表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
44/336

2-3:コンラッドコロニー③

登場人物が整理出来ない作者は死刑。

 簡単な聴取を終えた俺達は、聖戦師団の詰め所から彼らに警護される形でパルメニア教コンラッド支部へと足を運んだ。流石に、襲撃を受けた支部長の客人をそのまま外へ放り出す勇気は無かった様だ。まぁ、この手のVIP待遇は初めてだったので、オッサン的に良い経験が出来て満足。

 パルメニア教コンラッド支部は白い3階建ての建物だった。周囲は色とりどりの木々や花々が植えられ、小さな小川のせせらぎが耳に心地良い。重厚な正面玄関を潜り抜けると、赤い絨毯が敷き詰められたホールが目に飛び込んできた。伝統あるホテルのロビーみたいだなと場違いな感想を抱く。ホール中央にある受付で名前を告げると、案内の女性が直ぐに迎えてに来てくれ3階にある応接室へと案内された。


 「支部長は間も無く参りますので、お掛けになってお持ち下さい。只今、お飲み物をお持ち致します」

 「ありがとうございます」


 応接室まで案内してくれた女性は丁寧にそう告げると、部屋を後にした。客として過剰に持ち上げられるのは好きでは無いけれども、心地良い持て成しは嬉しい。オッサン、宗教施設じゃなければ長期滞在したい。


 「思ったよりスムーズだね」

 「一馬さんは、ガルメデアコロニーの統括的立場の人間からの紹介状を持っていますので、無下には扱われないかと」

 「それで思ったんだけどさ、一応あのコロニーって流刑者の送り込まれた場所だろ? そこのトップからの紹介状ってそこまで威力を発揮するものなのか?」

 「一馬さんの言う通り、あのコロニーは成り立ちが特殊です。少なくとも3大勢力の影響下では、あの男の紹介状など紙切れ同然ですね。ですが、此処の様に距離も近く何れの勢力からも独立したコロニーであれば、少なく無い取引もありますので、結果として有効な手段になり得るのです。あの手の連中も使い道がありますから……」

 「なるほどね」


 パルメニア教も表の光輝く部分がある一方、表に決して出せない暗い部分も持ち合わせているって事か。それに、惑星などに比べて資源が制限されるコロニー同士、相互補助的な付き合いもあるのだろう。


 「まぁ、お陰でやり易くなったのだから、あのスキンヘッド紳士にも感謝しないとな」

 「そうですね。役に立つ内は、精々こき使いましょう」

 「……ノーコメント」


 クロシバは聞かなかった事にしたいらしい。ソフィーって、要塞関係者以外には結構キツい部分あるんだよな。シャンインも似たような所はあるけれども……。まぁ、身内可愛さって事だと思っておこう。




 そんなこんなで、お喋りしていると、応接室のドアがノックされ男が先ほどの案内してくれた女性を伴って室内へと入ってきた。男が恐らく、コンラッド支部の支部長を務めているバイセル・オルガだな。身に着けているのは、元の世界でいうカンドゥーラに似ているな。カンドゥーラってのは、中東の民族衣装で、偏見ぽいけどアラブの石油王とかが身に着けている様なイメージがある白い服の事。

 一方、案内役の女性は、人数分の白い陶器らしきカップや幾つかの小さな容器をテーブルに並べると、黙礼して部屋を後にした。赤茶色の液体が入っているが、紅茶とかだろうか?


 「お待たせ致しました。パルメニア教コンラッド支部を預かります、バイセル・オルガと申します」

 「ご丁寧にどうも。民間防衛組織(・・・・・・)『ランドロッサ』の香月一馬と申します。オルガ支部長様。本日はお忙しい中、貴重なお時間を頂き感謝致します」

 「何の、何の。ガルメデアのサントス殿からの紹介ともあれば、この程度雑作もございませんよ。……それに、聞いた所では既に数多の寄進を頂けたとか? 貴方様の尊いお心遣いは、確かに我らが神へ届いておりますとも」

 「それは、何よりです。何分、礼節に疎いものでして失礼が無ければ良いのですが……」

 「ご安心下さい。大切なのは、形では無く思いでございますので」


 ソファへと深く腰掛けたオルガ支部長と形式じみている挨拶を交わす。歳は50半ば位だろうか。ゆったりとした衣装の上からでも分かるポッチャリ体型。微笑を浮かべているが、その眼光は中々に鋭い。此方をじっくりと観察しているのだろう。まぁ、支部長ともあろう人物だしな。人を見る眼は肥えているだろうさ。


 「先ほど聖戦師団の者に聞きましたが、市中で襲われたとか? 皆様にお怪我が無くて本当に良かった」

 「お陰様で、この通り皆も無事です。お騒がせしました」

 「いえ、無事で何よりでしたな。……此処だけの話ですが、どうやら皆様を襲った男はパルメニア殉教師団の構成員達だった様です」


 周りを警戒しつつ、若干前屈みになりながらそう呟くオルガ支部長。パルメニア殉教師団とな? 聖戦師団と何らかの関係があるのだろうか?


 「殉教師団ですか? 恥ずかしながら、初耳ですね。どういった組織なのでしょうか?」

 「彼らは、パルメニア教の教えを曲解し、異教徒や信仰を持たぬ者達へ力による信仰や改宗を求めているのです。我々からすれば、彼らの在り方は同胞ではなく、暴力を繰り返す過激派。……テロリスト集団なのですよ」

 「テロ集団ですか……。とすれば、我々が狙われたのは」

 「恐らく、誘拐し力尽くで信仰を埋め込むためでしょう。皆様が入国の際に、信徒かどうかの確認があったかと思います。そこでの情報が何らかの形で彼らに流れたと言う所でしょうな」

 「なるほど」


 これだから、宗教ってのは面倒なんだよ。誰が何を信仰しようが自由だろうに。信仰ってのは、誰かから強制されて抱くものじゃない。それを理解出来ない馬鹿が、力を持って増長しているのが殉教師団って阿呆組織の実態か。


 「最近では、この宙域を縄張りにしている幾つかの宙賊と、彼らが手を組んでいるとも聞き及んでいます。彼らは他の宙域へと勢力を伸ばそうとしているのやもしれません」

 「そうでしたか。で、あるならば我々の提案が功を奏するかもしれませんね」

 「そう言えば、サントス殿から皆様がこの宙域の宙賊について関心を持っていると伺っていましたな。話の流れ的に丁度良いタイミングのようですし、具体的にお伺いしても?」

 「勿論です」


 殉教師団の馬鹿が馬鹿をしてくれたお陰で、話の取っ掛かりが出来た事は素直に喜ばしい。そうじゃないと、切り出すタイミングを計る必要があったからな。殉教師団様々だわ。お礼に、宙で会ったら塵も残さず殲滅してやるよ。


 「安定した環境にある惑星と異なり、資源に乏しいコロニーに取って通商航路は生命線とも言えるものです」

 「確かに。我々のコロニーとて、それは同様ですな」

 「しかし、最近では我々が居を置くガルメデアコロニー近郊宙域でも、宙賊の出現により通商航路が脅かされてきています。そして、現時点で宙賊が根城にしていると推測されるのが……」

 「コンラッドコロニーが在る、この宙域と言う事ですな?」

 「オルガ支部長様のご推察通りです」


 取り合えず、話の出だしは大丈夫そうだ。此処からしくじったら話にならないからな。最低限の興味を引けていれば、話もし易い。何て言うか、サラリーマン時代のプレゼンを思い出すな。オッサン的には、嫌な思い出ばかりだけどさ。


 「先ほど申し上げた通り、我々は民間の防衛組織です。通商航路の警備もガルメデアコロニーから依頼されております」

 「ふむ」

 「我々は通商航路の安全を確保する手段として、彼らが根城としている廃棄コロニーやデブリ帯での宙賊掃討戦を考えております」

 「なるほど。そうなれば、この宙域は必然的に騒がしくなる。故に、我々と事前協議を行った上で掃討戦を行いたいと言う事ですかな?」

 「はい。この宙域の有人コロニーは何れも、パルメニア教の皆様が信仰と共に生きる地と決められた大切な場所。掃討戦ともなれば、何かとご迷惑をお掛けする事になるかと思いまして、こうして事前にお話しにお伺いさせて頂いた次第です」

 「お話は分かりました」


 そう言って、言葉を1度切り、思案顔を浮かべつつ此方を見つめるオルガ支部長。その瞳は何を見ているのか、或いは何を語っているのか。オッサンとしては、オッサンに見つめられても嬉しくない。美人なら大歓迎。これ、以前も言った気がする。でも、仕方が無い。何度だって言いたいのだ。だって、オッサンだもの。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