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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
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2-18:対宙賊戦②

まだ終わらない。でも、ろくに戦闘描写無いって言うね。


※誤字脱字報告ありがとうございます。

 さて、実況のオッサンです。えっ? 実況って何だよって? いやさ、宙賊の相手は護衛艦隊が務めるから、暇なのよね。護衛艦隊の指揮は要塞に残った戦闘AIとシャンインが取っているし、オッサンとソフィーはディーシー号の艦橋でその様子を眺めているだけです。何かやれよって言われても、下手にディーシー号を前面に出すのはリスクが大きいのよ。この前のコンラッドコロニーからの帰りは、宙賊を釣り上げる目的で故意に単艦行動して貰ったけれども、本来はディーシー号を危険に晒すのは契約上不味いのよ。だって、オッサン達は善良な乗客だからね? 艦の操艦に彼是と注文付けられる立場に無いし。何より、万が一ディーシー号を失う様な事になれば、少なく無い犠牲も出てしまう。乗組員達だって、祖国奪還の過程で殉職するならいざ知らず、宙賊相手に殉職とは笑えないだろうしね。


 「なので、俺達は大人しく戦況を眺めています」

 「……香月君は誰に話しをしているのかな?」

 「さぁ? 時折、何処か別時空の世界と会話している様ですね」

 「そ、そうか……」


 何やら、アイザフ大佐とソフィーに変な目で見られている気がするが、無視しよう。で、実際の戦況が気になるだろうから、手短に説明しよう。現在、ガルメデアコロニーからオッサン達を追尾してきた宙賊オバサンの乗った宙賊艦は、更にその後を追尾していた第1艦隊に半包囲されながら苛烈な艦砲射撃を浴びせられている。ちなみに、この先の宙域でも既に第2艦隊が待ち伏せしていた宙賊艦隊と交戦状態に突入している。シャンインからの情報によると、待ち伏せしていたのは全部で10隻の宙賊艦の様だ。想定より少ないが、あのオバサンが動かせる艦艇数がそれ位って事なのだろう。


 「さて、現状では何れの戦域においても此方が圧倒している様だね?」

 「そうですね。向こうは数で負けてはいますが、此方側は数でも質でも宙賊を圧倒してますから」

 「やはり、旧式の高速艦をベースにしている宙賊艦ではこの程度の様ですね」

 「だな。でも、高速で小型の艦艇相手に良い実戦経験を積めるから、ありがたいよ」


 要塞付近で模擬戦等も行っているが、どうしても駆逐艦が最小サイズの艦艇だからな。それ以下の艦艇って要塞の点検用の小型艇か、補給艦積載の船外作業用の小型艦しかないのよ。何れも最小限の自衛用武装しか無いので、駆逐艦の模擬戦相手には到底なり得ない。なので、今回の様に駆逐艦より小型の武装艦艇との戦闘経験を積ませられる機会は、またとない好機なのだ。経験値を少しでも多く積ませて貰おう。


 「流石に小型で機動性が高い分、あれだけの砲火を浴びせている割には当たらないですね?」

 「……ふむ。確かに、な……」

 「……はぁ」

 「ん? ソフィー君、もしかして?」

 「恐らく、シャンインは意図的に戦闘を長引かせていますね」

 「そうなの!?」


 おっと、此処で衝撃の事実が発覚か!? まさかの、シャンイン指揮官。敵を前に余裕の舐めプですかね? まぁ、彼女の性格からしてただ遊びでそんな事を……無いよね? いや、きっと無い筈だ。多分、ちゃんと理由がある筈だよね。ソフィーさん、その辺はどうでしょうか?


 「まぁ、香月司令官から預かった戦力で遊んでいるとは思えませんので、恐らくは戦闘経験を積ませる為に故意に間延びさせているのだと思います。相手からすれば、嬲り殺しにあっている様なものでしょうが」

 「ある意味で、残酷だよな。本来ならば、とっくの昔に星屑の仲間入りしていた訳だろ?」

 「とは言え、彼女達のやって来た事を考えれば良い薬になるだろう。それを活かせるのは来世になるがね」

 「ははっ。意外とアイザフ大佐も手厳しいですね」

 「軍人としては、持った力を間違った方向に振るう輩は好きじゃないってだけだよ」

 「なるほど」


 正規軍人であるアイザフ大佐にとって、宙賊に対して思う所がある様だ。まぁ、人それぞれ物事への考え方、感じ方は違うからな。彼に取って、宙賊はこの程度の目に遭っても同情する気持ちが起こる相手では無いって事だ。で、その宙賊は戦闘AIに戦闘経験を積ませる為に、追いかけ回されていると……。


 「それにしても、小型の武装艦ってやはり機動性高いな」

 「それが最大の特徴ですからね。とは言え、此方の駆逐艦だとそれを上回る高速艦なので、正直その特性を活かせているとは言えないでしょうが」

 「それに、船体が小型な分、改造を施しても搭載出来る武装には限りがあるな。この艦も貨客船なので同等クラスの駆逐艦に比べて火力の低下は否めない」

 「善し悪しって事か」


 まぁ、そもそも艦種毎に得手不得手がある訳だしな。宙賊艦は相手がウチみたいな、ある種の反則艦相手じゃなければ、十分にその強さを発揮出来る筈だ。でも、最大の強みを上回る艦相手では最早、船体の小ささ以外に何も無いな。それも、シャンインが命中弾を出さない様に調整している始末。宙賊程度に同情する必要は無いのだが、何だか少しは同情したくなってくる。どうか、成仏してくれ。


 「香月司令官。どうやら、待ち伏せしていた部隊の方は趨勢が決まりそうです。宙賊側は戦意を消失し、逃走を図り始めた様ですね」

 「逃走か。でもウェクスフォード級相手に逃げられるとは思わないけどな……」

 「逃走を始めれば、シャンインも撃沈するでしょう。流石に逃がしたとなると、司令官の手前では私も庇えませんので」

 「まぁ、その位のミスなら別に怒らないけどさ。でも、形式的にはお小言必要かな?」


 小さな失敗とは言え、それが後々で大きな失敗に繋がるケースはこれまでのオッサン人生的に意外と多かった気がする。確か、ヒヤリハットも似たような感じだったかな。なので、もしその様な失敗をシャンインがしでかした際には、心を鬼にしてお説教しないとね。


 「まぁ、向こうは早々片付くって事だな。で、こっちはまだ抵抗するかな?」

 「そうですね。向こうは被弾もしていませんし、推進剤もまだ持つでしょうから。今しばらくは抵抗を見せるかと思われます」

 「了解。ちなみに、降伏は受け付けないからね。あのオバサンが攻撃を止めようが、停船しようが、撃沈するよ。シャンインが入り込む丁度良いスペースになるからさ」

 「了解です。シャンインもその辺は正しく理解しておりますので、ご安心を」

 「さて、あとどれ位の時間、逃げ切れるかな?」


 残酷だって? 獲物は最短で仕留めるのが礼儀だって? そんなの知らんがな。必要なのは戦闘AIの実戦経験だ。今更、宙賊への慈悲なんぞオッサンは持ち合わせておりません。この冷徹な判断が後々の要塞に取って必ず生きてくる筈だ。オッサンは、そう信じています。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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