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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
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2-17:対宙賊戦①

戦闘始まらなかった……。


※誤字報告ありがとうございます。

 さて、ギルドと名乗る宙賊のオバサンを適当に痛めつけ、後処理はスキンヘッド紳士に押し付けたので我々はガルメデアコロニーを後にする。目的地はパルメニア教団との再会談の地となるコンラッドコロニーである。先ほどまで、ディーシー号の艦橋でスキンヘッド紳士から愚痴を聞かされていたが、彼は何がしたかったのだろうね? 我々が宙賊に対して下手に出るとでも思っていたのだろうか? 彼が何を考えてのは不思議でしょうがない。


 「……どうやら、向こうはカンカンの様だぞ?」

 「追尾してきてますか?」

 「あぁ。不自然では無い位に距離は取っているがね。大方、僚艦にこの先で待ち伏せでもさせているのだろう」

 「待ち伏せですか。まぁ、如何にも宙賊が好きそうな手ですからね」


 待ち伏せ。オッサンもガルメデアコロニー戦において用いたので、それ自体は馬鹿に出来ないのだが如何せん読みやすいのが欠点だと思う。確かに客船程度なら通用するだろう。でも、こっちは軍事組織だからね? その程度の対策は当然用意してある。今回は奮発して2個艦隊を連れて来ている。1個艦隊は後ろから来ている宙賊船をガルメデアコロニーから追尾しているし、もう1個艦隊はこの先の航路から外れた所にあるデブリ帯で身を潜め待機させている。


 「予定通り、このまま進みましょう。何処で仕掛けてくるかは予想は出来ていますしね」

 「了解した。……それにしても」


 そう言いかけてから、オッサンへと視線を向けるアイザフ大佐。何か意味あり気に此方を見ていますが、何でしょうか? はて?


 「君は、自ら危険に足を踏み入れるタイプの様だな」

 「まぁ、気づいたら危険地帯でタップダンスしているよりはマシじゃないですか? 少なくとも、自分で自分の行動は決められますしね」

 「ふむ。その辺は考え方次第だろうな。私個人としては、出来るだけ目に見えている地雷は踏まずに避けるがね」

 「まぁ、本来はそれが正しい選択だと思いますよ」


 アイザフ大佐の言う、目に見えている危険を避ける選択は正しいと思う。オッサンみたいに、地雷を敢えて踏みに行くのは非常にリスクのある手段だ。まぁ、それ故に得られる物もあるとは思っているけどさ。むしろ、得られる物が無かったらオッサンとしても踏み抜きにいきませんよ。流石に、ハイリスクノーリターンじゃ、やり損だからね。


 「で、狙いは何だね? ただ、宙賊を怒らせた訳では無いだろう?」

 「1つ目は、スキンヘッド紳士と繋がっている可能性のある宙賊を減らす事。2つ目は、宙賊を一方的に叩いたってアピール出来る実績作り。3つ目は、要塞戦力に実戦経験を積ませる事。4つ目は、宙賊の勢力圏に穴を空けてシャンインが入り込む場所を作る事。これ位ですかね?」

 「なるほど。一石二鳥ならぬ、一石四鳥を狙う訳か。しかも、何れも達成が難しくないときてる」

 「そうです。何れも確実にリターンを得られますから。びっくりする程にお手軽にね……」


 1つ目は、警告の意味を込めている。確かに紹介状は用意させたが、それ以上あのスキンヘッド紳士に本件へと入れ込む余地を与えるつもりは無い。あの手の男は鼻が利くから、何か利益になりそうな臭いでも嗅ぎ付けたのだろう。だが、余計な欲を出すならば痛い思いをして学習して貰うのもやぶさかではない。大人しく、猿山の大将を務めていれば良いのだ。後の3つは言わずもがなって所だろう。何れも今後の事を考えてのものだ。


 「香月君。どうやら、そろそろ仕掛けてくる様だ」

 「……距離を詰めて来ましたか」

 「恐らく、最初は警告だろうな。そして……」

 「従わなければ、前方の待ち伏せ部隊と共に挟撃ですか?」

 「そうだ。待ち伏せ部隊と追い込み部隊。単純な手だが、手堅い結果を齎す。馬鹿には出来んよ」


 まぁ、今回は想定外の結果に陥って貰おう。偶には、宙賊である彼らも学ぶべきなのだ。そして、気が付かなくてはならない。狩る側が、狩られる側に回る事があるという不変の事実を。無論、それはオッサン達も当て嵌まる。これまで上手く行ったからといって、これからも上手く行くとは限らない。常に、自身を上回る存在に注意しないと、足元を掬われる事になる。慢心、ダメ絶対。油断大敵なり。


 「もし、向こうから通信が来たら繋いで下さい。遺言くらいは聞いてあげましょう」

 「……本当に君が敵で無くて良かったよ」

 「誉め言葉として受け取っておきますよ」

 「……っと、どうやら早速来た様だな。繋いでくれ!」


 噂をすれば何とやらで、追尾してきた宙賊艦から通信が入った様だ。さて、どの様なご用件だろうかね。此方としては、出方次第で平和的な解決を提案して上げてもいい。まぁ、土下座からの謝罪に詫び料程度は必須かな。開幕で罵倒とかだったら、即切りだな。


 「香月君。繋がるよ」

 「了解です」

 『……ガキのクセして、随分とコケにしてくれたじゃないかい?』

 「厚化粧のババアに褒められても嬉しくないですよ?」

 『……アンタ、いっぺん痛い目に遭わないと分からないらしいな!』

 「子供でも出来る、この程度のお使いも果たせない様じゃ……。ふっ、お先が真っ暗では?」

 『……殺す』

 「おぉ~、怖い怖い」


 自分で自分を抱き締めて怖がっているアピール。えっ? オッサンのアピールなんぞ気持ちが悪いだけだって? それは、御免なさいね。あの手のオバサンには挑発が物凄く効くからさ。現に、凄まじい表情で此方を睨んでいるからね。頭に血が上り過ぎて血管が切れるんじゃないの? 脳溢血だっけ? 違う?


 「そうだ、お仲間は最低でも100隻位は連れて来てますよね? じゃないと、貴女が逃げる時間すら稼げませんよ?」

 『はぁ?』

 「その反応だと、100隻は無理でしたか……。では、さようなら。オバサン?」

 『こ、このク……』


 通信担当の人へ指先で首を切る仕草を見せて、宙賊との回線を切って貰う。これ以上、無駄話をしていても仕方が無いからね。此処からは、お互いに敵同士。殺し合いをする関係だ。仲良くお喋るに興じるなど時間の無駄。テキパキと行動して、コンラッドコロニーへと向かいましょう。さぁ、狩りの時間だ。

 

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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