2-32:多大な犠牲を払ってヤツが!
本作における、宗教観とかは現実とはかけ離れた物としてお楽しみ下さい。
「さっきのシャンインの話だと、150年前には『ルーフェス』は星女を廃する事で、再び人と距離を取ろうとしている様な節が見られた訳だけど、理由は何だろうか?」
「詳しくは分かりませんが、恐らく純粋な人の営みの発展よりも、宗教的な側面での発展が強まってしまった事に危機感を抱いたのが原因では無いとか思います」
「宗教色が強くなる事で、『ルーフェス』の思考からズレが生じたって事か」
「宗教とAIと言うのは、実に相性が悪いですからね。『ルーフェス』からすれば、不完全な人を更に不完全にする宗教に対して、これ以上の協力は危険だと判断したのでしょう。宗教とは何時の時代も、争いの火種ですから」
『ルーフェス』は人を不完全な存在と見なし、戦争を引き起こした。戦後それを自省し、1度は人と離れた。されど、再び繋がりを得て、AIとして彼らと共に歩む道に再び意義を見出した訳だ。しかし、人は思わぬ方向へと転がり自身は宗教の神へと崇め立てられてしまったと。『ルーフェス』からすれば、再び過去の様な過ちを犯す可能性がでてきたが故に距離を置こうとしたのだろう。しかし、1度繋がりを持ってしまった人は、その縁を切り離したく無い一心で星託を受けていない星女を祀り上げた。パメラ嬢然り、過去の星託によらない星女達然りだ。『ルーフェス』としては、関係を切りたいが、星女に祀り上げられた人々の処遇を考えると、切り捨てる訳にもいかない……。
「人の不完全さを理解しているが故に、自身へと縋る教団や信徒達を切り捨てる訳にもいかないか」
「パルメニア教は大きくなり過ぎました。それだけの不完全な人々を切り捨てる事など、『ルーフェス』には難しいでしょう。それが、新たな火種を生むのは目に見えていますから」
「AIがジレンマに陥るとか、どんだけだよ。宗教って本当に闇が深いな……」
進むも地獄、退くも地獄。完全であれと創られたAIだからこそ、今の状況に二進も三進も行かないのは想像に容易い。自身の在り方に縛られ、身動きが取れなくなるAI。不完全な人が意図せず作り出した、悪夢の様な状況。こう言っては何だが、『ルーフェス』に同情すら覚える。俺が、その様な立場に置かれたら確実に発狂している確信がある。
「もうやだ、この星系……」
神を代替する為に創られたAIですら、手の施しようの無い状況に陥っているパルメニア教団と信徒達。ただ単に、フォラフ自治国家方面への侵攻路を安全なものにすべく行動しただけだってのにな。教団に星女に、主神こと代替神AI『ルーフェス』、更に宙賊に共和国と。面倒な連中のバーゲンセール会場があの宙域に出来上がりつつある。さて、どうやって限界までこんがらがった糸を解きほぐすかだな。
「先ずは、宙賊だな。あれは、さっさと片付けよう。自然とシャンインが入り込む隙間も出来るしな」
「そうですね。教団方面は引き続き情報を集めつつ、星女を如何にして現状から解放するか考えましょう」
「でしたら、先ずは艦隊の再編成ですわ。一馬様としては、どの様な編成を考えられていますか?」
「んー。前線配備の主力艦隊、シャンイン率いる偽装宙賊艦隊、補給艦隊、後1つは切り札として要塞待機かな。要塞自体の守備は、守備隊に編成した艦艇と機動兵器で担おうと思ってる」
「建造予定も含めて此方の戦力は巡洋艦6隻、駆逐艦38隻、補給艦4隻。現状の軍港レベルだと追加建造は後2隻が限界ですね」
配分をどうするか。軍港を拡張して更に艦艇数を増やすのもありだけど、補給に相応の負担が掛かるからな。でも、安全を考えると数は増やしておきたいよな。やはり、このタイミングで軍港の拡張を行うべきか。今の所ポイントはっと……。また新しく任務が達成出来ている様だ。まぁ、明らかにタイミングがズレまくっている任務もあるけれど、管理者を責めてはいけない。サボったとか、忘れてたとか言っちゃいけない!
