1-6:初出撃!
ようやく、話が少しだけ動いたかな?
※2021/05/16修正
システム端末に関しての記述を訂正。
司令室以外でもシステムの操作が可能に変更しました。
ままならない現状に何時までも頭を抱えていても、何も始まらない。出来る事から始めるしかないのだから。とは言え、何をすれば良いのだろうか? 取り合えず、駆逐艦が早く完成しないだろうか。
「香月司令官。建造ドックから完了報告が上がりました。実際にご覧になられますか?」
「勿論!」
アスローン級駆逐艦だっけか。性能すら見ずに建造しちゃったけど、どうなんだろうか。開発ツリーの初期艦な訳だし、過度の期待は禁物だよな。
「では、軍事ブロックへ参りましょう」
「了解」
昨日と同じように、ソフィーと共に生産ブロックを経由して軍事ブロックへと足を運んだ。
建造ドックがあるのは、軍事ブロックの中でも最深部。要塞表面にかなり近い所の様だ。まぁ、要塞外へと出撃する事を考えたら、当然か。
「そう言えば、建造した駆逐艦って、何処で待機させれば良いのかな?」
「建造ドックの下層に艦隊を係留する為の軍港エリアが有ります。係留出来る艦艇数には上限が有りますので、超えそうな場合は、エリアの拡張が必要になりますね」
「それは、要塞のレベルを上げるのか?」
「正確には、軍事ブロックの項目内にある軍港のレベルですね。これを上げる事で係留する艦艇数を増やす事が出来ます。なお、建造ブロックのレベルとは異なりますので、注意して下さい」
「振り間違えたら、悲劇だな……」
艦艇や兵器の開発ツリーだけで無く、要塞内の各施設のレベルも上げないとならない訳だ。全部でどれ位の種類があるかまだ把握出来ていないが、SPは慎重に使わないと将来的に詰みそうだ。ゲームとかに良くある攻略サイトとか無いしね……。
「此方へどうぞ。建造ドック内は立ち入りが出来ませんので、此処からご覧下さい」
「おぉっ! カッコイイ!!」
どういった役割の部屋かは不明だが、ガラス越しに建造ドック内が一望出来る。そして、目の前には完成したばかりのアスローン級駆逐艦2隻が、その雄姿を見せてくれている。曲線より直線を多く採用した深緑色の船体。造りは無骨ながら、不思議と頼もしさすら感じる。ただ、思っていたイメージよりかは小さいめだろうか?
「確か、完成したら試験航行を兼ねた偵察任務に出すって話だったね?」
「はい。周辺宙域の情報収集を兼ねて出撃させるのが宜しいかと」
「出撃の指示は、何処からすれば?」
「司令室のシステム端末か、昨日お渡しした司令専用の小型端末から操作が指示が可能です」
「例えばの話、要塞外からでも専用の小型端末を操作すれば指示は可能なのかな?」
「保安上の観点から、要塞外からのアクセスには制限が入ります。正確には、外部からアクセスする際には、補佐官である私の追認が必要というだけですが。追認さえ行えば、外部でも内部と同様に操作が可能となります」
「なるほど。まぁ、それ位の対策は必要だわな」
万が一を考えてって事なのだろう。司令ブロックは、緊急時の脱出艇を兼ねているって説明もあったし。よほどの事が無い限りは、司令室以外はウロチョロしないようにしよう。1人取り残されて救助を待つとかダサすぎるからな。
「それじゃあ、戻ろうか。時間は有限だからね」
「了解です。出撃方法は、司令室にてご説明しますので」
「宜しく」
「それでは、システム管理端末の編成項目を選択して下さい」
「了解。表示されたのは、艦隊と守備隊だね」
「艦隊は建造した艦艇と搭載兵器を設定する事で出撃が可能となります。また、守備隊は艦艇だけでなく、機動兵器等を単独で配備する事も可能です。艦艇は全て出撃させて、機動兵器だけで要塞を守るといった選択も出来ますね。ただ現状は駆逐艦が2隻のみですので、まずは艦隊を選択した上で、これらの艦で艦隊を編成して下さい」
「えっと……」
艦隊を選択すると、如何にも戦略ゲームとかに有りがちな編成画面が出てきたな。どうやら最初に編成出来るのは、合計で4艦隊までの様だ。でも、1艦隊毎に配備出来る艦艇は制限無しとなっているな。
「配備出来る艦艇に制限は無し?」
「配備する艦艇の種類と数によって艦隊の規模が自動で決定されます。例えば、現状ですと駆逐艦が2隻ですので、分艦隊が編成されます。分艦隊は、同じ艦種の艦艇を2隻編成する事で自動的に編成完了となります。他には駆逐艦4隻と巡洋艦1隻を配備すると偵察艦隊が編成されます。偵察艦隊は今後良く編成する事になるかと思いますので、覚えておいて下さい」
