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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
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2-19:対宙賊戦③

こんな感じでオバサン宙賊とはお別れです。

 うん、シャンインは良い性格していると思います。何を初っ端から言い出すんだって思いました? でもね、目の前の惨状を見せつけられるとそう思ってしまうのです。何が起こっているかって? 停船し降伏を意味する発光信号の打ち上げまでした、宙賊オバサンの船が滅多撃ちにされています。沈めるとは言ったものの、あそこまでジワジワと削る必要あるのかと思ってしまう程にエグいやり方ですな。沈めろと言ったオッサンでも引いているレベル。

 何て言うか、人で言えば、指を1本1本丁寧に切り落としている感じかな。宙賊艦の重要なブロックは避けつつ、それ以外の場所を着実に穴だらけにしていっている。恐らく、エンジンブロックと艦橋が最後まで残るのだろう。あの宙賊オバサンは艦橋で自身の最後の瞬間を、身体をガタガタと震えさせながら待っている事だろう。拳銃でもナイフでも自死した方が楽になれるんじゃないかとも思う。


 「……エゲツナイデスネ」

 「ソウデスネ」


 思わず、俺もソフィーも片言になっちゃうレベルで悲惨な光景が広がっている。ディーシー号の艦橋でも、うわーって感じでドン引きしてますよ? 宙賊に厳しいアイザフ大佐も、視線を逸らしているしね。そんな感じで、現場をドン引きさせているシャンインは、きっと良い笑顔を浮かべながら指示を出している事だろう。本当に、彼女だけは怒らせない様にしようとオッサンは思います。ガチで、船体に張り付けにされて艦砲射撃の的にされる運命が待っていかねないからね!


 「……私ですら彼らの最後には同情を覚えるよ」

 「同感です。まぁ、これまでの事を反省する時間って事で彼らには納得して貰いましょう」

 「納得どころか、最後の瞬間まで怨嗟の声を上げていそうですけどね」

 「ソフィー。それは言っちゃいけないよ」

 「失礼しました」


 せめて、最後の瞬間位は彼らも良心の呵責に苛まれる事を願うよ。さて、いい加減この惨状を終わりにしないとな。これだけやれば、戦闘AIも相応に経験を積めたと思えるからね。普通に考えればあんな穴だらけにして戦う事なんぞ、この先の戦いであるとは思えない。それでも前向きに考えるならば、精密射撃の精度が上がったと思いたい。後は、小型で機動性の高い艦に対する効率的な攻撃戦術の確立とかかね? オッサン、その辺は疎いので良く分かりませんが……。勉強しないとね。


 「ソフィー。シャンインに止めを刺すように言ってくれるかな?」

 「了解しました」


 持ち出し用の小型端末から要塞のシャンインに連絡を取るソフィー。どうやら、ついでにお小言もプレゼントしている様だ。まぁ、彼女もあの惨状を目の当たりにして色々と思う所もあるのだろう。なので、特にストップは掛けない。それに、ちゃんとやるべき事はやってくれているしね。


 「……終焉だな。それにしても、最後まで艦橋を狙わないのはどうかと思うが」

 「まぁ、最後の瞬間まであのオバサンに記憶させたかったんでしょうね」

 「宙賊達が脱出するとは思っていないかったのかな?」

 「どうでしょうね? でも、正直あの艦砲射撃を浴びせられている状況で、船外に出る勇気は彼女達に無かったと思いますよ」

 「……それもそうか。私としても御免被りたい」


 オッサンもそう思います。ぶっちゃけると、あの精度の艦砲射撃なら、船外に脱出した宙賊すら狙い撃ち出来るんじゃないかなとすら思うのよ。まぁ、流石に宇宙服を着た生身の人間を艦砲射撃の的にする事は無いと思うけどね。そのまま宙域に放置して終わりだろう。酸素無くなるまで宇宙を漂うって絶望感が半端無いだろうな。想像しただけで悪寒がした。


 「お待たせしました。シャンインにもしっかりと言って聞かせましたので」

 「ありがとう。まぁ、程々にね? 彼女なりに考えての事だろうしさ」

 「勿論です。あれで、中々考えている子ですから」

 「うわぁ。微妙にディスってません!?」

 「ふふっ」


 怖いです。ソフィーも怖いです。いや、ソフィーは元々こうだったかな。ソフィーもシャンインも怖いです。オッサン、両手に華では無く、両手に薔薇ですね。棘だらけ……。


 「それから、待ち伏せ部隊の方も鹵獲した1隻を除き全艦撃沈したとの事です。2隻で要塞まで曳航します。それから友軍艦隊には何れも損害皆無。航行に異常無しとの事」

 「了解。では、アイザフ大佐。当初の予定通りコンラッドコロニーへと向かいましょうか?」

 「了解した。各員、警戒態勢を解除。通常航行に戻れ」

 「「「了解」」」


 きっと、艦橋の乗組員達の心はこの時1つになっていたはずだ。さっさと、この場から立ち去りたいってね。オッサンも同意見です。穴だらけになって爆沈した艦の近くで、ノンビリとしていたくないよね。




 あれから、特に道中問題が発生する事も無く無事にコンラッドコロニーへと辿り着いた。宙賊とドンパチやっていたお陰で到着時刻が夜中だった事もあり、コロニー手前で停泊し翌朝に入港を果たした。2度目のコンラッドコロニーへの訪問。入管は特に問題無く通過出来た。まぁ、前回も特に何も無かったけれどね。アイザフ大佐達とは別れ、ソフィー、クロシバ、護衛の戦闘アンドロイドを引き連れ前回も利用したモノレールへと乗り込む。


 「相変わらず、宗教施設にさえ目を瞑れば、景勝地としても悪くない。観光に力を入れているってのも分かるわ」

 「そうですね。一般的なコロニーは自然が溢れているとは言い難いですから。此処の様に自然が身近にある環境は観光に向いていますね」

 「惑星じゃない限り、自然は限られるもんな」

 「要塞にも、自然と触れ合える場所が必要かもしれませんね」

 「確かに。芝生に寝転んでノンビリするとか良いよね」


 うん、想像しただけで楽しそうだ。子供の頃は結構やっていた気がするけれども、大人になってから芝生に寝っ転がる事なんて無くなったしね。何もせず、ノンビリと青空を眺めてゆっくりと流れる雲を眺めていたい。良いな、芝生。どうにか要塞に設置出来ないだろうか?


 「芝生か……。実に良いものだ」

 「クロシバも芝生が好きなのか?」

 「うむ。何と言うか、本能が目覚めると言うかね。芝生の上を無性に駆け出したくなるのだよ」

 「あっ、なるほどね」


 犬だもんね! 何て言うか、気持ちクロシバの尻尾が左右にフリフリと揺れている気がする。もし、要塞に設置したら、日がな一日そこで駆け回っているクロシバを見れそうだ。うん、芝生に木のベンチと布製のハンモックも一緒に用意しよう。ソフィーやシャンイン、ナターシャさんも誘って一緒にノンビリするのも悪く無い。勿論、するべき事をしながらだけどね。オッサン、楽しみが増えました。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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