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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第1.5章:要塞での日常
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1.5-8:ランドロッサ要塞の日常⑧

実はこんな事があった的なお話。


※誤字報告、ありがとうございます。

 「それはっ⁉」

 「あっ、冗談ですよ?」

 「はぁ!?」


 流石に、冗談だよ。オッサンジョークって奴よ。柴犬の顔が変顔大会になっているが、許してくれ。そもそも、全部滅ぼせば良いって何だよ。正しい事も、間違った事も大いにするのが人間だろうに。例え次の戦争に向けた平和だとしても、それを目指すこと自体が駄目な訳じゃない。穏やかに過ごせる日々ってのは重要だぜ?


 「現状では、共和国の和平派とどうにか繋ぎを作りつつ、まずは強硬派の排除でしょうね。反帝国派は、帝国を黙らせた後で連邦と一戦交える流れになるのならば、その時は我々が潰します。連邦側も同様でしょうね。フォルトリア星系の平和を願う勢力ならば、どの陣営でも手を組みますよ。敵を増やすより、味方を増やす方が得策ですからね。その代わり、裏切ったり背中から撃たれたら容赦はしませんが」

 「……」


 此方の真意を疑う様な目は止めて下さいよ。オッサン、地味に傷つきますからね? それに、俺がそんな思考の持ち主だったら、管理者がこの世界に招く訳ないだろう。世界を滅ぼせなんて依頼はされてないからな。

俺に求められている役割は、このフォルトリア星系に暮らす人々が自分達の足で平和への道を歩める様に、万全を期して障害たりえる存在を軍事力で排除する事だろう。


 「……貴官は、滅ぼす側では無く、平和を願う人々の剣となり盾となると?」

 「簡単に言ってしまえば、そうですね。少なくとも、俺は自分の役割をそう思ってますよ?」

 「……そうか」


 本来ならば、此方の思惑をローガン中佐に伝えるのはリスクでしかない。それでも、伝えたのは彼もまたリスクを犯して俺に接触してきたからだ。勿論、スパイの可能性は否定出来ない。だが、もし彼がスパイだとしても構わないと思っている。だって、柴犬は正義だぜ?


 「……私が、和平派と貴官を繋げられるとしたら、どうする?」

 「……そうですね。コロニー側と取引しても良いですよ?」

 「と、言うと?」

 「理由を付けて、貴方の身柄を私が預かるって事です。で、貴方にはメッセンジャーとして和平派とのやり取りと仲介して貰う」

 「なるほど」


 ぶっちゃけ、ローガン中佐の身柄を預かる理由はどうにでもなる。そもそも、俺との話し合いの場を設ける事をコロニー側が許可した時点で、向こうもその程度は想定しているだろう。これまでの話の内容からして、彼は和平派の軍人だろうしな。そしてコロニー側にも、共和国和平派と繋がっている人間がいる可能性が高い。誰が裏で糸を引いているかは知らないが、面倒な事だ。オッサンは、シンプルなのが好き!


 「……これは、貴官が一定の信用に足る人物だと判断したからこそ告げる事だが」

 「何でしょうか?」


 柴犬の信用とな!? 取り合えず、エサを手から食べてくれる位にはなったって事だろうか。いや、吠えられなくなったって程度だな。柴犬は、狐顔より狸顔の方がカワイイとオッサンは思います。ローガン中佐は狸顔!


 「私の父、ボルゾイ・ローガンはシーバ族の族長を務めると共に、共和国和平派の相談役を務めている」

 「……なるほど」


 危なっ! 万が一、フリーダム号を撃沈でもしていたら、和平派との接点を1人失っていたって事か。幸運艦フリーダム号ありがとう! そして、シーバなのにボルゾイとは如何に!?


