2-10:要塞は我が家です①
キャラが勝手に動くみたいな事を言うけれども、本作で言えば一馬・ソフィー・シャンインがそれにあたるかな。前話の星女に比べて倍以上のスピードで執筆が進むのよ。
全国、30人位のランドロッサ要塞ファンの皆様こんばんは。オッサンです。無事に我が家たる要塞へと帰ってきました。えっ? 星女様との会談はどうなったのか? 前回の最後に説明した通り、一旦は保留ですよ? まぁ、良くある日を改めてってヤツだな。で、コンラッドコロニーの教団支部に連絡を入れた上で、星女様をお送りしてきました。何でも、公式行事でコンラッドコロニーを訪問中に行方不明になっていたらしい。事情を説明したら、めっちゃ感謝されたよ。オルガ支部長とか、感極まって涙を流してたな。オッサンの涙とか、需要ありません。で、そこから丸3日掛けて要塞まで帰って来ました。現在時刻は、フォルトリア星系歴524年7月29日午後5時少し前。後1時間ほどしたら、食事をしつつ関係者を交えた方針会議を行う予定です。今? 今は司令室でソフィー、シャンインと気ままな時間を過ごしているのさ。
「1日位、ゆっくりされなくて良かったのですか?」
「あぁ。鉄は熱い内に打てって言うじゃん? 記憶に新しい内に色々と決めておいた方が良いかなと思ってさ」
「それは、確かにそうですが……」
ソフィーとしては、要塞に帰ってきたのなら1、2日は俺に休んで欲しいって事なのだろう。気持ちはありがたいが、ディーシー号の中で暇を持て余し気味だったので、我が家に帰ってきた以上は出来る事から始めたいのだ。
「一馬様が平気だとおっしゃるならば、私達はそれに従うべきですわ、ソフィー?」
「シャンイン……」
「勿論、少しでもお疲れの様子が見えましたら、容赦なくお休み頂きますわ!」
「あははっ。体調管理に気を付けます」
「……分かりました。一馬さんは決しては無理はなさらないで下さいね?」
「了解」
何だかんだ世話を焼いてくれるソフィーとシャンインに感謝しつつ、今後の事へと思いを馳せる。星女様からの協力要請は悪い話では無いだろう。立場的に教団をどうこう出来る力は持っていないが、実家である穏健派とも言うべき宙賊と縁を結べると言うのは悪く無い。以前、シャンインは宙賊の扱いについて、排除か従属させるかの何れかだと言っていた。それに則るならば、過激派は排除、穏健派は従属と言うよりか相互不干渉の関係に持ち込むのがベストだな。ついでに、後々ファラフ自治国家に侵攻する上での中継基地代わりに、廃棄されているコロニーか資源衛星でも確保出来れば最良じゃないだろうか。奪還戦力として2個艦隊。中継基地の防衛・補充戦力・補給任務を担う1個艦隊。要塞の守備に1個艦隊が現状では理想的な形かな? そうなると、やはり追加建造が必要になってくるか……。その辺も加味して今後の計画方針を作成するとしよう。
「ふふっ、一馬様。悪い顔をしてらっしゃるわ」
「今後の方針を思案されてるのでしょ?」
「ですわね。……それで、下調べはどうでしたの?」
「……向こうで」
「了解ですの」
何やらソフィーとシャンインが内緒話をしている様だが、放っておこう。えっ? 気にならないのかなって? まぁ、気にならないと言えば嘘になるけれども、今の所は何らかの不利益を被っている訳じゃないしね。そもそも、彼女達は管理者から派遣されている立場だ。何らかの指示を管理者に与えられて、独自の裁量で動いている可能性もある。なら、雇われ司令官であるオッサンは余計な口を挟まず黙するべしってね。必要な時が来れば、彼女達から話をしてくれるだろうしさ。その程度の信頼関係ならば、ここ数か月で彼女達との間に築けたとオッサンは自負しているのだよ。束縛は信頼ではありません。
「……おっ」
何気無く、システム端末を起動すると新しい任務が達成されていた。今回は≪システムポイント20消費≫≪システムポイント30消費≫≪派生型初アンロック≫≪初派生型建造≫≪通算建造10隻≫≪星女との邂逅≫≪奴らは宙賊①≫が達成出来ており、合計で10ポイント獲得出来た。元々あった6ポイントと合わせて残り16ポイントになった。先月から資源と一緒にポイントも管理者から送られる様になったお陰で、少しだけど余裕が出来た。まぁ、実際には開発ツリーの上位になれば1回あたりの消費量が馬鹿にならないので、油断出来ないけどね。
さて、今回は達成件数と獲得したシステムポイント数が合わないと思わないか? どうやら、繰り返し達成可能な任務にては、上位の任務をクリアすればより多くのポイントを獲得出来る仕組みの様だ。確かに、より時間の掛かる任務を達成しても同じポイント数しか貰えないってのは不満が溜まるよな。この方式なら頑張って達成しようって気にもなる。後は、任務達成のタイミングが結構適当なのを改善して貰えないだろうか? 派生型のアンロックとかかなり前じゃない? 管理者仕事しろ!
