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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
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2-26:名前

星女様、取り合えず一旦終わり。

 「……別に姉さんに星女を押し付けて不幸にしたいとは思わない」

 「恨みは、ご両親だけだと?」

 「姉さんは、確かに何もしてはくれなかった。でも、何もしてこなかったから……」

 「なるほど」


 お姉さんは、彼女にとって無害だった訳だ。まぁ、当時の年齢を考えると、お姉さんも両親に逆らってまで何かをする力は無かったの確かだろう。ただ、声を掛けたりする事すら出来なかったのかとも思う。それほど、両親によって姉妹は隔離されていたのだろうか?


 「そうなると、君を星女の立場から救うには他の方法を考えないとな」

 「もう、どうでも良いわ。早く終わらせたいだけよ……」

 「……」


 先ほどまで、あれほど激昂していたにも関わらず、今の彼女は一気に冷めてしまった様に感じる。両親の呪縛から解き放ったとしても、教団側から解き放たれ無い限り、彼女の心は救われないか……。とは言え、お姉さんと入れ替える訳にはいかなくなったからな。何か、別の手段を講じるしかない。


 「取り合えず、君のご両親は此方で片を付けよう。星女からの解放は、少し時間を欲しい」

 「……勝手にしなさいよ」

 「分かった。勝手にさせて貰うよ」

 「……」


 一先ず、今日は此処までだな。彼女からこれ以上の反応を引き出すのは難しいだろうし、既に当初の予定時刻をかなりオーバーしてしまった様だ。それでも、教団関係者が心配して入ってこない所を見るに、ソフィー達が一芝居うってくれたのだろうか? 或いは、教団側にも何らかの思惑があるとか?


 「そうだ、最後に1つ聞いても良いかな?」

 「……何よ?」

 「君の名前は? 星女としてでは無い、君だけの名前」

 「……それを知ってどうするの?」

 「君を君として呼ぶには、名前が必要だろう? 星女様なんて何時までも呼びたくないしさ?」

 「……パメラ。パメラ・シュティナ」

 「パメラか、良い名だ。必ず、その名前を堂々と名乗れる様にするよ」

 「勝手にすれば……」


 星女では無く、パメラとして彼女が自身を語れる日が来る為には、超えなくてはならない壁がある。それを超えるには、外部からの力は勿論、彼女自身の覚悟も必要になるだろう。その為にも、先ずは此方が結果を出さないとな。そうすれば、彼女も……。


 「今日の所は、これで失礼するよ。でも、必ず君をその状況から救ってみせる。だから、どうか諦めないで欲しい。安易な死に救いを望まないでくれ」

 「……期待はしない」

 「それで良いさ。救い上げられた高さが、高ければ高いほど、人は二度と絶望しないからね」

 「……」


 さて、どうやって救い上げるか? 取り合えず、教団の内部資料を改めて徹底的に洗い直すとしよう。彼女を救うカギはそこにある筈だ。その間、平行して宙賊の対応だな。教団から提供される情報を洗いつつ、行動に移すとしよう。……忙しくなりそうだ。取り合えず、外に出るとしよう。


 「……終わりましたかな?」

 「これは、オルガ支部長。予定よりお時間を頂いてしまって、申し訳ない」

 「それに関しては今回に限り目を瞑りましょう。元々、個別の会談を提案したのは星女様ですしな。とは言え、特別扱いは1度だけですよ?」

 「感謝します」


 星女様と連れ立って部屋を出たが、思っていた様な反応では無かった。当初の予定の10分を大幅に超えて実に30分近く話をしていたにも関わらず、待っていたオルガ支部長を始めとして教団関係者の反応は、さほど大きくは無かった。彼の言う通り、星女側からの申し出だった事が幸いした様だ。とは言え、次は無いと釘をしっかりと刺されはしたがね。


 「では、我々はこれで。情報は先ほども申し上げた通り、ガルメデアコロニーのサントスさん経由でお願いします」

 「了解しました。では、皆様に主神『ルーフェス』のご加護がありますように」

 「感謝します。それでは……」


 待機してくれていた、案内の女性に連れられて支部を後にする。次に訪れる時は、大きく事態が変化した時である事を願おう。勿論、良い方向にだけどね。




 「と、まぁこんな感じかな?」

 「そうでしたか。中々、厄介な状況ですね」

 「香月殿から見て、その星女殿はかなり危ういと?」

 「今日、明日でどうこうってのは無いと思うけど……。相当に闇は深いな」


 安全を期して、ホテルに戻ってから2人に星女様との話の内容を説明する。何となくだが、ソフィーは彼女の状態に気が付いていた様な感じがする。人の内面を見抜く力でも持っているのかもね。


 「取り合えず、教団から提供される情報の裏付けを取りつつ、宙賊討伐かな。シャンインが鹵獲した1隻からネットワークに入り込めるかも確認しないとな。ダメなら、別の指揮官クラスが乗艦している宙賊艦を鹵獲する必要が出てくるし。今思えば、来る時に襲撃してきたオバサンの船を鹵獲すれば良かったな……」

 「まぁ、ダメだったらまた考えましょう。今は、ホテル前まで付けて来た男達の事が最優先です」

 「ふむ。また以前の奴らだろうか?」

 「あぁ、殉教師団とか言うテロリスト達か……。暇なんだろうさ」


 コンラッド支部からの帰り、ホテルまでの道中をずっと尾行していた連中がいた。前回の事を考えると、例の頭がおバカなテロリスト集団の可能性が高いだろう。どうして、宗教ってのはお頭の弱いバカを量産するのだろうかね? まぁ、自分で考える事を止めた、思考停止な連中が挙って集結するから仕方が無いのだろうけどさ。もう少し、自分らしく生きようぜ。


 「取り合えず、今回は護衛の戦闘アンドロイドがいますので、彼らに任せるのが宜しいかと」

 「勿論、前回みたいなのはゴメンだよ」

 「本来、組織のトップ自ら銃で応戦など、遭ってはならない事ですからな?」

 「クロシバまで言わないでくれよ。十分、反省しているから」


 何だかんだ、前回オッサンが発砲した件でシャンインから結構なお小言を頂く羽目になった。彼女なりに此方を心配しての事だから強く反論も出来ないしさ。なので、オッサンとしては大人しく護られる立場に甘んじます。じゃないと、専用機の没収とかになりかねない。それだけは、絶対に阻止しないといけません。何たって、専用機は要塞司令官としてのアイデンティティに関わるからね!


 「他の組織だった場合も、対処は同様で宜しいかと。少なくとも、用があるのならば正面から堂々と来るべきですからね」

 「まぁ、後ろめたい事が無い連中ならば普通はそうするよな」

 「尾行している時点で、ろくでもない連中なのだろう」


 何て言うか、厄介事って勝手に寄って来るよね? こっちは至って普通な平和大好きオッサンなのにさ。どうして、放っておいてくれないんだ!


 「一応、アイザフ大佐にも状況報告だけしておこうか?」

 「そうですね。場合によっては前回同様に、力を借りる必要があるかもしれません」

 「香月殿の、厄介事を引き付ける能力。良い方向に役立てられ無いものか……」

 「クロシバ!?」


 それは、酷い言い掛かりだと思いますよ、クロシバさん? 流石のオッサンも、好き好んで厄介事を引き付けているなんて事はございません。あくまで、向こうから勝手にやってくるだけだ。まぁ、何て言うか一般人と比較すると結構な頻度で厄介事が転がり込んで来る様な気がしないでもないがね。でも、きっと気のせいだと思う。オッサン、トラブルホイホイみたいな異名はいりません。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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