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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
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2-21:会談②

まだ続くよー

 行動力のあり過ぎる星女様ってのはどうかと思うよ。そもそも、彼女がこの会談に臨席する必要性ってあるのか? オルガ支部長なり、教団の幹部クラスが出れば十分だろうに。それに、下手に彼女に出て来られると、此方としても色々と勝手が悪くなるんだよね……。うん、厄介な事になりそうだ。


 「さて、これで全員揃いましたかな?」


 オルガ支部長がそう声を掛け、室内を見渡す。参加者は、要塞側が3人―護衛は部屋の外で待機中―で、パルメニア教側はオルガ支部長と星女様に、見知らぬ年配の男女で合計4人。案内の女性は既に退室している。席順としては、室内入って左手側のソファーに、窓側からソフィー・オッサン・クロシバの順。教団側は、窓を背にした1人掛けソファーに星女様。室内右手側のソファーに、窓側から初見の女性、初見の男性、オルガ支部長の順に座っている。


 「では、始めましょうか。先ずは、香月さん。再度、遠路はるばるお越し頂きありがとうございます」

 「いえ、こうやって直に話してこそ意義があると考えておりますので、お気になさらずに」

 「ご配慮、痛み入ります。では、早速本題にと入る前に、私の隣にいる2人をご紹介しますね」


 社交辞令的な挨拶をオルガ支部長と交わし、会談がスタートとなる。まぁ、実際は彼の言う様に、初見の2人の紹介からって事になるわな。星女様は既に知っているので結構です。


 「窓側の女性が、ノーティスコロニーの支部長を務めている、クラリス・ノーブル支部長。私の隣に座っているのが、教団本部の伝道統括局の局長を務めているマクシミリアン・デルモートです。2人とも、香月さんのお話をしたところ、大変興味深いと言っておりまして、今回の会談の場に同席となりました」

 「そうでしたか。初めまして、民間防衛組織『ランドロッサ』の香月一馬と申します。彼女は秘書のソフィー。彼は私の警護を担当しているクロシバです」


 コンラッドコロニーのお隣、第7コロニー『ノーティス』にある教団支部を預かるクラリス・ノーブル。身に着けている衣装の関係で、顔の部分しか見えないので正確な所は不明だが、50代後半から60代ってところだろう。柔らかく穏やかな表情を浮かべているが、その視線は意外と鋭く此方を観察している様にも感じる。オルガ支部長も最初に会った時はそうだったのと思い出す。一方の、伝道統括局なる部署の局長だと言うマクシミリアン・デルモート。褐色肌の男性で年齢はオルガ支部長と同じ位だろうか。ただ、明確に違うのは、明らかに軍人気質な雰囲気を醸し出している点だろうね。鋭く砥がれたナイフの様な鋭利さを感じる。傘下に聖戦師団の様な組織もあるし、元々はそっち方面の人間だったのかもしれないな。


 「統括局のマクシミリアン・デルモートだ。単刀直入に伺う。貴殿の保有する戦力は如何ほどか?」

 「保有戦力ですか……」

 「宙賊討伐を謳うのだ、相応の用意があるのだろう?」

 「勿論。過不足無く用意はしていますよ? とは言え、流石に企業秘密まで開示する事は出来かねます」

 「ふむ……」


 流石にね、企業秘密ならぬ軍事機密を漏らす訳にはいかんよ。まぁ、実際に軍事行動が開始されれば、否応無しに投入した戦力がバレるけどさ。今、この場で詳細を説明する必要は無いと思う。それに、不安があるのならば、丁度良い情報があるじゃないか。


 「此方の戦力にご不安がある様ですね。払拭といくかは不明ですが、前回の訪問後にガルメデアコロニーへ戻る道中で、8隻程の宙賊艦と遭遇しましたが此方の損害はゼロで追い払いました」

 「ほぉ……」

 「念の為に言っておきますが、向こうから仕掛けて来ましたので、止むを得ず力を見せたまでの事」

 「……」


 腕を組み、瞳を閉じて思案するデルモート氏。今、彼の脳内ではどの様な思惑が蠢いているのやら。一方、ノーブルさんはオッサン達の会話を聞きつつ、引き続き此方側の観察をしている様だ。何て言うか、就活の時の面接を思い出す感じがオッサン的には嫌いです。くだらん駆け引きとかいらないから、さっさと結論に入れっての。ちなみに、此処に来る途中で宙賊艦を11隻程沈めたのは秘密にしておく。何となく、その方が良い気がするからな。


 「私からも質問しても良いかしら?」

 「何でしょうか、ノーブル支部長?」

 「貴方から見て、宙賊とは討たれるべき存在なのかしら?」

 「……」


 討たれるべき存在かどうか。此方としては、元々フォラフ自治国家方面への侵攻路上の障害排除が目的だ。無論、それをパルメニア教側に伝える必要は無いがな。星女様は、宙域の安定化の為の必要悪として穏健派の宙賊を残したいと希望していた。ただ、彼女の思惑がどうも不穏なので、シャンインをトップとする伝統派の宙賊を此方で用意する事になった。最終的には、星女とも教団とも繋がりの無い宙賊だけ残るのが理想の形かな。流石にシャンインに何時までも宙賊をやらせる訳にもいかないしな。今後の事を考えれば、駆逐艦の1隻だって惜しい。


 「全ての宙賊を討伐する必要は無いと思います。聞いた所では、過激派と穏健派に分かれているとか。それに、必要悪としての宙賊を、この宙域に残したいと希望されている方もいますしね」


 チラリと、星女様の様子を伺う。特に反応は無いな。何の為に彼女はこの場へ訪れたのだろうか?


 「我々としては、必要以上の血がこの宙域で流れる事を望みません」

 「同感です。あくまで、この宙域の安定化が此方の望みです。ノーブル支部長が仰るように、無駄な血が流れるのを我々も望みません」

 「では、その点では少なくとも双方の意思統一は可能ですわね?」

 「意思統一ですか?」


 ちょっとばっかし、発言ミスったかな? 下手な足枷を嵌められる事態だけは避けたい所だ。とは言え、此処から盛り返すのも結構大変かもしれん。違う事を願おう。


 「此方が指定する宙賊とは、事を構えないで頂きたいのです」

 「……なるほど」

 「私達も組織としての規模が大きい以上、相応の情報収集能力は保有しています。その情報を基に、必要悪として残すべき宙賊を見極めています。ですので、貴方達にはその情報に基づいて行動して頂きたいわ」

 「要は、パルメニア教団と色々(・・)な繋がりのある宙賊を排除するなって事ですね?」

 「含む言い方ですが、概ねそう理解して頂いて結構です」


 公の場で、宙賊とパルメニア教団が繋がっていると示唆するメリットは何だろうか? 此方が好き勝手やらない様にする為のブレーキ材か? 或いは、何か別の理由でもあるか……。取り合えず、情報収集を急がせるしかないな。


 「私からも良いだろうか?」


 ふう。ノーブル女史の次は再びのデルモート氏ですか。これまた厄介な事を言ってきそうな予感。オッサンの予感は悪い方に当たるのですよ。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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