「さて、16ポイントか……」
フォラフ自治国家の奪還を考えると戦艦が欲しいと思っている。更に贅沢を言えば空母もだろう。毎回、補給艦で曳航ってのは流石にね。開発ツリーから計算した限り、戦艦と空母の初期艦のアンロックに必要となるシステムポイントの合計は12だと思われる。今の時点でアンロックする事も可能だな。ただ、その前に推進剤生産プラントの拡張が必須に思える。推進剤が枯渇したら、どれだけの戦力があろうと無意味だからな。飯を食わなければ力が出ないのは、人間は軍艦も一緒だ。
推進剤生産プラントの改良に必要なポイント数は6。痛い消費ではあるが、これで日産5,000ℓにまで拡大出来るのは大きい。赴任当時は日産500ℓだったのだから、実に10倍にもなるのだ。これからますます艦艇数も増えるだろうし、生産能力の強化は至上命題だろう。後は、軍港の拡張もそろそろ考える必要があるな。現状36隻で、今の許容量は50隻。戦艦アンロックに7ポイントで、推進剤生産プラント強化に6ポイント、此処までで13ポイントを使う計算になる。軍港拡張には4ポイント必要……残念ながらポイントが足りませんね。
「戦艦は後回しにして、軍港と生産プラントかな……」
「次の強化ですの?」
「ん? ソフィーとの話は終わった?」
オッサンの呟きにシャンインが反応してくれた。どうやら、2人の内緒話は終了した様だ。特に2人とも深刻そうな表情をしている訳は無いから、問題は無さそうだね。女性の曇った表情なんぞ、見たくはないからね。女性には笑顔が似合うと、オッサンは思います!
「えぇ、女同士の内緒話なら終わりましたわ! それで、一馬様は何をお悩みですの?」
「今、16ポイントあってね? 戦艦も欲しいけど、先ずは軍港の拡張と推進剤生産プラント強化が先かなって考えていた所なんだ」
「なるほど。確かに、そろそろ軍港の拡張は必要ですね。逆に戦艦は宙賊相手には過剰では?」
「ソフィーもそう思う?」
「先日の宙賊もそうでしたが、基本彼らは小型の武装艦を使っています。数が揃えやすいのと、何より高速ですからね。脚の遅い大型艦は嫌う傾向があります」
「なるほど」
確かに、彼らのお仕事的に脚の早い船が最適だよな。武装が豊富でも、獲物に脚で負けていたら意味が無い訳だしさ。勿論、脚の速い船で獲物を抑えてからって言うならばワンチャンあるかもしれないが……。維持に掛かるコストとかを考えると、小型艦一択だよな。少なくとも、今回の一件を片付ける上で戦艦は出番が無いかな。様子を見つつ、開発ツリーを進めますか。
お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに。