞないのよね」

 「まぁ、今は目の前の敵を全力で討つしかありませんよ。一馬さんが諦めない限り、活路は必ず開けるかと」

 「ソフィーの言う通りですわ。むしろ、焦ったが為に手から零れ落ちたでは話になりませんもの」

 「そうだな。今は目の前の馬鹿に集中しよう」


 目の前の馬鹿こと、元共和国の連中。ガルメデアコロニー側で手引きした連中は既にスキンヘッド紳士の手で宇宙遊泳しているそうだ。だから、後は此方に来ている連中に手痛い教訓を与えるだけだ。まぁ、慢心せずに迎え撃とう。


 「戦闘AI。敵艦隊到着予想時刻は?」

 『現在、当要塞まで50万km程の地点まで接近中。艦数8』

 「そのまま監視を継続してくれ」

 『了解しました』


 50万kmって聞くと、凄く遠く感じる距離だけど、実際には共和国軍の艦艇ですら15分で到達出来る距離でしかない。要塞の駆逐艦なら更に短く、実に10分の距離でしかない。いよいよ、戦闘開始のゴングが鳴るのも間近になって来た様だ。


 「一応、戦術プランの最終確認だけど。戦艦を正面に出して敵の進路を塞ぐと言うか、驚かせる。で、側面に展開させたシャニッド級から艦載機を投入。敵は恐らく慌てて逃走を図るだろうから、駆逐艦は回り込んで退路を封鎖し包囲すると。後は出来るだけ、艦へのダメージを抑えて無力化する事。補給艦の積荷(・・)は、終わってから考えようか」

 「狙いはエンジンとスラスター、後は武装ですね。艦橋では相応の犠牲が出ますから」

 「むしろ、補給艦の積荷の処理が面倒ですわ」

 「まぁ、中には無理矢理付き合わされている連中も居るかもしれないからね。それに、クロシバにも出来れば1度は投降する機会を与えてやって欲しいって言われているしさ。細かい事を言うならば、2度目のチャンスって事なんだろうけど……」


 ただ、殺すだけなら簡単だ。2隻の駆逐艦と6隻の補給艦なんぞ、戦艦を含む艦隊で迎撃すれば結果は最初から見ている。でも、生かすとなると一転して話は変わってくる。出来るだけ人的被害の出にくいであろう部分を狙って攻撃する必要があるし、無駄な手間も掛かる。後でガルメデアコロニーに送り返すのも時間掛かるし、本当に勘弁してくれって事よ。


 「さてと、戦後処理を考えるのは後回しにして艦隊を出撃させようか?」

 「ちなみに、艦隊名はどうされるんですか?」

 「流石に、要塞待機艦隊ってのはアレですわ……」

 「主力艦隊は使っちゃってるしね。ん~、お仕置き艦隊とか?」

 「「……」」


 自分で言っておきながら、無いなと確信したオッサン。さて、艦隊名か……。センスの無いオッサンには結構難しい任務です。


 「取り合えず、秘匿艦隊とかにしておこう。直ぐに露呈するけどさ」

 「そうですね。現状、重要なのは艦隊名では無く、向かって来ている方々の歓待ですから」

 「じゃ、秘匿艦隊、抜錨。お客さんを歓迎に行こう!」

 『指令、受託。秘匿艦隊、抜錨します。迎撃任務を開始します』


 先ず、艦速のある駆逐艦と巡洋艦が左右に分かれデブリ帯へ紛れる様に展開を開始する。そして、その後で巡洋艦を上回る船体を誇る戦艦がゆっくりと軍港から出撃していく。艦橋前後に搭載された連装300㎜投射砲が物凄く頼もしく感じる。巡洋艦の主砲が副砲だからな、火力は桁違いに高くなっている。


 「流石にデカいな……」

 「そうですね。ですが、空母や工作艦は更に大型艦ですよ?」

 「空母は何となく分かるけど、工作艦もそうなのか?」

 「工作艦は、前線で空母以外の戦闘艦艇を艦内に収容して修理等を行いますので、それに見合った船体サイズをしています」

 「戦闘艦を艦内に収容!?」


 それは、吃驚過ぎる情報ですが? 確か駆逐艦でも全長100mとか無かったか? 巡洋艦で150mクラスだし、戦艦に至っては250mクラスの筈。それを収容出来るとはね……。工作艦恐るべしとしか言いようがありません。全長300m程度はあるのだろうか?


 「一馬様。いよいよですわ?」

 「おっと、シャンインありがとう。さて、向こうはどう出てくるか?」




 「敵駆逐艦、左右に散開! 補給艦を置いて機動戦を開始!」

 「駆逐艦と艦載機隊で頭を抑えて足を潰せ! 戦艦は補給艦に牽制射撃準備!」

 『敵駆逐艦への追い込み開始します。牽制射撃、準備良し』

 「敵補給艦、散発的に機銃射撃を開始ですわ」

 「先に黙らせよう。戦艦、牽制射……ってぇ!」


 船体の側面を見せつつ主砲を補給艦へと向けていた戦艦から、立て続けに電磁誘導により加速された砲弾が放たれる。2艦合計で8発の砲弾が各々の補給艦の直ぐ傍を掠めてゆく。それだけで、水面に浮かぶ木の葉の様に補給艦の船体が揺れた様に思える。実際、あの砲弾が直撃したら補給艦は1発で轟沈待ったなしだろう。


 「駆逐艦及び艦載機隊。敵駆逐艦と交戦を開始!」

 「退路を断ちつつ、削っていこう。無理に距離は詰めるなよ!」

 『敵駆逐艦α。上甲板後部主砲損失。依然、継戦態勢』

 「駆逐艦β。回頭を開始。退路を探している様ですわ」


 多数の艦載機と艦速で上回る此方の駆逐艦に追い掛け回され、良い様に振り回される敵駆逐艦。主砲を乱打しているが、有効打は出ない。必殺を託して発射された魚雷も艦速を活かした回避行動によって目的を果たせぬまま、宇宙を彷徨っている。多勢に無勢の状況でジリジリと削られていく敵駆逐艦。


 元々、相手は数が少なかったからな。この様な数でも質でも圧倒されている状況で、むしろ最初から逃走を図らなかっただけ立派と言うべきか。でも、どのタイミングで撤退を決断したとしても、逃げるのは元から不可能だ。自分達から仕掛けて置いて、体よく逃げられる訳ないわな。


 「駆逐艦β。エンジン部に被弾。速力低下します」

 「βの武装を徹底的に潰せ! 戦意を完全に挫く」

 「駆逐艦α。右舷スラスター被弾。後1歩ですわ!」

 『香月司令官。補給艦、完全に停船しました。機銃射撃も停止した模様です』

 「良し、後は駆逐艦を仕留めて仕上げだな」


 あっと言う間と思うかもしれないが、彼我の戦力に大きな差がある時点で勝ちは確定していた。相手は、戦艦の登場によって初っ端から出鼻を挫かれた事で、完全にペースを乱していたしな。本来ならば、2隻の駆逐艦で要塞の防衛戦力を抑え込んでいる間に、補給艦に乗艦した海兵隊を要塞に上陸させて占領する心算だったのだろう。でも、想定外の戦力を前に作戦など直ぐに瓦解した。後はもう、悲惨なものだ。連携すら失い、ただ己に群がる此方の戦力相手に必死の孤軍奮闘を見せるのみ。でも、それも長くは持たない。


 「駆逐艦α。エンジン被弾。艦速低下していきます」

 「駆逐艦β。全主砲大破確認ですわ」

 「了解。流石に魚雷発射管まで撃ち抜くと、撃沈するリスクあるよな……」

 「そうですね。臨検時に抵抗してくるリスクは残りますが、止むを得ないかと」

 「取り合えず、それ以外の全武装は潰しておこう。通信機器関係も念入りに頼む」

 『了解しました。臨検部隊も準備させます』


 一先ず、今回も此方側の損害は出なかった。とは言え、今後の共和国との戦闘ではそうはいかないだろうな。戦闘に置ける艦の損失を勘定に入れた艦隊建造と運用を考えていかないとならなくなるな。オッサン、出来るだろうか凄く不安。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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[気になる点] > 元々、数が少なかったからな。この様な数ても質でも圧倒されている状況で ても あと少ししたの段で 数でも質でも圧倒 の繰り返しがあるのでくどいかと 圧倒的な戦力差の中 みたいに言い…
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