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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第1.5章:要塞での日常
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1.5-7:ランドロッサ要塞の日常⑦

あれ? またシリアスっぽい?


※作者より※

何時の間にやら5万PVも超え、日々、評価やブックマークが増える度にニマニマしている作者です。

少しでも、皆様に面白いと言って頂ける様に努力して参りますので、これからもよろしくお願いします。

 さて、式典会場から滞在しているホテルの一室へと、ローガン中佐を伴って戻って来た。意外に思われるかもしれないが、コロニー内は極めて普通の都市の光景が広がっている。少なくとも、客室の窓から見える景色に荒れ果てた街並みは存在しない。流刑地ではあるが、此処で暮らす彼らに取っては生活の拠点である以上、少しでも快適な生活環境を求めた結果なのだろう。コロニーらしく、上にも空ではなくて街が広がっている光景にはまだ慣れないが……。


 「さて、ローガン中佐。お話とは?」

 「ふむ。単刀直入をお聞きする。戦乱吹き荒れるフォルトリア星系を貴官は救うと言っていたが、道筋は見えているのかね?」

 「道筋ですか……」


 椅子に座り、腕を組み、此方を見据えるローガン中佐。流石に俺の様な新米とは違って、歴戦の軍人としての貫禄がある。彼の鋭い視線は俺の一挙手一投足を見逃さんと、狙いを付けているかの様だ。オッサンとしては、美女に睨まれる方がご褒美かな。


 「現状、暫定的にも敵対関係になっている共和国の軍人である貴方に、それを説明しろと?」

 「別に、詳細を聞く心算など無い。ただ、個人的な興味で聞いている」

 「尚更、意味が分かりませんね。それを聞いて何とします?」

 「……」


 捕虜になっているとは言え、何れ何らかの取引で共和国へ戻る可能性もあるローガン中佐に、此方の動きなど説明出来る訳が無い。例え、それが彼の個人的な興味関心によるものだとしてもだ。少なくとも此方側にはデメリットしか存在しないからな。さて、彼の狙いは何だ?


 「もし、貴官の道に私が賛同すると言ったら、どうするかな?」

 「……賛同ですか?」

 「そうだ。かつて貴官は世界平和を目指すと言っていた。私が、それに手を貸すと言ったら?」

 「それは……」


 そう言われて、助かりますなんて言って手を取る事は流石のオッサンもしないぜ。幾ら何でも怪しすぎるだろうよ。昨日の敵は今日の友なんて言葉があるが、現実的に考えてそれは簡単にはいかない話だ。


 「勿論、今直ぐに信用して貰えるとは思っていない。ただ、君の歩む道には助けになる者が1人でも多い方が良いのではと思ってね」

 「ますます、ローガン中佐の意図が分かりませんね。貴方は共和国の軍人だ。私は、必要によっては共和国を滅ぼす側ですよ? 祖国を滅ぼす側に協力すると? スパイとして入り込みたいって、正直に言われた方がまだ信用しますよ」

 「確かに、私が貴官の立場でも、そう判断するだろうな」


 ローガン中佐の狙いは何だ? 此方へ取り入って何を狙う? 他の共和国の軍人が聞いたら、間違いなく彼は終わるだろう。相手側に寝返ろうとしている者を、何もせずに生かしておくとは思えないしな。捕虜の身であろうと、何らかの手段に出るのは間違いない。良くも悪くも、このコロニーは特殊だ。相応の金を積めば、汚れ仕事の1つや2つ喜んで請け負う者もいるだろう。俺と会った事だって、直ぐに情報として流れるだろうしな。


 「……リスクを背負ってまで、貴方は何を狙うのですか?」

 「共和国とて一枚岩では無いと言う事だよ」

 「……」

 「……」


 確かに、組織が大きくなればなるほど、1つになるのは難しいのは確かだ。3人寄れば派閥が出来るだったか? ボルジア共和国は200億人だか人口があるわけだし、派閥も相当の数になるだろう。互いに牽制し合い、時に足を引っ張り合い、くだらない権力闘争に明け暮れる。どこの世界でも変わらない、有り触れた政治劇だ。


 「それで、それと今回の話がどう関わると?」

 「現状の共和国上層部は大きく分けて3つに分かれている」

 「3つですか……」

 「そうだ。それぞれの立場としては……」


 反帝国派は、帝国への徹底抗戦を訴え必要ならば連邦とも手を組むべきとする勢力。

 強硬派は、帝国への徹底抗戦は反帝国派と同じだが、連邦へも同様に対応すべきとする勢力。

 和平派は、戦乱の早期終結を目指し帝国・連邦の両陣営へと講和への道を訴えている勢力。


 なるほど。まぁ、話を聞く限りだと、良くありがちな別れ方って感じだな。反帝国派は敵の敵はって考え方だし、強硬派は自勢力以外は全て敵ってある意味でとてもシンプルな考え方、和平派は余り良い言い方では無いけれども理想主義者の集まりって所だろうか? 正直、俺だったらどの派閥とも手を結びたく無いわ。


 「正直、どの勢力とも手を組みたくは無いですね」

 「……ふむ、理由を聞いても?」

 「反帝国派は、帝国という共通の敵を倒した後は、過去の遺恨から連邦と争うのは必定。強硬派は、帝国と連邦の接近を招き、反共和国で両国を纏め上げかねないですね。和平派は最初から論外。理想をどれだけ高く掲げようと、相手がそれに応じなければ存在意義を失う。指を咥えて国民が蹂躙される様を見るだけでしょうね」


 話し合いで解決なんぞ、相手が同じテーブルに付かない限り役に立たない。自分達がどれだけ非戦を訴えようと、相手がそれに従う義務など無いからな。むしろ、無抵抗を良い事に好き勝手やらかす可能性の方が高い。理想を掲げるのは結構だが、現実を見ない馬鹿ってのは一般市民を死刑台に送る手伝いをしているだけって事に永遠に気が付けない。国家の法は、人命を護りやしないんだよ……。


 「君は、互いに手を取り合っての平和を否定すると?」

 「右手で握手をして、左手に武器を持つのが平和だと?」

 「手厳しいな。だが、それでも争いが収まるのなら良いのでは?」

 「次の戦争の為の平和ですか。まぁ、人が人である限りその繰り返ししか選択肢は無いでしょうね」


 肌の色、髪の色、瞳の色、性別、人種、種族、宗教、言語、文化、資源、国境、政治、経済。戦争する理由なんぞ五万とある。1つの戦争が終わっても、別の理由を大義に掲げて砲火を交えるだけだ。


 「では、君はどうやってこのフォルトリア星系に平和を齎すと?」

 「さぁ? 目の前の敵を順番に撃つしか無いのでは?」

 「……抵抗する者を全て蹂躙すると?」

 「それが嫌ならば、抵抗しなければ良いでしょ?」

 「武力による、力による支配を受け入れろと?」

 「俺は支配しませんよ。別に各勢力の政治体制を変更するつもりもありませんし」

 「では、君は何をする?」


 ランドロッサ要塞の司令官になった日からずっと考えていた。どうすれば、良いのかと。管理者の望む、フォルトリア星系の平穏とは何かと。でも、ベストな答えなんぞ思い付かないんだよ。当たり前だけどさ、ただのサラリーマンに各国の情勢だのを考慮しながら、誰からも文句も出ない方法なんぞ思い付く訳も無いからな。じゃあ、どうするか。俺が考えたのはシンプルな選択だった。


 「……3大勢力が互いに滅ぼし合う様に仕向けます」


 全部、滅んでしまえば争いなんぞ無くなる。恒久平和(・・・・)の実現だよ。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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