「先月末の管理者から配布された3ポイントに加えて≪初補給艦建造≫、≪敵高速艦5隻撃破≫、≪敵艦10隻撃破≫、≪通算建造25隻≫が達成と。合計で9ポイント追加だから、合計で25ポイントだな。軍港の拡張には幾つ必要かなっと……」
「軍港の拡張は5ポイント必要ですね。最初の拡張で係留スペースが現在の倍にあたる100隻となります。外部係留が30隻から60隻へ、内部係留が20隻から40隻へと拡大します」
「それに加えて、共和国戦を想定した戦艦のアンロックに7ポイント、推進剤生産プラント強化に6ポイントは必要だな。18ポイントか。一気にやってしまおう」
軍港拡張。50隻→100隻。
戦艦アンロック。シャニッド級巡洋艦アンロック及びクレアモリス級戦艦アンロック。
推進剤生産プラント強化。2,500ℓ/日→5,000ℓ/日。
システムポイント。25→7ポイント。
「一気にポイントが減りましたわ」
「だね。でも、それに見合う強化にはなったと思うよ。流石に宙賊相手には過剰でも、共和国を想定すれば戦艦は必須だからさ。後は、ウェクスフォード級駆逐艦の派生型をアンロックしないと……」
ウェクスフォード級駆逐艦(簡易補給型)アンロック。消費資源、金属200t・非金属50t。
「この派生型をアンロックする上で必要な資源の量ってどの様に決定されているんだろうか」
「……恐らく、適当です(わ)」
「……管理者ぁ!?」
何か意味があるんじゃないのかよ!? 新しいパーツ分に相当するとかさ? 適当って何よ、適当って! ならば、ゼロでも良いんじゃね!? こちとら資源は有限なんだぞ!
「まぁ、あの馬鹿の設定ですので、お気になさらず……」
「そうですわ。考えるだけ精神衛生上で宜しくありませんもの」
「あっ、ハイ」
ボロクソ言われてるぞ、管理者。思春期の娘を持つ父親とかもこんな感じなのかなと、子供どころか結婚経験すらないオッサンでした。さて、これで前線で簡易補給艦として運用出来るウェクスフォード級駆逐艦も建造が可能となった。後は、何が必要だろうか?
「後は、何だろうか?」
「余裕があるのならば、シャニッド級巡洋艦の派生型をアンロックされてみては如何でしょうか? 船体後部に簡易式のカタパルトを設置する事で最大8機の艦載機を運用可能になります。無論、艦自体の砲戦火力や防空能力等は低下しますが、簡易的な軽空母としての役割を与える事が出来ます」
「なるほどね。確かに、今は犬の散歩状態だからな。『イースキー』にせよ、『オグマ』にせよ母艦は欲しい所だし。ソフィーの案を採用しよう」
「ありがとうございます」
正規空母のアンロック自体は後5ポイントで出来る。でも、万が一を考えるとポイントは残しておきたい。空母建造の資源も厳しいだろうしね。そうなってくると、資源でアンロック出来る航空巡洋艦が今はベストな選択肢となるだろう。
シャニッド級巡洋艦(艦載機運用型)アンロック。消費資源、金属1,500t・非金属100t。
この要塞に来た当初だったら、これだけの資源を吹っ飛ばす派生型とかのアンロックには及び腰になっていただろうなと懐かしく思う。今は、これ位ならば十分にカバー出来るしな。まぁ、戦艦建造で消費される資源からは目を逸らしたいが……。クレアモリス級戦艦を1隻建造するのに消費される資源の量がエグイのよ。金属15,000tに非金属が2,800t、推進剤は2,500ℓだし、弾薬は800tも必要。建造時間は何と60時間ですよ、ヤバく無いですか? その分、巡洋艦とは比べ物にならない砲火力を有してはいるけどね。対艦魚雷の的にされない様に注意せんと……。
お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに。