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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第2章:星女と宙賊と戦艦
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2-1:コンラッドコロニー①

いよいよ2章『星女と宙賊と戦艦』がスタートします。スケール感、前章より110%程ダウン気味でお送りします(えっ


※誤字報告ありがとうございます。

 今回も月日は無情に流れフォルトリア星系歴7月25日午前11時少し前、俺とソフィー、それからタロ・ローガン中佐改めタロ・クロシバの3人は、貨客船ディーシー号でコンラッドコロニーへと訪れていた。ちなみに、身バレ防止で改名と黒く毛染めして貰ったローガン中佐には、クロシバと家名を名乗る様にお願いしておいた。勿論、天然成分由来の毛染め薬なので健康被害は無い。それにコンラッドコロニー内での限定的な対策だしな。何処に共和国の目があるか不明な以上、対策は必須だった。

 さて、パルメニア教のお膝元と言う事もあってか、コロニー内には宗教関連施設が彼方此方に建てられている。教団の本部は、コンラッドコロニーから更に3光分程離れた場所にある、第7コロニー『フォルッジ』にあるそうだ。しかし、それを差し置いても神秘的な雰囲気の建物が多いな。その分、金も掛かってそうだけど。


 「結構、賑やかなコロニーだね。宗教絡みって聞くと、もっと厳かな雰囲気を想像していたけれど」

 「本部があるフォルッジコロニーと異なり、此処コンラッドコロニーは観光面でも力を入れている様です。まぁ、戦乱の影響でそれにも陰りがある様ですが……」

 「ふむ。何と言うか、面白みの無い街だな」

 「確かに、クロシバの言う通り何処か薄っぺらい感じがするな。ハリボテって言えば良いのか?」

 「元々、何れのコロニーも宗教色の非常に強い場所でしたので、他の分野に注力しても不自然さが消えないのでは無いでしょうか?」

 「なるほどね」


 入港及び入国手続きを終えて、コンラッドコロニー内を3人で散策している。パルメニア教のコンラッドコロニー支部長との面会が午後一なので、それまで内部の練り歩く事にしたのだ。今歩いているのは、宇宙港からモノレールで4駅ほどの距離にある中央広場と呼ばれる場所。広場の彼方此方に出店が立ち並び、雑踏とした雰囲気を醸し出している。一方で、雑踏から少し外れた所に独特なデザインをした蒼いマスクをした者達がチラホラと見受けられる。仮装中のコロニー市民だろうか?


 「あの仮面の人達は?」

 「あれは、パルメニア教が保有する準軍事組織であるパルメニア聖戦師団の構成員ですね。主にコロニー内の治安維持を担っています」

 「宗教に軍事組織。最悪の組み合わせだな」

 「中々に隙が無い。香月殿、用心した方が良い。私だけでは手に余る連中やもしれん」

 「了解。元々、騒ぎを起こさない為の訪問だからな。大人しくしていよう」


 組織名を聞いただけで、ヤバそうな連中だと認識出来る。お近づきにならないのが、ベスト。手短にコロニー内の観光を終えて、予約したホテルへ向かう方が良いかもしれん。


 「……一馬さん。どうやら、尾行されている様です」

 「仮面の連中?」

 「それは不明ですが、最低2人は居ます」

 「ん~、狙いは誰だろう?」

 「お2人のどちらかでしょうね」


 初めて来たコロニーで、初っ端から尾行されるとか笑えない。俺とクロシバのどちらがターゲットか……。或いは両方とか? 何れにせよ、面倒事が向こうからやってきた様だ。ガルメデアの時と違って、流石に戦闘アンドロイドを連れて練り歩く訳にもいかず、3人だけで来たのが不味かったかな。


 「クロシバ。何か心当たりある?」

 「……パルメニア教と揉めた覚えは無い。とは言え、軍人故に知らぬ所で恨みを買っていないとは言えないな」

 「そうか。俺も無いと思いたい……」


 クロシバは共和国の軍人として戦ってきた経歴がある。過去の戦闘が原因で恨みを買っている可能性はあるだろう。一方の俺は、どうだろうか? ガルメデアコロニー攻防戦で共和国かコロニーの何れかから、恨みを買った可能性はあるな。うん、結論からして俺らどちらかの可能性が高そうだ。因果応報ってヤツかね。


 「どうされますか?」

 「取り合えず、警戒しつつ人の多すぎ無い所を選んで歩こう。下手に人込みに紛れられると厄介だ」

 「では、私とクロシバさんで前後を警戒しますので、一馬さんは左右だけ気にして下さい」

 「了解。2人共、無理しないでな?」

 「了解です」

 「無論だ」


 2人から了承を受けつつ、俺は周囲へと視線を走らせる。ぶっちゃけ、不審者とそうで無い人の見分けなど出来ないのが実情だな。ただ、少なくとも見えた範囲で俺の方を見ているヤツはいない。まぁ、尾行者も気が付かれない様に視線には注意しているだろうから、精々警戒しているってアピールにしかならないだろう。


 「一馬さん。万が一の時は、お渡しした物を躊躇わずに使用して下さい。貴方の腕でも威嚇程度にはなりますし、何よりも音を聞けば聖戦師団が駆け付ける筈ですから」

 「……了解」


 思わず、それを確認するかの様に左胸辺りに手を当ててしまう。そこには、ソフィーからコロニー到着後に渡されたホルスターに収められた小型の拳銃が1丁。俺みたいな素人でも扱い易い反動の小さな物らしい。出来るだけ、使わない事を願おう。


 「香月殿。気負う必要はない。そうならない様に、我々がいる」

 「そうですね。一馬さんは、気楽に構えていて下さい」

 「了解。少しだけ、気持ちが楽になったよ」


 クロシバは軍人としての経験があるから分かるが、ソフィーも凄いよな。少なくとも、彼女は軍人では無い。まぁ、金属生命体だから人間と同じ基準で考えては駄目なのだろうがね。オッサンは…格闘技の経験も無ければ、運動部だった経験も皆無。一応、ランドロッサ要塞に来てから、定期的にジムやプールで運動はしているが、それがどの程度役に立つかは不明だ。逃げ足には役に立つだろうか? 射撃訓練は少しだけした……。


 「……尾行者が増えましたね」

 「ふむ。仕掛けてくるか?」

 「判断に悩む所ですね。依然、人がそれなりにいる場所ですので、確実に騒ぎになりますから」

 「或いは、騒ぎが狙いか?」

 「クロシバ。それって、俺らが狙われていると言うより、別の目的があって利用されてるって事か?」

 「その可能性もあるという話だ」


 オイオイ、オッサンを追いかけ回した挙句、目的は別とか勘弁してくれよ。そもそも、騒ぎを起こすなら人を追い掛ける必要ないよな。適当に人の多い所で喧嘩でも起こせばいい訳だしな。となると、少なくとも俺らに目的があると考えた方が良いのか? ん~、オッサンには分からん。


 「何れにせよ、そろそろ撒きましょう。これ以上、一馬さんを危険に晒す訳にはいきません。下手すれば、要塞で留守番しているシャンインがアレをコロニー内に投入する事態になりますので……」

 「アレか……。ヤバい事になる前に、行動しよう」

 「……良く分からんが、了解した」


 比較的、人が多かった広場から横道へと逸れていく。広場の喧騒を背後に感じながら、俺達は尾行者を撒くために足早に横道を抜けていく。さて、尾行者達はどう行動してくるだろうか? 一気に距離を詰めてくるか、或いは敢えて此方を泳がせて来るか。不謹慎ではあるけれども、ちょっとだけ、ワクワクしているオッサンがいるのだ。ちなみにアレって何だって? その内、分かるよ。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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