2-16:……ワン
今話のキーワード……ワン。
スキンヘッド紳士こと、コルネス・ディア・サンテス。ガルメデアコロニーの統括機構を預かる大物。詳しくは知らないが、大物犯罪者でもあるらしい。オッサン的に、オッサンには興味ないので詳細までは調べてません。仕立ての良い上等なスーツを身に纏い、指には無駄にデカくてキラキラする宝石が付いた指輪。葉巻を愛用し、美酒を片手に美女を抱き寄せるチャラ男。色々と濃過ぎるわー。キャラ濃過ぎるわー。属性盛り過ぎて、設定の殆どが死んでるタイプのキャラクターだわー。これぞ、だわーの3連活用。テストには出ません。
「わざわざ、足を運んで貰って悪いね?」
「いえ、コンラッドコロニーへ向かう道中ですから、お気になさらずに」
「君の配慮に感謝するよ。で、無駄話はお互い時間の無駄だ。単刀直入に言うと、君に会いたいと言っている人物がいてね」
「俺にですか? ……教団か、宙賊のどちらです?」
スキンヘッド紳士の瞳孔が僅かに大きくなった。どうやら、今日もオッサンの勘は中々に働いている様だ。まぁ、ぶっちゃけこのタイミングならその辺だろうなって思って、当てずっぽうで言っただけなんだけどね。だから、オッサンに石とか投げないで下さい。謝りませんから!
「ほぉ……。予想していたのかな?」
「教団から再会談の話があったタイミングですからね。何となく、そうかなと……」
「そうか。まぁ、言ってしまえば君の予想通りだよ。相手は宙賊だがね?」
「宙賊ですか……」
過激派か穏健派のどちらかね? まだ、伝統派は準備すら始まっていないから、目的はあの宙域からの宙賊掃討についてだよな。命乞いにでも来たか、喧嘩を売りに来たか、或いは協力でも申し出に来たか。何れにせよ、今後の方針に影響する可能性もあるな。
「それで、その宙賊は何と?」
「先方は、君達との協力関係を望むそうだ」
「なるほど。機を見るに敏な連中もいる様だ」
「それで、会ってみるかね? 一応、別室で待たせているが」
お膳立ては完了しているって事か。その宙賊とスキンヘッド紳士にどの様な繋がりがあるかは知らないが、話位ならば彼の顔を立てて聞くべきだろう。今後とも、暫くは付き合いあるだろうしさ。
「聞きましょう。彼らが望む回答をするとは限りませんけどね?」
「無論だ。向こうもそれは承知しているだろう。言い方は悪いが、これもビジネスさ」
「えぇ。軍事力って言う名のビジネスですね」
「今後も、君とは良い関係を築いていきたいものだよ」
「お互いにですね?」
オッサンも、スキンヘッド紳士は笑顔だけど目は笑っていない。お互いに真っ白で真っ当なビジネスとは言い難い以上、警戒を緩める訳にはいかない。隙を見せたら、喰われるだけだ。まぁ、うちの要塞を簡単に喰えるかって疑問はあるだろうが、そこはアレだ……。空気読もうぜ?
「では、廊下にいる部下に案内させよう」
「感謝します。サントスさん」
「此方こそ、香月司令官」
ニッコリ笑顔で握手を交わしてサントスさんとはお別れだ。重厚な木の扉を潜り抜け廊下へと出る。直ぐに待機していた彼の部下が案内をしてくれる。一緒に待機していたソフィーも俺の後に続く。どうやら別室と言うのは下の階の様で、廊下の突き当りにある螺旋階段を誘導されるまま降りていく。
「此方で御客人がお待ちです」
「ありがとう」
「どうぞ」
案内係が開けてくれた木製の扉を潜り抜けると、先ほどまでの部屋より幾分かはランクの下がる部屋が目に飛び込んで来る。入室すると同時に視線が2組此方へと向けられる。パッと見た感じ、堅気って感じじゃないな。ソファに座っている女性と思しき後ろ姿との位置関係を見るに、彼らは護衛役なのだろう。はてさて、要件は何だろうかね? 取り合えず、対面の空いているソファへ腰掛けよう。ソフィーもどうぞ?
「お待たせしました」
「……」
「民間防衛組織『ランドロッサ』の香月です。貴女は?」
「……ギルドのルー・バーバロッサだよ」
年の頃は40前後って所か。後ろの2人と同様に堅気って感じの女性では無いな。一般人だとしたら、眼光が鋭すぎだろう。視線だけで、人が殺せそうだよ。まぁ、実際に直接・間接問わず何人も殺しているのだろうけどさ。えっ? 偏見だって? でも、宙賊だしね。
「ギルドですか? サントスさんからは、宙賊とお伺いしましたが?」
「宙賊ってのは、手前らが勝手に呼んでる蔑称だ。ウチらは、フォラフ自治国家方面からガルメデアコロニー迄の航路で、客船や貨物船の護衛を専門にした商いやってる民間防衛ギルドだよ」
正に、物は言い様とはこの事か。頼まれてもいないのに、勝手に護衛だと居座って金を無心する連中だろうに。それを良くも抜け抜けと言うものだ。まぁ、勝手に言わせておけば良いだろう。宙賊には変わらないしな。
「それで、宙賊が我々に何か?」
「……坊や。口の利き方に気を付けるんだね?」
「それは、此方のセリフだ。賊如きが自分の立場を弁えろ」
「ガキが、粋がるじゃ!?」
頭に血が上り、思わず俺に掴みかかろうとしたバーバロッサのこめかみに、冷たく黒光りする銃口が押し付けられた。銃の持ち主は俺の右隣りに腰掛けていたソフィーです。流石はソフィー。目にも留まらぬ速さでホルスターから抜いた銃を突き付けています。早抜きって言うのかな? 凄く、カッコイイです。オッサン的に150点をプレゼントしたい所ですね。
「……下がりなさい。後ろの貴方達も、一歩でも動くとこの女性の脳天に穴があきますよ?」
思わず飛び掛かろうとしていたのだろう、前傾姿勢のまま姿勢を固める2人の男達。それにしても、ソフィーの普段より冷たい口調にドキッと来た34歳のオッサンです。決して、マゾではありません。普段とのギャップにキュンキュンしただけです。オッサンのキュンキュンとか気色悪いとか言わないで、石を投げないで!
「飼い主が飼い主なら、飼い犬も飼い犬だね!」
「……ワン」
「馬鹿にしやがって!」
「……ソフィー。銃は不味い。サントスさんにも迷惑掛けるしね?」
「分かりました」
相手の挑発にのって、ワンって小さく吠えるソフィー。滅茶苦茶にカワイイです。オッサン、スマホの着信にしたい位ですね。おっと、下からの絶妙な一撃がバーバロッサの顎に決まりましたね。白目向いてノックアウトした模様。続いて後ろにいた護衛2人も何発かはガードしたものの、結局は痛烈な一撃を浴びて両者ダウンとあいなった。
「ソフィー、ご苦労様。さて、お暇しようか?」
「そうですね。片付けはサントスさんがやって下さるでしょう」
うん、スキンヘッド紳士には迷惑を掛けるかもしれないけれども、大好きな高級酒の差し入れをしてあげたんだから、これ位は働いてくれるでしょう。それにしても、ソフィーの格闘センスって凄いね。動きの1つ1つも凄く綺麗だしさ。オッサン、思わず見惚れました。いや、マジで綺麗だったよ!
お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに。