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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
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2-22:会談③

ま、まだ続く。

 「そう警戒しないでくれ。難しい話しでは無い」

 「はぁ……?」


 そうは言っても、明らかに武闘派の教団関係者のお話なんぞ悪い予感しかしない。デルモート氏は鏡で自分を見てから言うべきだな。


 「君達の実力を見せて貰いたい」

 「……それは、教団にとって都合の悪い宙賊を討伐しろって事でしょうか?」

 「悪い意味で取らないで欲しい。此方としても、一部の宙賊には頭を痛めている。一方で、君達の実力の程が分からない様では正式に協力関係を結ぶのも難しい。実際、幹部クラスの中でも何人か反対している者もいるのでね」

 「……」


 反対派ね。恐らく、過激派宙賊と繋がっている連中の事だろう。デルモート氏としては、その五月蠅い連中を黙らせる目的で俺達を使いたい訳か。そうして、黙らせた上で此方と手を組み、残りの過激派を掃討すれば残るのは教団に都合の良い宙賊だけになる。オッサン達は体よく首輪を付けられ、良い様に使われる事になるな。宙賊討伐で教団の協力が得られる事と引き換えになるだけのメリットが、果たしてあるだろうか……。


 「難しい顔をしているな。だが、君達の働きに見合うだけの協力は約束出来ると思う。それに、事態が収拾した後も、良い関係が築けるのではないかな?」

 「……」


 将来的に見れば、教団との良好な関係はプラスになるだろう。逆に断った場合はどうなるか……。教団からの協力が得られなくなる一方で、自由に動ける様になるな。ただ、その結果として教団がその後どの様に動くかは不明。脅威となる軍事力は持っていないが、星系最大の宗教団体から睨まれるってのは厄介な事を引き寄せるリスクはあるな。うん、この辺は以前も考えた気がする。


 「取り合えず、其方の持つ情報の精査が必要になりますね。過激派と言われて、実態は穏健派の宙賊だったなど話にはなりませんから」

 「私達が、嘘の情報を流すと思うのかしら?」

 「過激派の宙賊と繋がっている教団関係者が複数いる事を把握しています。お2人を前にこの様な事を言うのは非礼ではあると思いますが、彼らと繋がっていないとは言い切れない以上、警戒はさせて頂きますよ」

 「ふむ。まぁ、妥当な判断だろうな。情報の正当性が確認出来れば、我々からの提案を受け入れて貰えると?」

 「そうですね。少なくとも、協力関係を結ぶに値するかと?」


 無条件での受け入れでは無かったので、何らかの条件が提示されるのは元から想定の内。今回の会談で出てきた内容も呑めないモノでは無い。何れにせよ、情報の精査をしてからの話になるか。敢えて問題を上げるとすれば、シャンインが何れかの宙賊艦を鹵獲して彼らの使っているシステムを掌握しない事には情報の精査が出来ないって事だろう。


 「では、こうしよう。後日此方の持つ情報を其方へ提供する。君達はその情報を確認し、正しい事が確認出来たら此方の条件を呑んで貰う形でどうだろうか?」

 「……分かりました。其方が先に情報を出すリスク負う訳ですから、此方としてもそれで手を打ちます。提供される情報は、ガルメデアコロニーのサントスさんへお願いします」

 「それは、私が担当しましょう。サントスさんとはお付き合いがありますからね」


 此処まで無言を貫いていたオルガ支部長が口を挟んできた。彼としては、ノーブル女史とデルモート氏が今回の会談のメインキャストって事だったのだろう。ただ、そうなると星女の立場が分からないな。ただの見物人とはとても思えないしな。でも、ある意味で都合が良いとも言えるか。後はタイミングだよな……。


 「では、オルガ支部長。その辺りは君に任せよう。其方もそれで宜しいかな?」

 「問題無いですよ。元々、今回の会談要請もサントスさん経由で聞きましたから」

 「では、その様に急ぎ手配しよう。良き縁に繋がる事を主神『ルーフェス』に願っている」

 「此方こそ。そうなることを、願っています」


 主神『ルーフェス』ね……。神様だよりの縁ってどうなんだろうか。別に神様が悪い訳では無いけれども、縁ってのは自分の力で紡ぐものだとオッサン的には思うんだよね。異論反論は何時でも受け入れる。


 「では、我々はこれで失礼する。星女様、参りましょう」

 「デルモート局長。1つお願いがあるのですが?」

 「何でしょうか、星女様?」

 「香月さんと2人で、お話しがしたいのです。数分で良いので時間を頂けませんか?」

 「それは……」


 どうにか、星女様と話が出来ないかと思っていた所、まさか向こうから助け舟が来るとはね。なら、此方からも乗った方が良いだろう。折角のチャンスだし、無駄にはしたくない。さて、どう切り出せば上手く事を運べるか……。かと言って、下手な理由じゃ即却下されるだけだろうしな。


 「星女様。お気持ちは分かりますが、流石に彼と2人きりと言うのは……」

 「デルモート局長。実は……」


 そう言って、デルモート氏の背後へと回り込み何やら耳打ちする星女様。余程の内容なのか、オッサンを見る彼の視線が驚愕の色を含んだものへと変化していく。一体、何を話したのやら……。ただ、恐らく耳打ちのお陰で星女様と話が出来る事にはなりそうな雰囲気があるな。


 「分かりました。10分だけ、我々は部屋の外でお待ちします。それで、宜しいですかな?」

 「勿論です。ありがとうございます、デルモート局長」

 「いえ、では我々は失礼します」

 「ソフィー、クロシバ。悪いが外で待っていてくれ」

 「了解しました」

 「承知した」


 オルガ支部長、ノーブル女史、デルモート氏、ソフィー、クロシバが順番に部屋から去っていく。去り際ににさり気無くオッサンの上着のポケットに、例の装置を忍ばせてくれたソフィー。流石過ぎる。オッサン的に花丸を贈呈したい。そして、室内に残されたのはオッサンと星女様の2人きり。恋人同士なら良い雰囲気になるのだろうが、残念ながらオッサン達の間にその様な関係は無いし、その可能性も勿論無い。星女なんていう厄介ネタを身内にはしたくないわ。さて、今回の会談に彼女が参加した理由が分かるのだろうか?

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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