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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
47/336

2-6:回収しました②

フラグは回収するモノ。放置良くない!

 艦の指揮を副長に任せたアイザフ大佐の先導の元、俺とソフィー、客室で休憩中だったクロシバを含めた4人でディーシー号の後部貨物デッキへと訪れていた。ディーシー号は貨客船と言うだけあって、船体の上部は艦橋であったり、乗客用の客室やレクリエーションルーム等が設けられている。一方で船体下部には乗員達の生活スペースや機関室以外に、貨物を収納しておくための前部貨物デッキと後部貨物デッキがそれぞれ設けられている。

 貨物デッキ内は、大型のコンテナを固定して保管するスペースの他に、貴重品等を保管する金庫室や超低温の保冷庫、液体を運ぶ為のタンク、果ては真空状態で物資を運ぶ特殊な一室まで存在する。今回は、主にランドロッサ要塞で生産された寄進用の品々を荷物として運搬して貰っていた。帰りは、コンラッドコロニー特産の酸味のある果実『マイキー』や、教団本部で醸造されているワイン等を購入してガルメデアコロニーへと運んでいる。俺達が支払っている船賃以外にも、こうやって様々な物資を運ぶ事でディーシー号は利益を上げている。当然、船賃は正規料金でキッチリとお支払いしている。おいおい、関係者割引は無いのかって? 割引は無い代わりに、オッサン達の依頼を最優先に受けて貰っているから問題無いよ。流石に要塞の軍艦をタクシー代わりには出来ないからな。


 「さて、問題の御仁は?」

 「ふむ。ベルス! 何処だ!」

 「……艦長! こっちですよ!」

 「どうやら、金庫室の様だな」


 どうやら、例の御仁は金庫室にいる様だ。まぁ、オッサンは場所知らないんだけどさ。追悼式典の際と、今回と都合2回ディーシー号に乗る機会を得た訳だが、貨物デッキに来たのは今回が初めて。なので、デッキ内の配置なんぞ分かる訳も無いので、アイザフ大佐に大人しく付き従う他に選択肢は無い。

 アイザフ大佐に金魚のフンよろしく、くっ付いてデッキ内を歩く。声の感じからしたら、そこまでの距離は無い様だ。実際、ものの1分と掛からずに目的地まで着いたしな。


 「ベルス、待たせたな。で、その娘が例の?」

 「へい。金庫室の棚の奥で息を潜めていまして。俺とモッコで見つけたんですわ」

 「そうか。彼女1人か? 他に不審者は?」

 「見つけたのは彼女1人ですな。今、モッコに言って若いのと何人かで前部と後部の貨物デッキを再確認させてますんで」

 「ご苦労」


 アイザフ大佐とベルスと呼ばれたおっちゃんとの会話を聞きながら、俺は星女と名乗る密航者を観察している。髪はブロンド、瞳は青。ほとんど化粧をしていない様で、かなり幼く見える。美人と言うよりか、可愛いって表現の方が合いそうだな。簡易イスに腰掛け、此方の様子を伺っている様だ。視線が合うと、僅かに睨むような表情をされた後で顔を背けられた。はて、オッサンは何か気に障る様な事をしただろうか? 少なくとも、彼女と会った覚えは無いぞ? 化粧していたとしても、支部で会った何れの女性とも違うしな。後は、聖戦師団と殉教師団関係者って線だけど、幾ら何でも殉教師団は無いよな。星女と殉教師団が繋がってますとか最悪だわ。


 「私は、この艦の艦長を務めるバンロック・アイザフだ。君は?」

 「……リリィ・ホルトリッジ・パルメニアです。132代目の星女を務めております」

 「……ふむ」


 自己紹介して軽く頭を下げる星女。あっ、また一瞬だけ視線が合ったけどやはり僅かに睨んでから避けられたな。1度ならず2度となると、オッサンとしては気になる。原因は何だ? 思い当たる節が無いよな。いや、マジで。基本的に要塞から一歩も外に出ないしね?


 「なぁ、ソフィー。彼女が本物の星女か確認する方法ってある?」

 「……少々お待ちを」


 敵意とも思える感情の理由はともあれ、彼女が本物かどうかで対応は大きく変化する事になる。なので、小声でソフィーに何か無いかと聞いてみると、何やらある様だ。流石はソフィー、優秀過ぎる。1家に1人、ソフィーをどうぞ!


 「……」


 手持ちの端末を星女(自称)に向けた後、何やら操作しているソフィー。はてさて、何を調べているのだろうね? ネット画像とかと比較するとかしているのかな? オッサンは、知らない女優さんとか良くネットで調べてました。


 「……結果が出ました。ご覧ください」

 「どれどれ……」


 そこに映し出されているのは、目の前の少女と、何かの祭典中と思しき絢爛な衣装を身に着けた女性の姿。もしかして、この女性が星女なのだろうか? 化粧の影響なのか同一人物とはとても思えないな。で、その両者を比較したって事なのかな?


 「左が彼女。右が昨年のパルメニア教最大の祭典『例大祭』での祝詞を述べた時の星女。双方の映像から骨格情報を抽出・分析した結果、95%の確率で同一人物であると思われます。念の為、他の映像等も比較してみますが、確率からして本物と見てまず間違いは無いかと」

 「すげー」


 くらいむしーんいんべすてぃげーしょん


 頭の中に、その単語が思い浮かんだ。オッサン、アレ大好きです。特にフロリダ舞台のヤツ。サングラスの似合うおじ様になりたい、オッサンでした。フロリダより熱いハートを持った、子供に優しいおじ様はカッコイイよね?


 冗談はこの辺にしておいて、その端末があれば科学分析官さんが失業しかねないのではとオッサンは思う。と、まぁ怒られそうだから、追加の冗談もこの辺にしておこう。ソフィーの分析曰く95%の確率で同一人物って事だが、つまり俺は星女から怯えられる何かをしでかしたって事だよな? ますます、意味が分からない。寄進して支部長と話をしただけだろ? それがどうして星女から怯えられる事態に繋がったのやら。


 「……睨まれていましたが、彼女に何かした覚えでも?」

 「……心当たりが無いから困ってる」

 「そうですか。そうなると、貨物デッキに潜り込んでいた理由がカギになりそうですね」

 「だな。しかし、本物となると厄介だ。間違いなくパルメニア教は大騒ぎになるだろ……」


 そう、今1番の問題はそこだと思う。星女と呼ばれる人物が行方不明になった何てニュースが流れた日には、コンラッドコロニーを始めパルメニア教お膝元の各コロニーは大騒ぎになるだろう。それだけで無く、3大勢力の勢力圏まで情報が流れるのも時間の問題だ。それらがどういった反応を各勢力から引き起こすか、残念ながら全くの未知数だ。現状で1番良いのは、今すぐコンラッドコロニーへと引き返す事だな。


 「アイザフ艦長」

 「何だ?」

 「耳を拝借。……本物だ」

 「……そうか」


 伝えるのはたった一言なれど、その言葉は我々に取ってとても重い。伝えられた方の、アイザフ大佐も若干だが顔色が悪くなったしな。俺もきっと似たような表情をしているだろう。宙賊を釣り出すぞって時に、特大の爆弾を腹に抱え込む破目になった訳だからな。


 『艦長。後方より例のお客さんです。数は……8!』

 「「なっ!?」」


 艦内スピーカーから聞こえて来た副長の声。俺とアイザフ大佐がその内容に対して、思わず同じタイミングで驚愕したのは必然の事。事態は更に悪化していく様だ。オッサン、胃薬が欲しいです。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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