表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第1.5章:要塞での日常
35/336

1.5-4:ランドロッサ要塞の日常④

まだ続くのかって? まだ続くよ。

 さて、コロニー向けの輸出による外貨の獲得と、ナターシャ嬢を介したアイザフ大佐達との継続的な繋がり作りはこんな所だろう。ちなみに、ナターシャ嬢は追悼式典が終わり次第、要塞へとその身柄を移して貰う事になっている。


 「式典に関しては、当初の予定通りで良いかな?」

 「そうですね。今の所、コロニー側からは特に変更の要望等は有りません。共和国側も同様ですね」

 「何らかの外的要因が無い限りは、変更は無いと思って良いかと思いますわ」

 「よし。なら、後は式典後にナターシャ嬢を無事に此処まで連れて来れば最終的な戦後処理も終わりだな」

 「そうですね。それ以降は、次の戦いに備えた準備となります」


 次の戦い。主目標は、ナターシャ嬢の故郷であり、先日ついにボルジア共和国の占領下に落ちたフォラフ自治国家の奪還となる。管理AIによると、空母を含む機動艦隊を始め、かなりの数の艦隊が周辺宙域に展開しているとの事なので、相応に戦力を整えてからで無いと返り討ちにされて終わりになるだろう。しかも、占領下に落ちた旧フォラフ自治国家軍の残存艦隊も敵になるだろうしな。出来る限り、彼らとは戦わずに済む道を探る必要がある。流石に、ナターシャ嬢に同胞を撃たせる事だけは避けたい。


 「補給艦を始めとした、艦隊の強化。情報取集。自治国家方面への補給線の確立は必須」

 「後は、第16コロニーを始めとした、第三勢力との一層の関係強化も必要ですね。背後に無用なリスクは背負うべきではありません」

 「第16コロニーからフォラフ自治国家間では宙賊の出没も報告が多数上がっていますの。彼らを排除するなり、勢力下に置くなりしておくべきですわ」


 サントスさん達は、ハッキリと言ってしまえば今の所は利害関係ってだけの繋がりだ。勿論、今回の共和国追跡艦隊との一戦で此方の力は示せただろう。でも、情勢が変われば簡単に手のひらを返されかねないリスクが消える事は無い。彼らは、表向きは見せないだけで内実は色々と柵を抱えている。それらがどの様な出来事の引き金になるか、計り知れないのが現状だろう。此方に付くメリットを示し続けないとな。その一歩が嗜好品類の輸出となる。勿論、保険は掛けるけどな。手札は必ず用意しなくてはならない。


 「管理AI及び戦闘AI。万が一に備えて第16コロニーの維持管理に必要な、重要ブロックの割り出しを進めておいてくれ。外部から破壊可能かも知りたい」

 「一馬さん、それは……」

 「一馬様……」

 「万が一だ。彼らが自治国家に向かう我々の背後を撃とうと言うならば、先に撃つ」

 「「……」」

 『指令、受託しました。対ガルメデアコロニー戦術プランの作成を開始します』

 「……宜しく頼む」


 この戦術プランを永久に使わない事を願う。だが、万が一の場合は躊躇わずに使用する。俺が最優先で護るべきは、要塞のメンバーであり、次点でナターシャ嬢達フォラフ自治国家関係者となる。ガルメデアコロニーの彼らは現状ビジネスライクの付き合いでしかない。敵対するならば、容赦などしない。


 「軽蔑するか?」

 「……いえ、一馬さんの選択は司令官として当然かと思います」

 「……この先、更に非情な決断をせざるを得ない時が必ず来ます。そのお覚悟を今から持つ事は、必要不可欠ですわ」

 「ありがとう、2人共」


 内心、2人にも思うところはあるだろう。それでも、俺を支持すると言ってくれる彼女達の思いを無駄にはしない。人としての情を失ってはならないが、情に流されてもならない。オッサン的に、超難しい……。


 「さて、暗い話は此処までにして……。追悼式典に誰が参加するかを決めようか?」

 「決めるも何も、一馬さん以外に適任者は居ないかと?」

 「そうですわね。コロニー側も共和国側も代表者が出るでしょうし、フォラフ自治国家からはナターシャさんですので、私達では釣り合いが取れませんわ」

 「……マジで?」

 「「マジです(わ)」」

 「何てコッタイ……」


 オッサン、驚愕するの巻。式典とか面倒なのでパスしたいんですけど。卒業式での校長の話とか、新年会での社長の長ったらしい所信表明とかさ。あれって、ぶっちゃけ時間の無駄じゃん。追悼式典が別にそれらと同じとは言わないが、儀式めいた堅苦しさって苦手なのよ。戦没者への追悼に、儀式的な要素は要らないと思うのよ。各自が思い思いな形で、戦没者達への哀悼の意を表すれば良いと思う。異論反論は勿論受け付けるよ。オッサンの考えは変わらないけど、自分と違う意見にもちゃんと耳は傾けます。


 「ですので、後は私とシャンインの何れかに加え、護衛として戦闘アンドロイドが追悼式典に参加します」

 「そうなると、関係者全員と面識のある私でしょうか?」

 「確かに、アイザフ大佐達も含めてシャンインがメインで応対していたよね。そうなると、ソフィーには留守を頼む方が無難かな?」

 「確かに、考えてみればそうですね。戦後処理もシャンインがメインで関わっていましたし、その方が自然な流れですね」

 「よし、なら今回はシャンインに補佐を頼む。ソフィーは悪いけど、要塞を頼むね」

 「お任せ下さい」

 「任されましたわ」


 ふと、考える。以前の様にソフィーかシャンインしか居なかったら、オッサン1人で式典に参加する事になっていたのか。いや、マジで勘弁だわ。非常に悔しいが、今回は管理者グッジョブと言わざるを得ない。非常に悔しいがね!


 「コロニーへの足はディーシー号を予定していますが、護衛艦隊の規模はどうされますか?」

 「そうだな。念のために2個艦隊を随伴しようか。ソフィー、要塞の守備は2個艦隊+兵器類で間に合うかな?」

 「問題ございません。現状では、周辺に相当の戦力は確認出来ていませんので、2個も有れば十分です。むしろ、一馬さんの警護の方を手厚くするべきかと?」

 「追悼式典までは、まだ日数も有りますわ。補給艦に加えて、追加予定の巡洋艦や駆逐艦を建造しても良いのでは?」


 2個艦隊で手間取る相手って相当の規模だと思うけどね。まぁ、正面での殴り合いとなったら話は変わるだろうけどさ。何れにせよ、余り多すぎる戦力でコロニーへ押し掛けると、無用な警戒を呼ぶ可能性が有るから止めておくべきだろう。


 「コロニー側に下手に警戒されても何だから、2個艦隊までにしておこう。で、1個艦隊はコロニー手前の宙域で待機させておこう。あくまで、万が一に備えてって事でさ」

 「では、要塞側の残存艦隊は周辺宙域の偵察及び緊急時の増援として配備します」

 「前回同様、イースキーを護衛の巡洋艦で曳航していっても良いかもしれませんわ」

 「あはは。何も起こらない事を願うわ……」


 絶対、過剰戦力だって。譲渡した元共和国艦隊の駆逐艦2隻に軽武装の補給艦が6隻。それ以外にも輸送艦やら小型の戦闘艦を保有しているらしいが、それでも喧嘩を吹っ掛けてくるだけの戦力が他にあるとは思えない。前回の戦闘から考えて、2個艦隊なら一方的に圧勝して終わりだと思う。でも、心配してくれる彼女達の思いも無駄には出来ない。なので程々でお願いします。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