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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
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2-5:回収しました①

結局、こうなるってね。

 翌朝、俺達は無事にコンラッドコロニーを後にしていた。まぁ、実際にはアイザフ大佐に連絡して、腕の立つ乗員を護衛として何人か寄越して貰ったんだけどさ。お陰で、ホテルから宇宙港への道中は特に問題も無く過ぎ去った。ソフィー曰く、尾行していた人間は居たらしい。次回来るときは、最初から護衛を増やそう。次も同じような事が起こらないとは、決して言えないしな。安全第一だよ。


 「香月君。間も無く、コンラッドの警戒網を抜けるぞ?」

 「分かりました。取り合えずは、予定通りの航路を進みましょう」

 「承知した。総員、第2種警戒! 不測の事態に備えよ!」

 「「「了解!」」」


 アイザフ大佐の号令の元、ディーシー号の艦橋が俄かに慌ただしくなる。各々が自身の持ち場の確認をしつつ、過不足無い様に準備を進める。流石に、練度が高い乗組員達ってのは凄いな。素人の目で見ても、動きに一切の無駄が無い。その様子を満足げに見つめながら、正面を険しく見つめるアイザフ大佐。

 以前は、司令官殿呼びだったが、最近は君付けになる位には彼とも仲良くなれたと思う。そんな彼の横に立ち、俺も艦橋から外の様子を眺める。遠くに淡く光る星々が宇宙の広さを教えてくれている様だ。時折、小規模なデブリが散見されるが、それ以外には何も進路を邪魔する物は無い。


 「香月司令官。第1艦隊は、当初の予定通り後30分程の場所に展開しています」

 「了解。さてと、罠に掛かるかな?」

 「現時点では、レーダーには反応が無いな。様子見をしているのか?」

 「来ないなら来ないで、リスクを減らせるので構いませんけどね」

 「確かに。私も軍人ではあるが、避けられる戦いは避ける性分でね」


 別に、好き好んでドンパチやりたいとまでは流石のオッサンでも思っていない。降りかかる火の粉は容赦無く払うけどさ。それ以外は、出来るだけ平和的な解決を望みますよ? えっ、信じられないって? まぁ、これまでのやらかしから仕方が無いか。でも、気持ち平和主義的にいきたい今日この頃。


 「ちなみに、宙賊と繋がっている教団関係者は絞り込めたのかな?」

 「ある程度は。元々、予想していた連中は居ましたし、それ以外にも複数人が今回の件を宙賊側に流してましたね」

 「話を聞く限り、ズブズブの仲の様だな。犯罪者と手を組む宗教団体か……。信徒が哀れだな」

 「ただ、不幸中の幸いと言うべきか。教団のトップクラスの連中は、今の所は白ですね」

 「微妙な立場の連中が、欲を出したか」


 最初は教団のトップクラスまでズブズブかと思っていたが、調べさせた限りでは白だった。勿論、他の方面で真っ黒な可能性は捨て切れないがな。星系最大の宗教組織であり、豊富な資金源を持つパルメニア教。繋がりを持ちたい連中は、星系中に沢山いるだろうしな。


 「組織が大きくなるほど、腐る部分も出てくるか」

 「ある意味で、それは組織として普通なのかもしれないですね」

 「組織として避けられない運命だと、君は思うのか?」

 「あらゆる組織が腐るとは思いません。でも、組織に所属していながら馴染めない存在ってのは必ず出て来ますから。後は、高すぎる野心を持つ者も危険でしょうね。外部組織からしたら、取り込み易い存在と認識されますから」

 「宗教組織も、その運命からは逃れられないか……」


 まぁ、実際には完璧に纏まった組織だろうと、付け入る隙ってのは作れるけどな。親兄妹、配偶者、子供。それらを人質に取れば、言う事を聞かない人間の方が少ないだろうさ。宙賊と教団関係者がどの様な経緯で繋がりを持ったのかは不明だ。自主的に繋がりを求めた者もいれば、中には強要された者もいるかもしれないな。ただ、今はその理由等はどうでも良い。ナターシャ嬢達の為に、フォラフ自治国家へ向かう道の安全確保が最優先だ。


 「彼らがどの様な理由で繋がったにせよ、我々の標的は宙賊です。結果として、彼らが何を失うとしても、それは自業自得でしょう」

 「そうだな。我々は譲れない目的の為に、今ここに居る。立ち塞がる者は、何者であろうとも倒すのみだ」

 「そうですよ。祖国を取り戻すまで、我が儘に行きましょう」


 宙賊からしたら、良い迷惑だろう。それぞれの勢力圏から外れたこの地で、伸び伸びと宙賊業に励んでいただけなのに、邪魔だからと言う理由で排除されるのだからな。彼らからすれば、理不尽と言わざるを得ないだろう。でも、邪魔だから仕方が無いだろう。現実は無情なんだよ……。オッサン、宙賊に先に黙祷しておくわ。


 「さて、何だかんだでそろそろ合流ポイントに」

 『艦長!』

 「ん? ベルスか? どうかしたか?」

 『……後部貨物デッキでトラブルですわ。しかも、特大の感じがビンビンの』

 「トラブル? 何があった?」

 『招かれざるお客さんですわ。しかも、自分はパルメニア教の星女だと』

 「なっ!? ……本当ならば、特大の爆弾だな」


 アイザフ大佐と部下のベルスさんの会話。聞こえてはならない、単語が会話の中から漏れて来た気がするのはオッサンの錯覚だろうか? 今、星女って言ったよね? パルメニア教の星女? 以前、フラグ立ったと言ってましたが、本当に立ちました?


 「星女の動向監視では異常は無かったよな? もし、本人だとしたら何らかの手段で掻い潜られたのかな」

 「監視していたとは言え、完璧とは言えません。恐らく、何らかの手段で此方の監視を掻い潜ったかと」


 オッサンとして、星女と言う特大のフラグを避けたかったのだけれども。運命ってのは何て残酷なんだ。オッサンが何をしたって言うのだ!? えっ? 色々とやらかしているって? それは、オッサン的にカウントしません。


 「それもそうだな。……もし本人だとしたら、何が目的に乗り込んだ?」

 「それは当人に聞いてみるしか無いだろうな。香月君も行くか?」

 「ですね。直接会って確認しましょう。ソフィー、歩きながらで悪いけど第1艦隊を迎えに寄越してくれる? 万が一、本物だった場合に備えてさ」

 「了解しました」


 宙賊を迎撃させる為に、某宙域で待機させていた第1艦隊を急遽呼び出す羽目になった。これで星女を騙る偽物だったとしたら、理由の如何を問わず宇宙遊泳をさせた上で艦砲射撃の的にしてやる。オッサン、激怒です。星女とかマジ勘弁。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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