「なるほど。おっ、確かに駆逐艦2隻で分艦隊が編成されましたって表示が出た。艦隊名ってのは決めた方が良いよね?」
「今後、艦隊が増えていきますので区別の為に必要となります。最初の内は覚えやすい番号を振るだけで良いかと。後で艦隊名は変更が出来ますので、艦隊規模に合わせて変更する事をお勧めします」
「じゃ、第1分艦隊と……」
端末上に表示されたキーボードで入力する。この辺はタブレットとかで良くやる操作だから直感的に操作出来るな。艦隊名は特に捻る等は加えずにシンプルなものにしておく。自分が後で思い出せないとか虚しいからね。
「では、香月司令官。第1分艦隊を周辺宙域への偵察任務へと出撃させましょう」
「分かった。やり方はどうすれば良いのかな?」
「編成が完了した艦隊の左上にチェックボックスが有るかと思いますので、チェックを入れて下さい」
「チェックと……、入ったね。右下に出撃って項目が出たな」
「はい。出撃の項目をタッチすると出撃の詳細画面へと移ります。もし、複数の艦隊を同じ任務で出す場合は、出撃させたい艦隊全てのチェックを入れる事で、同時に出撃命令を出す事が可能です」
その辺も、まんまゲームのシステムだよな。管理者ってのは、結構ゲームを参考にしているのだろうか。まぁ、経験者に取ってはその方が説明も省けるから楽なのかもな。
「今回は、1艦隊しか無いからそのまま出撃を選択と……」
「出撃の詳細を設定する画面に切り替わりましたので、出撃させるエリアや出撃の目的、出撃時間、帰還条件や撤退条件等を指定します」
「結構細かいんだね」
「AIによるコントロールですので、事前に詳細を決めておかないと、突拍子の無い行動を取る事が有ります。学習を積めば、そういった行動は減りますが、最初の内は可能な限り詳細に設定しリスクを減らして下さい」
「AIも便利ってだけじゃ無いのか」
「その代わり、学習が進んだAIは人以上の才能を発揮する様になります。任務内容と該当エリア程度を伝えれば後は臨機応変に対応してくれますよ?」
「そこまで育てるのが大変そうだなぁ……」
それだけ出撃を重ねろって事だな。まぁ、取り合えず虎の子の艦隊を、初歩的なミスで失わない様にしっかりと設定しておこう。
出撃内容:ランドロッサ要塞周辺宙域の偵察任務
出撃艦隊:第1分艦隊(アスローン級駆逐艦×2)
出撃時刻:フォルトリア星系歴524年5月18日11:00
帰還時刻:フォルトリア星系歴524年5月19日12:00
帰還条件:2千万kmの偵察航行の完了
撤退条件:非友軍戦力との邂逅
ソフィーにアドバイスを貰いながら、どうにか条件の入力を終えた。要塞周辺宙域って言うのが曖昧かと思ったけれども、その程度ならAIの方が自動的に一定距離(要塞から1光分程度)を上限にルートを設定するそうだ。帰還条件に設定した2千万kmは駆逐艦が10時間ぶっ続けで停船せずに航行した距離に相当する。一応、丸1日を偵察任務の時間に充てているが、実際には問題が発生しなければ今日中に帰還するそうだ。あくまで初回なので、彼女もかなり緩く条件を設定した様だな。
「では、香月司令官。折角なので、出撃の檄を飛ばされては如何でしょうか?」
「出撃せよ! みたいな事かな?」
「そうです。是非、お願いします」
「よし……。第1分艦隊、偵察任務に出撃せよ!」
『指令、受託。第1分艦隊。偵察任務に出撃』
「うわっ!?」
「以前に説明した中央管理AIの中で、無人艦のコントロール等の戦闘面を担当するAIですよ」
それを、先に言って欲しかったな。真後ろから突然ってのは心臓に物凄く悪い。
『初めまして、香月司令官。戦闘管理を担当するAIです。以後、指揮権に服します』
「えっと、司令官になった香月一馬です。宜しく?」
『宜しくお願い致します。以後、偵察艦隊は此方で管理します。何か有りましたら、ご報告致します』
「了解。宜しく頼む」
凄いな。AIって此処までスムーズにコミュニケーションが取れるのか。ほとんど人間と変わらないんじゃないか? 姿が無くて声だけだから、余計にAIだと言われない限り気が付かないかもしれない。
「では、香月司令官。少し早いですが、昼食にしましょう。午後はシステム管理端末の説明の続きを行いますので」
「了解」
さて、今日の昼飯は何にするかなっと。
お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに。