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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第1章:歴史の始まり
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1-4:ランドロッサ要塞

結局、説明回って言うオチ。

つ、次こそは……。


 司令室を後にして、ソフィーと共に要塞内を歩きながら説明を受ける。


 「ランドロッサ要塞は、元々は114Ё697資源衛星と呼ばれていました。星系歴495年に資源採掘が終了し、499年に廃棄され以降は表向きは無人の小惑星群の1つとしての認識が周辺国家からなされています」

 「実際は、こうして要塞としての改造が行われたって事か」

 「そうです。資源的な価値が無くなり放棄された穴だらけの小惑星は、隠れ蓑としては最適でしたので」

 「何ていうか、地下組織の秘密基地みたいだな」

 「実際に、こうした廃棄された小惑星や衛星がレジスタンスや犯罪者集団等の拠点として非合法に占領されているケースが散見されますね」


 確かに、放棄されて価値の無い場所なら、隠れ家としては恰好の場所だろうな。特に後ろめたい事がある連中とか好きそうだな。


 「さて、此処から先は生産ブロックとなります。先ほどまでの司令ブロックとは異なり、要塞内で消費される食料、水、電力、弾薬、推進剤、金属、非金属等が生産されるエリアとなります」


 最初に目が覚めた部屋と、その隣の司令室を含めたエリアが司令ブロックと呼ばれている場所。そこから、エアブロックを潜り抜けて、50メートル程歩いた先に見えてきたのが、ソフィーの言う生産ブロック。かつての資源採掘用のトンネル等を利用したのだろうか。透明な壁を隔てた空間一杯に所狭しと工作機械やら、ベルトコンベアやらが設置されさながら工場の様だ。


 「資源を掘りつくした此処で、どうやって生産に必要な資源を確保してるのかな?」

 「現状、水は管理者が近隣の惑星の水脈と繋げて此方へと流しています。食料は最初の母体や種を外部から運び込み、後は要塞内で育て世代を重ねています」

 「なるほど。他は?」

 「電力は、要塞最深部にバラトイア鉱石を用いた融合炉が設置されています。艦艇や兵器類に用いる推進剤は水素ですので、水から電気分解で生産しています。弾薬、金属、非金属は管理者から定期的に補給を受ける形となります。香月司令官の働き次第で増減しますのでご留意下さい」

 「遊び惚けてたら、資源をやらないぞって事か」

 「結果を出して頂くこと、それが重要となります」


 まぁ、目的があって俺を呼んだ以上は、結果を求めてくるわな。強制的に呼ばれた事について文句の1つも言ってやりたいが、どうせ聞き流されて終わりだろうさ。……って、そう言えば、肝心な事を聞いてなかったな。


 「ソフィー。1つ、確認したい事が有るんだけどさ」

 「何でしょうか?」

 「管理者は、俺にこのフォルトリア星系に平和を齎せって言うけど、終わったら俺はどうなるんだ? 元の世界に戻れるのか?」

 「はい。管理者からの依頼を達成した暁には、香月司令官に2つの選択肢が与えられます」

 「へぇ……」


 帰れるかの質問にイエスと答えたって事は、帰れるって事だよな。それ以外にもう1つ選択肢が与えられるって事かな?


 「1つは、元の世界にお帰り頂く場合。ご協力頂いた事に対する相応の報酬に加え、加算された肉体年齢を元に戻し、本来の時間軸へとお帰り頂ける様に手配します」

 「ふむ」


 帰れるだけで無く、報酬も貰えるし、こっちに来る前のタイミングに帰れるって事か。行方不明者とかにならずに済むわけだな。肉体年齢も戻して貰えるから、不自然に思われる事も無いだろう。でも、記憶や精神年齢はどうなんだろうか。


 「記憶や精神年齢はどうなるんだ?」

 「原則として、記憶は消去します。此方で知った知識が、元の世界で不測の事態を引き起こす恐れがありますので」

 「なるほど」


 気が付いたら、お金持ち乃至小金持ちになっていましたって事になるのか。まぁ、下手に覚えていても、哀愁を感じて辛いだけかもしれないし、記憶を消去した方が良いのかもな。


 「それと、もう1つの選択肢がですが、このままこのフォルトリア星系に残って頂く場合です。此方での功績や、その他諸々が全て香月司令官の手元に残ります。勿論、報酬は別途用意しますのでご安心下さい」

 「それは要塞司令官を続けるって事なのかな?」

 「それは全て香月司令官次第ですね。司令官の職を続けるも良し、後任に席を譲って隠居するも良し、管理者からの依頼を達成した暁には、自由が約束されます。外部からの圧力は全て管理者が排除しますので、好きな道を選んで下さい」

 「……まぁ、その時になってから考えよう」


 捕らぬ狸の皮算用とも言うしね。まずは、目の前の事から片付けていかないと。何処かで足元を掬われる羽目になりかねない。


 「生産ブロックの説明は簡単ですが、以上となります。続いて軍事ブロックとなります。詳細は歩きながら説明しますので」

 「宜しく」


 促されるまま、ソフィーと生産ブロックを後にする。再びエアブロックを潜り抜ける。


 「軍事ブロックは、下の階層に設けられています。移動には、この先のエレベーターか、脇の階段を利用して下さい。また万が一の場合には、軍事ブロックは切り離して爆破する事が出来る構造になっています」

 「要塞内に侵入された場合とかって事かな?」

 「はい。最悪の場合では有りますが、敵の手に落ちるよりはマシです。それから、司令ブロックは緊急時の脱出艇の役割を担っていますので、頭に入れておいてください」

 「使わない事を願うよ」

 「同感です」


 要塞を放棄して脱出とか、俺に取っては実質的な終焉だよな。そうならないように、慎重に事を進めないと。

 そうこうしている内に、俺達はエレベーターで下の階層へと辿り着いていた。


 「此処が軍事ブロックとなります。主に、艦艇の建造や修理、補給等を行うドッグと、兵器類の製造ライン、整備エリア等が集約していますね。現状では全ての艦艇及び艦載兵器類はAIによる無人運用が前提となっています」

 「それらを管理しているAIは何処に?」

 「司令ブロックの奥に、この要塞を管理する中央管理AIが設置されています。その管理AIを構成しているAI群の1つが全ての無人兵器をコントロールしています。戦闘データ等は常にフィードバックされますので、戦闘経験を重ねる程、AIが成長していきますね」

 「人が操縦する有人艦や有人機も製造出来るのかな?」

 「可能です。ただ、現状では私と香月司令官しかおりませんので、外部から人材登用を行う必要があります。此処の秘密を守れる人材である事が、絶対条件とはなりますが」


 司令官専用機とか燃えるよね! 絶対に作ろう。出撃は禁止されるかもだけど、絶対に作る。やはり赤く塗るべきか。とは言え、まずは人材集めだよな。2人じゃ出来る事も限られてるし。しかし、どうやって集めれば良いのやら。放棄された資源衛星を改造した要塞で働きませんか? 誰が来るねん。


 「では、ざっと各部をご案内しますので、此方へどうぞ」




 ソフィーに連れられ、小一時間ほど軍事ブロックをウロチョロした後で、俺は司令ブロックにある自室へと戻ってきた。目覚めた時と同様に、ベッド以外は何も無い室内。殺風景過ぎやしませんかね? せめてテーブルやイスとか欲しいよ。


 「ソフィー。テーブルとかイスって用意出来ないかな?」

 「備え付けの物がございますが?」

 「えっ?」

 「っ! これは失礼しました。ご説明がまだでしたね。此方をご覧下さい」


 どうやら、俺の反応から説明して無かった事に今更ながら気が付いた様だ。若干慌てつつソフィーが扉の脇に手を翳すと、15センチ四方位の画面が浮かび上がった。何その吃驚システム。


 「この端末から室内の管理を一括で行えます。例えば、テーブルやイスでしたら……」


 入口を挟んで端末とは逆側の壁が手前に倒れてきて、テーブルとなった。更に、床の一部が開きイスがせり出してくる。どうやら、家具は収納式の様だ。もしかして、ベッドもそうなのだろうか?


 「ベッドも収納式?」

 「いえ、ベッドは固定式です」

 「なんでやねん!」


 思わず、ツッコミを入れてしまったオッサンは悪くないはずだ。室内に一番場所を喰うベッドが固定式っておかしいだろ。この要塞を設計したヤツは誰だ!


 「食事や飲み物に関しては、此方の端末から注文して頂ければ、直ぐに届きますのでご自由にご利用下さい」

 「ソフィーは、食事とか寝る所とかどうしてるのかな?」

 「香月司令官の私室の隣が私の私室ですので、何かあれば、端末の通信機能でお呼び下さい」

 「そうか、ありがとう。取り合えず、少し休んでも良いかな。此処に来てから色々見て回って少し疲れたから」

 「勿論です。本日はこのままゆっくりお休み下さい。明朝、お声を掛けますので、それまでは自由に過ごされて結構ですので。何か有ればご連絡下さい」

 「ありがとう」

 「では、私はこれで」


 ソフィーが出て行くと、扉は自動的に閉まった。凄いな、壁と見分けが全く付かないわ。隙間すらパッと見では見つけられないしな。宇宙空間だし、こう言った部分の密閉性は重要なんだろうか。

 

 ベッドに横になる。肉体的にそれほど疲れたって訳では無いが、状況が目まぐるしく変わったお陰で精神的な疲労が結構溜まった様に感じる。いやはや、もう直ぐアラフォーも見えてきたオッサン故に、大抵の事には驚かなくなってきたと思っていたが、今回の事は特大の例外だな。気が付いたら、見知らぬ部屋で目が覚めて、話を聞いてみたら星系に平和を齎してくれと言われ、オッサンに過度な期待し過ぎじゃないだろうか。

 まぁ、未だ独身の身で会社でも微妙な成績の営業マンだし、ぶっちゃけ居なくても問題無いと上は思っているだろうさ。田舎暮らしを満喫している両親には、少なく無い迷惑を掛けるかもしれんけど、どうにもならん。本当に、この星系に俺が平和を齎せるとは思えないけれども、出来る範囲でやる位なら良いんじゃなかろうか。死にたくは無いけどな。死にたくは無い、大事な事だから……。

 取り合えず、ソフィーに失望されない程度には頑張ろう。唯一の話し相手が居なくなるとかマジ勘弁だわ。オッサンだけど、孤独は中々に辛いのよ。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この章に関わらず全体的なことですが、軽めの文体のわりに、少し漢字変換を使い過ぎているような傾向があり、局所的に読みにくくなることがあります。 「乃至=ないし」とか、「齎す=もたらす」と…
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