2-34:主力艦隊、抜錨!
これだけの規模の艦隊を動かせるようになる日が来るとは(えっ
本日、8月22日。いよいよ、主力艦隊の出撃する日となった。既に、事前にコンラッドコロニー宙域へと展開したシャンインの指揮する偽装宙賊艦隊は、拠点を確保し宙賊家業を始めている。何度か過激派宙賊の艦艇とも交戦し、順調に経験を積んでいる様で何より。えっ? 前回から時間が飛び過ぎだって? なら、ダイジェストで前回から今日までの出来事を紹介しようじゃないか。
先ずは、先日。つまり8月8日からだな。あの日の夜遅く、シャンインが指揮する偽装宙賊艦隊(5隻)はランドロッサ要塞を出航していった。艦内には、陸戦要員である戦闘アンドロイドが分乗している。で、翌日の9日にはスキンヘッド紳士経由で教団からの情報提供が届き、それを基にコンラッドコロニー宙域での敵性勢力の絞り込みが行われた訳だ。それから2日後の11日昼前には、宙賊艦隊が該当宙域まで進出し、午後のお茶の時間少し前に過激派に属する宙賊『オルボス』の拠点を強襲し制圧。同宙域での拠点確保が完了した。ちなみに、この際に6隻撃沈、1隻拿捕の戦果を挙げている捕虜等はいない。
次に動きがあったのは、8月15日夜遅く。拠点付近で過激派宙賊『ビッビス』の所属艦艇と交戦が発生し、2隻撃沈している。シャンインによると、この頃から宙賊ネットワークが俄かに騒がしくなってきた様だ。で、記念すべき宙賊としてのデビュー戦となったのが、17日の貨客船『フンバ』号の護衛。第8コロニー『コンラッド』から、第10コロニー『シャングリラ』までの道中を平穏無事に航行させる事が出来た。素晴らしいデビュー戦だな。翌々日の19日にも貨物船『ウォッシュ』号の護衛が舞い込んできたが、この時は前述の『ビッビス』が絡んできたものの、あっさりと返り討ちにしている。此処でも彼らは2隻の艦を失った。戦力ガタ落ちだろうね。で、明日23日もまた別の貨物船の護衛が予定されているそうだ。うん、順調じゃないかな?
さて、要塞の方に着目すると、正直大きな動きは無い。いや、建造ドックは24時間態勢でフル稼働していたけどね。結局、当初の建造計画に加えてシャニッド級巡洋艦(艦載機運用型)を2隻追加建造する事になった。これは、当初は予定していなかった主力艦隊への航空戦力の配備に伴う物だ。ソフィー曰く、共和国軍の中でもフォラフ自治国家に駐留している部隊に不穏な動きがある様だ。しかも、それに伴ってガルメデアコロニー内でも不穏な動きがあるとか。それを受けて戦力強化になったと言う訳だ。最終的に、今夜出撃する主力艦隊は32隻にものぼる大艦隊となった。ガルメデアコロニー攻防戦の時は手持ち5隻だった事を考えれば、凄い進歩だよな。しかも、まだ戦艦を含めた戦力は要塞に待機している訳だしさ。
久しぶりに、出撃条件を設定する。最近は、適当に出撃させてから随時戦闘AIに指示を出して変更していたからな。まぁ、それでも大雑把だけどさ。でも、それでもちゃんと戦闘してくれるレベルには戦闘AIが成長しているので助かっている。さて、この位だろうか。
出撃内容:第8・10・11・13コロニー宙域における敵性分子の殲滅
出撃艦隊:主力艦隊(カンターク級6隻、シャニッド級2隻、ウェクスフォード級22隻、カランズ級2隻)
出撃時刻:フォルトリア星系歴524年8月22日22:00
帰還時刻:未設定
帰還条件:敵性戦力の殲滅
撤退条件:未設定
追加条件:共和国艦隊との交戦を許可。教団勢力との交戦を許可。
「一馬さん。主力艦隊、集結完了しました。ご命令を」
「了解。……主力艦隊、抜錨。第16コロニー宙域を経由して、第8コロニー宙域へと進軍せよ!」
『指令、受託。主力艦隊、抜錨します。進路、第16及び第8コロニー宙域』
正面スクリーンに映し出された、大規模艦隊がゆっくりと動き出していく。巡洋艦8隻、駆逐艦22隻、補給艦2隻からなる主力艦隊。さて、スキンヘッド紳士はどう反応するだろうかね? 頑張って、身の回りの害虫駆除に邁進するか、或いは……? 何れにせよ、彼の肝を冷やす事が出来れば成功と言って良いだろう。
「いよいよですわ。ふふっ、ブンブンと五月蠅い蠅には良い治療ですの」
「……最近、シャンインは素を隠さなくなったよね!?」
「あら、嫌ですわ? 私は、何1つ変わっておりませんわ!」
「「……」」
何言っているんだ此奴とばかりに、ソフィーと共にシャンインを見る。が、彼女がそれに反応を見せる事は無い様だ。まぁ、シャンインだしね? いや、その一言で片付くのもどうかと思うけどさ……。
「さて、今日のお仕事はこれで終わりだな。……そうだ。もし、俺が居ない間にスキンヘッド紳士辺りから何らかの反応があったらさ、要塞全体を挙げた全力での出撃だって言っておいてくれる? 俺の指示で最低限の兵器で要塞を護っているから、心細くて不安だって事もさり気無く伝えてあげてよ」
「了解しました。しかし、そこまで見え透いた罠に掛かりますか?」
「これに掛かる馬鹿なら、楽に処分出来て助かりますわ!」
「まぁ、流石に動かないと思うよ? でも、エサは撒いておいて損は無いさ。何の支出もせずに撒けるエサだからね……」
現在、ガルメデアコロニーには先の戦闘で鹵獲した元共和国の駆逐艦2隻と補給艦が6隻ある。更に言えば、捕虜になっている元共和国の海兵隊員や陸戦用の車両に、数々の小火器類もある状況だ。他にもコロニーが独自に保有している武装艇もある様だしね。共和国側の動きに呼応して何かをしでかすのならば、此方からエサを撒いてさっさと動ける様にお膳立てするに限る。まぁ、頭の切れるヤツなら引っ掛からないレベルのエサだけどね? 彼らが動かなければ放置で良いし、動くと言うならば丁寧にお・も・て・な・し(古)をするだけだ。いきなり共和国艦隊を相手にするより、適当な連中で新造した戦艦の試運転が出来れば良いなって位ですよ。
お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに。