表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
48/336

2-7:宙賊①

きっと、主人公には女難の相が……。


※誤字報告ありがとうございます。

 お客さんこと宙賊が現れたとあって俺達は急いで艦橋へと戻りたいが、問題は星女様だよな。さて、どうするべきか? 無難なのは監視を付けて客室で大人しくして貰う事だが……。


 「……あの、アイザフ艦長様」

 「何でしょうか? 星女様」

 「追って来ている宙賊との戦闘を、どうにか避けては頂けないでしょうか?」

 「この状況で戦闘を避ける……、理由をお伺いしても?」

 「それは……」


 どうするかと思案していた時に、アイザフ大佐へと話し掛けたのは件の星女様。しかし、その内容は中々に驚嘆すべきものだった。何故、星女様が宙賊を護るかの様な事を言い出すんだ? 少なくない信徒が、宙賊達に被害を受けているだろうに。或いは……、星女様が宙賊と関りがあるとか? いや、流石にそれは突拍子も……、無くはないのかもな。星女様と宙賊。一見すると、関わり合いになる機会が無いように思えるが、もしかしたら何か繋がりがあるのかもしれない。理由について言いよどむ彼女を横目に、アイザフ大佐へと話掛ける。


 「アイザフ艦長。ちょっと良いかな?」

 「……星女様。少々お待ちを」


 星女様に一声掛けてから、俺はアイザフ大佐とソフィーを連れて彼女から距離を取る。あくまで、可能性に過ぎないが情報をして共有しておいた方が良さそうだからな。後々、大きな反動になって返って来ないとも限らないしさ。


 「あくまで可能性の話だけど、星女様が宙賊と何らかの繋がりがあると仮定して動いた方が良い気がする」

 「っ!? その様な事が有り得ると君は思うのか?」

 「あくまで可能性ですよ。ただ単に、星女様は宙賊達の命すら尊ぶ素晴らしい御方って可能性もあるからね。ただ、あの言い方が何か気になる」

 「そうですね。彼女のあの表情は、どちらかと言えば家族や親しい友人達に向けるものに感じます」

 「まさか、宙賊側にその様な知己の者がいると?」

 「可能性だけどさ、最悪の場合はその辺の考慮も必要になるかもしれないな……」


 それはまずいなと呟くアイザフ大佐を横目に、俺はソフィーに星女の経歴を洗う様に指示を出す。付け焼刃の知識だが、元々星女ってのは後天的に選ばれる存在だそうだ。基本は先代の星女が、彼らの信仰する神『ルーフェス』との対話から後継者を選び出す。そして、教団で後継の星女たるに相応しい教育を受けるのだそうだ。つまり、俺達の目の前にいる星女様も星女になる前の人生があるって事だ。もし、その時に宙賊の誰かと知り合いだったとしたら辻褄が合わなくも無いだろう。荒唐無稽な話にも思えるがな。オッサン的には、宙賊の命すら尊ぶ御方って線で話が進む事を願うよ。


 「……香月君。どうする? 状況的に長く艦橋を留守には出来ないぞ」

 「取り合えず、宙賊から逃げましょう。第1艦隊と合流してしまえば、こっちの勝ちです。彼らも正面切ってやり合う覚悟は無い筈かと?」

 「それしかないな。よし、艦橋に戻るとしよう。ベルス! 荒い操艦になるから、彼女を客室に案内してやれ! 目を離すなよ?」

 「了解です、艦長!」


 一旦、彼女を放置して宙賊と向き合うとしよう。聞きたい事は山ほどあるが、今は命を守らねばならないからね。此処で死んだら元も子もないよ。管理者にもきっと笑われる。オッサン、その様な屈辱だけは味わいたくないです。




 駆逐艦サイズの貨客船とは言え、低重力下とは言え相応に広い艦内を大急ぎってのは中々足に応えるものだ。もう少し、運動して体力を付けないと駄目だな。日々精進なり。まぁ、基本要塞内から動かないけどさ。ちょっと運動しただけで膝に手を付いてハァハァ言っているのは、流石にカッコ悪いじゃん?


 「ご苦労! 私が指揮を執る!」

 「了解!」


 アイザフ大佐に代わり指揮を取っていた副長が席を譲り、再び大佐が艦の指揮を握る。この辺のスムーズな動きは流石に経験を積んだ軍人だよなってオッサンは思います。動きに一切の無駄が無いのよ。


 「宙賊の位置は?」

 「本艦の後方5万に3隻、3時方向と9時方向にそれぞれ5万~10万で2隻ずつです!」


 レーダー監視を担当している乗組員からの報告を聞きつつ、艦橋正面上部に設置された戦術モニターを睨む。現状、宙賊は後方から半円を描く様に迫ってきている様だ。左右の艦で此方の脚を止め、後方の艦で抑えにくる心算だろうか? 或いは、頭を抑える為の伏兵が更にいるかもしれないな。


 「ソフィー、第1艦隊の到着は?」

 「……合流まで後、5分程かと」

 「5分か……。少なくとも、それまでは彼らと鬼ごっこする羽目になりそうだな」

 「香月君! 荒い操艦になるから、何かに掴まれ! 後、ヘルメットもな!」

 「りょ、了解!」


 そう言えば、軍艦なりに乗って戦闘を直に体験するのってこれが初めてだな。最初のディーシー号との邂逅にしろ、ガルメデアコロニー攻防戦にしろ、俺は要塞に陣取って指揮を出しているだけだったからさ。これも経験って事なのだろうけど、乗り物酔いは平気だろうか? オッサン、結構弱いのよね。


 「回避パターンはランダム! 攻撃兵装使用は……禁止! 味方との合流まで、兎にも角にも時間を稼げ!」

 「「「了解!」」」


 先ほどまでの穏やかな航行からうって変わり、上下左右が目まぐるしく変化していく。そもそも宇宙空間において上下とか意味があるのかいって話ではあるが。その様な事を考えている余裕は直ぐに無くなった。激しい操艦の影響で、身体が彼方此方へと飛ばされそうになるのだ。艦橋に設けられた仮設の椅子に固定してどうにか乗り切っていはいるものの、ベルトが切れたら弾丸の如く天井なりに突っ込んでいく羽目になりそうで怖い。

 他にも心配の種はある。自分の様な乗客向けに貸与されている宇宙服を着ているのだが、物凄く薄いけど大丈夫なの? ヘルメットもバイクのヤツとそう変わらなそうだしさ。一応、生命維持装置ってのが背中に付いてはいるらしいが不安だ。要塞の恵まれた環境が懐かしい、オッサンでした。


 「3時方向、発砲光確認! 来ます!」

 「下げ舵30! 第1・第2サブブースター逆噴射の準備もしておけ!」

 「後方3隻、速力を上げ更に接近中! 交戦距離まで45秒!」

 「後方、閃光魚雷発射準備! 3番・4番! 近接設定で発射!」

 「3番・4番、発射します!」


 左右の宙賊が交戦距離となり、最初に3時方向の艦から艦砲射撃が開始された。勿論、彼我の艦には相応の距離があり、お互いに高速で航行しているのでそう易々と被弾する事は無い。しかし、今まではモニター越しに戦況を見ていただけの自分に取って、生身の戦闘ってのは思った以上に身体に応えるな。これが、命のやり取りをしている現場って事なのだろう。緊張感、半端ないって。


 「9時方向より魚雷6! 本艦命中コースです!」

 「迎撃準備! 近接弾装填! 1・2番主砲を回せ!」

 「了解! 後方、閃光魚雷撃墜されました!」

 「止むを得ん! 3番主砲で牽制射撃! 味方艦との合流まで、もう少しだけ時間を稼げ!」


 1対8と言う、かなり不利な状況にも関わらず、乗員達に悲壮感は現状見られない。彼らは合流する第1艦隊の陣容を知っているからな。合流さえ出来れば、後は任せてしまえば良いの気持ちも楽だろう。気持ちの面で余裕があるだけで、1つ1つの動きも変わってくる。当たり前だけど、気持ちで負けないってのが大事だよな。


 「司令官! 来ます!」

 「よっしゃ! 大佐! 駆け抜けろ!」

 「っ! よし、牽制射撃止め! このまま振り切れ!」

 「了解!」


 ソフィーの合図より僅かに遅れて、ディーシー号の直上を高速で通過していく複数の影。以前、ソフィーがアレと称した要塞の秘密兵器達だ。先のガルメデアコロニー攻防戦に投入したイースキーに代わり、コロニー内部での戦闘も想定した兵器。今回は、カランズ級補給艦に曳航させる形で連れて来ていたのだ。デザイン的にはイースキーを一回り程大きくしつつ、武装を減らした戦闘機と言った体だが、1つ特徴的な違いがあるのだ。何かって?


 「変形だよ! 変形! 燃える男の浪漫! それは変形!!」


 握り拳を天高く突き上げ断言する。きっと、今のオッサンの背景には無数の集中線が描かれている事だろう。馬鹿な事やってないで、現実に帰って来いって? 分かりました、帰ります。ちなみに、兵器の名称は試製可変戦闘機『オグマ』。カッコイイでしょ? イメージは宇宙で歌でカルチャーな世界に出てくる可変戦闘機だね。でも、我らが『オグマ』には戦闘機形態と人型形態しかありません!


 「おっほん。取り合えず、友軍の艦載機隊が宙賊の足止めに向かってくれたから、今の内に艦隊と合流しましょう」

 「そ、そうだな……」


 若干、アイザフ大佐の視線が痛いが気にしない。オッサンは、自分の世界に生きるのです。強く生きろ、オッサン! 頑張れ、オッサン! 燃える浪漫に周囲の不理解と言う障害は付き物だ!




 その後、無事に艦隊と合流出来ましたよっと。えっ? 宙賊はどうしたって? ちゃんと、星女様に言われた通りに戦闘を回避しましたよ? まぁ、実際には艦載機部隊と此方の艦隊が見えたであろう宙賊が尻尾を撒いて逃げて行ったってだけなんだけどさ。当初の予定では、エンジンや武装を潰した上で1、2隻を拿捕してガルメデアコロニーまで曳航する心算だった。宙賊への尋問と、彼らが使っている艦のメインシステムからデータを引っこ抜く為にね。でも、戦闘を回避してくれと言われて止む無く方針を変更した訳だ。さて、結果的に活躍出来なかった第1艦隊だから、此処でその陣容を紹介するとしようかな。


 第1艦隊

 カンターク級巡洋艦(電子戦型)1隻

 ウェクスフォード級駆逐艦6隻

 カランズ級補給艦(改修型)1隻

 試製可変戦闘機『オグマ』8機


 旗艦は、派生型へと改良を行ったカンターク級巡洋艦が務めている。電子戦型ってのは、主砲1門と対空砲4基を撤去する代わりに、電波探知妨害装置に加えて自走式のデコイ射出装置を搭載している。火力面は下がるけど、索敵面や防御面では向上した艦だね。将来的には、戦艦や空母の随伴艦としての役割を期待している艦となる。

 ちなみに、要塞にはこれと同規模の第2艦隊の他、カンターク級巡洋艦1隻と改アスローン級駆逐艦8隻で構成される第3・第4艦隊が駐留している。お出掛け中に要塞へ不審者が押し掛けても、シャンインの指揮の元で十分に対応出来るとオッサンは踏んでます。えっ? またチート的に艦を増やしたのかって? 管理者から貰ったカンターク級巡洋艦3隻と改アスローン級駆逐艦12隻以外は、全て自前で資材から建造したものだぜ。ちゃんと計画的に建造を行った結果だよ(ドヤ顔


 「さてと、当初の予定からだいぶズレちゃったな……」

 「ふむ。狙い通り宙賊を釣れたのは良いものの、結果的に戦果はゼロか」

 「一応、何らかの情報を握っているであろう星女様は確保しましたけどね?」

 「そうは言っても、長い間こちらの手元に置ける訳も無いのは香月君だって分かるだろう? 直ぐにパルメニア教が騒ぎ出すぞ?」

 「ですよねー」


 どうしてこうなった? オッサンは、切実に答えを求めています!

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。


※偶には、こんな参考情報でも。


2章開始時点での、要塞保有戦力一覧及び資源


・巡洋艦

カンターク級巡洋艦(電子戦型):2隻

カンターク級巡洋艦:2隻


・駆逐艦

改アスローン級駆逐艦:16隻

ウェクスフォード級駆逐艦:12隻


・補給艦

カランズ級補給艦(改修型):2隻


・兵器

思考爆雷:30個

機動150㎜対艦砲(連装型):16門

イースキー:4機

試製可変戦闘機『オグマ』:16機


金属:105,225t

非金属:43,639t

推進剤:84,025リットル

弾薬:10,807t

SP:6


艦艇数、兵器数、資源、SP等の数値については、作中では描かれていない増減があります事をご了承下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >>「っ!? その様な事が有り得ると君は思うのか?」 主人公ごときが気がつく事に、大佐ともあろう人が気がつかないのは 違和感が強いですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