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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第6章『大国の終焉・中』
333/336

6-36:オペレーション・サジタリウス⑲

ようやく、専用機が表舞台に……。

話が進まな過ぎ!

 中央から遠く離れた勢力圏最外周部にあたる辺境の地は、その多くが向かう者達からすれば栄転の地ではない。過酷な環境下にある惑星や、流刑地同然の大小様々な資源衛星であったり、限られた空間内での過酷な労働が待っている自立航行型小規模コロニーなど、どれも好き好んで向かう先では無いだろう。


 惑星『ウエレン』攻略後、オッサン率いるβ任務部隊はそれら辺境の地に設けられたコールマフ連邦の比較的小規模な拠点群を順次陥落させつつ、順調に歩を進めていた。そして、次の大きな攻略目標となるのが惑星『ディクソン』である。


 この星は、惑星『ウエレン』同様に辺境にある惑星であることに違いは無いが、連邦に取っては戦略上において重要な拠点の1つとなっている。一年を通して、地表の大部分が砂嵐に見舞われている過酷な環境の惑星だが、この大地の下から採掘される鉱物資源が連邦にとって欠かせない代物なのだ。


 勿論、他にも同じ鉱物資源を採掘出来る惑星が幾つかあるので、此処を失うことで直ちにどうこうなる訳では無い。とは言え、他の惑星に比べ鉱石の埋蔵量も採掘量も多いので、みすみす敵に奪われて良いとはならない。その防衛のために、辺境の地としては過剰とも思える程の戦力が駐留しているほどだ。ただ、これまで敵が来る事など全くと言っていい程に無かったせいか、駐留している戦力の練度も士気も高くは無かった。


 「まぁ、相手の士気が高かろうが低かろうが、やる事は変わらないけどな?」

 『かずー』

 『まー』

 『準』

 『完?』

 「あぁ。何時でも行けるぞ?」


 β任務部隊の旗艦である『スレイプニル』艦内に設けられた、オッサン専用機である『不知火』の整備エリア。パイロットスーツに着替え、コクピットに入り各種システムチェックを終わらせたタイミングでヘイスァ達から確認の通信が入っていた。


 「ヘイスァ達も準備は完了か?」

 『『『『りょ!』』』』

 「よし、なら仕掛けるとするか。遅れるなよ?」

 『『『『お前もなー!』』』』


 息の合ったヘイスァ達の返事を心地良く感じながら、整備員にハンドサインで離れる様に伝えコクピットを閉扉する。一瞬だけ外部状況が遮断されるが直ぐに全周囲モニターに艦内の状況が鮮明に映し出される。迅速に機体から離れていく整備員達の後ろ姿。そして、機体前方に展開していたキャットウォークが半ばから2つに分割され左右へと折り畳まれていく。


 「戦闘指揮所。状況はどうだ?」

 『こちら、戦闘指揮所。敵艦隊より、艦載機の発艦を多数確認。真っ直ぐ此方へと向かって来ます』

 「了解。流石に、この距離ならバレるか。対艦砲による牽制砲撃を行いつつ、こちらも艦載機隊を上げて迎撃戦に移行してくれ。俺は予定通り、ヘイスァ達と敵艦隊に切り込む」

 『了解しました。ご武運を』


 以前、遭遇した連邦軍の偵察特化型巡洋艦。ドクター謹製の隠匿システムに対する、連邦軍のある意味で切り札とも言える特殊艦。あの時は少数建造ゆえに配備数・配備先が前線に限られていたが、その後に建造配備が進み辺境でも重要な拠点には複数隻が配備されるようになっていた。


 今回も、サウサンからの事前情報で配備されていることを把握していたので、こちらの動きが察知されたのは想定内のこと。大慌てで上がってくる連邦軍の艦載機隊。今のところ、例のトンボビームこと『ヴィストリー』はいないようだ。……まぁ、明らかにアレはデータ収集を目的とした試作機だし、部隊配備はまだ先の話だろうな。


 低重力になっているデッキ内を移動し、母艦からの発着艦を担当しているアンドロイドの誘導に従い、『不知火』をカタパルトへと固定する。ヘイスァ達も、別のカタパルトないし後続に待機して発艦を待つ。今回、オッサンと共に敵艦隊へと正面から切り込みを仕掛けるのは、愉快系アイドルグループのヘイスァ・バイスァ・ランスァ・ホンスァの4人に加え、各機の直掩を担うランドグリーズ5個大隊(180機)になる。


 誘導員達が退避し、前面のシャッターが開扉された。対艦砲による攻撃により、あちらこちらで眩い閃光が光っては消えるを繰り返す。既に、各母艦からイースキー隊やミディール隊が発艦し、艦隊前方へと防御陣形を構築しつつあった。彼我の距離はまだそれなりにあるが、既に戦闘は始まっていた。


 「さて……。漸く、コイツでの実戦か」


 『不知火』。完全ゼロベースでの設計となった、オッサンの新たなる専用機。艦隊旗艦である『スレイプニル』と同様に、本紫を基調のカラーリングとしつつ、要所に紫式部と薄紅藤で色合いに変化を付けている。左肩から胸部、そして右脚部へと桜吹雪をモチーフとした意匠を凝らしているのが、これまでの専用機になかった大きな特徴だろうか。


 機体のベースデザインは、直線と角をメインに多用して全体的にシャープさを演出することを重視。そこに、複合装甲を要所毎に意図して重ね合わせる事で多層的な立体感を与えている。完全にオッサンの好みだな。


 頭部は烏帽子形の兜をモチーフとし、右斜め後方に2本、左斜め後方に1本のブレード型アンテナが装着されている。目に当たるセンサーユニットについてはX字型とY字型で悩んだが、頭部全体のバランスからY字型の物を採用。カラーは赤。なんか、敵側っぽい。


 肩、胸部、腰回り、脚部の全周に推力偏向式の姿勢制御スラスター及びバーニアを多数設置。背面に装着される8基の複合兵装ユニット兼メインスラスターとの連動により、これまでの専用機以上のピーキーな機動性を有している。


 『不知火』の主武装となるのが、背中に装着されたサブアームで自由自在に展開される、メインスラスターを兼ねた8機の複合兵装ユニット。先のラーズグリーズで運用された兵装ユニットとは、異なるコンセプトで設計している。2本の対艦刀とその鞘、そして予備の刃が複数格納された下部。上部には精密狙撃用に設計された、口径180㎜の荷電粒子砲。そして、後方には推進剤タンクと機体のメインスラスター。


 敵艦隊接近までの中~遠距離では荷電粒子砲による精密射撃で戦いつつ、懐に入ってからの至近~近距離は対艦刀による超近接戦を主とする遠近両用の特殊な機体に仕上がっている。宙での戦いにおいて、砲戦に頼らず対艦刀を振り回して敵陣ど真ん中で暴れるキチガイとは、オッサンのことよ。


 ちなみに、装甲は近接戦を前提としていた設計していたため、これまでの専用機より桁違いに厚くなっており、機体重量が大幅に増大。その為、オッサンの求めるピーキーな機動力を確保するには、これまでの専用機に搭載されていたスラスターの性能では要求性能に全く届かない事態が発生した。結局、これまでのスラスターの実に2.5倍と言う化け物染みた仕様の専用品を開発し力尽くで解決する羽目になったのはご愛敬である。


 さて、そんな色々と要求を盛り込み過ぎた感の強い新型の専用機となった『不知火』。これまでもシミュレーターや船外訓練ではヘイスァ達相手に何度となく動かしてきたが、明確な敵を相手取る実戦は初となる。色々と調整しつつ、戦闘データの蓄積をしておかないとな。これから敵の手厚い迎撃網に入り込むっていうのに、何を言っているのかと自分でも思うが仕方が無い。これが、オッサンクオリティなのだから。


 「……香月一馬。『不知火』出る!」


 男の子ならば、人生で何度でも言いたいセリフよね、これ。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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