 「少なくとも、父を通して和平派と話をする事は叶うと思う。そこから、どの様に持っていくかは貴官の腕次第だがな」

 「そうですね。ですが、機会があると無いのでは雲泥の差ですからね。此方としては是非とも友好的に使いたい所ですが……」

 「何か気になる点でも?」

 「……いえ、()が良いなと思いましてね」

 「運?」

 「いえ、此方の話ですよ」


 気にならないと言えば、嘘になる。でも、今は気が付かないでおこう。多分、それが現状での正解だろうからな。


 「さて、そうなるとローガン中佐の身柄を預かるべく、一芝居打ちますか」

 「先ほど、理由を付けてと言っていたな。何か案でも?」

 「まぁ、下手に小細工するよりか、シンプルにいくのがベストですよ。って事で、ローガン中佐」

 「何だ?」

 「俺を殴って下さい。気絶する程度の力でお願しますよ? シャンイン。後始末を頼む」

 「お任せくださいな?」

 「えっ? はぁっ? 貴官を殴る?」


 そうそう、俺を殴ってくれ。そうすれば、要塞責任者へ暴力を振るった容疑者として、シャンインが連行して尋問が出来るしな。ついでに、尋問中に死亡したって事にしても良いし。合法的に身柄を要塞に移すには良い手段だろ。さぁ、殴れ!


 「合法的に身柄を要塞へと移すお芝居ですわ。ですので、遠慮なくどうぞ?」

 「いや、私が言うのも何だが、彼は君の上官なんだろう? それで良いのか?」

 「司令官様がそう望まれる以上、可能な範囲でお手伝いするのが私の役目ですわ?」

 「そ、そうか……。人族の上下関係とは不思議だな」

 「まぁ、そう言う訳で。ローガン中佐、遠慮無くどうぞ? コロニー側の監視員も部屋の外へ出しておいた訳ですし。邪魔な目撃者は居ませんよ?」

 「はぁ……。分かった」

 「カモーン!」


 一応、言っておく。オッサンには、他人に殴られて喜ぶ趣味は無い!


 目前に迫る握り拳。肉球が良かったなとか呆けた事を考えている内に、意識を刈り取られた。柴犬、恐るべし。




 司令官様に暴行を働いた現行犯として、戦闘アンドロイドに両側から拘束されて部屋から運び出されるローガン中佐。一方の殴られて気を失った司令官様は、ベッドでお休み中。取り合えず、16時前にコロニー側の迎えが来るそうですから、それまではお休み頂きませんとね。ソファーへ腰掛け、手元の通信端末でランドロッサ要塞を呼び出す。数コールで、画面には同僚のソフィーの姿が映し出された。


 『どうかしたの?』

 「……ソフィー。予定通り、ローガン中佐を協力者として引き入れたましたわ」

 『……そう。上手くいって良かったじゃない。あの艦を沈めない(・・・・)様に戦うのには苦労したもの』

 「そうですわね。あの程度の艦隊、本来なら損害すらゼロで殲滅出来ましたわ。それをワザと苦戦を演じて、あの艦を沈めない様に策を弄した。戦闘AIにも無理な命令を出しましたしね」

 『一馬さんは、あの艦を相当の幸運艦と思っている様ね』


 あの時の一馬様、中々に面白い表情を浮かべてましたわね。あのお顔を見れただけでも、あの艦を生かしておいた価値があると言うものですわ。


 「ふふっ。強ち間違いでは無いですわ? 何発かは、脚を潰すために命中させる予定でしたのに、その殆どを避けてましたからね」

 『それでも、結果として、最良の方向へと導けたのだから問題ないわ』

 「ですわね。コロニー側とは予定通り話を付けましたし、後は一馬様の頑張りに期待しますわ」

 『了解。一馬さんを頼むわね?』

 「えぇ。お任せあれですわ」


 ソフィーとの通信を切断する。通信端末を上着のポケットへと放り込み、ベッドで寝ている一馬様の顔へと視線を向ける。


 「……一馬様はお優し過ぎますわ。別に、先ほど言っていた様に3大勢力を殲滅して恒久平和を成し遂げたとしても、管理者は何も言いませんわ。たかが1000億にも満たない命が失われようとも、フォルトリア星系に結果(・・)として平和を齎せるのならば、彼の方は文句を言いませんもの。所詮は、書類上の数字が変化するだけでしかありませんわ」


 でも、その様な事を一馬様は選ばれないでしょう。良くも悪くも、それが一馬様ですもの。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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