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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第6章『大国の終焉・中』
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6-34:オペレーション・サジタリウス⑰

今回はソフィー視点。次回は一馬になる予定。

 オペレーション・サジタリウスの発動から早半月余りの時間が経過。これまでのところ、事前の想定通りの状況は推移しています。勿論、想定外の事態を考慮してスケジュールには余裕を持たせていますが、今のところは予定通りといったところ。


 一馬さん率いるβ任務部隊も順調に予定を消化している様ですし、要塞に残ったシャンインも例のボルジア共和国軍艦隊を一蹴している。ここまでは、何れも順調。そう、怖い位に順調ですね。一馬さん曰く、順調に推移している時ほど、予想していない何かが起こることが大いにあるとのこと。油断は禁物ですね。


 「ソフィー様。サウサン様からの定時連絡です」

 「分かりました。繋いでください」

 「はい」


 物思いに耽っていた私を、テトラが現実へと呼ぶ戻す。どうやら、サウサンからの定時連絡の時間のようですが、何だかんだと結構な時間を長考に割いてしまっていましたね。まぁ、テトラとヤヴァナがいるので余程のことが無い限り、問題は無いのですが。


 「サウサン。状況は?」

 『連邦は、かなり浮足立っているな。あちらこちらで、楽しいことになっている。ソフィーが相手からの接触を断っていないお陰で、向こうも事態のヤバさを強制的に理解させられているようだ』

 「それは上々ですね。敵戦力の集結状況は?」

 『それなんだがな。余り、順調とは言えないようだ』

 「と、言いますと?」

 『本来、こちらの攻略目標である『トゥーラ』防衛に最大戦力を集めるべきなんだが、色々とゴタついているのが現状だな。事前想定の半分程度しか未だ集まっていない』


 前世拠点が抵抗らしい抵抗も出来ず陥落してから時間はそれなりに経っている。それにも関わらず、戦力の集結に手間取っていると。戦力が無いのではなく、集められないということでしょうか。それでこちらを止められると思っているならば甘い考えと言わざるを得ませんし、それ以外の理由でというならばこれまで時間を掛けて仕込んでいた様々な策が効いてきている証拠でしょうか。


 「軍内部か、或いは政治局が混乱していると?」

 『両方だな。連邦軍を管轄する軍事局のトップだったアンドレイ・マスロフは、諸々の責任を問われ軍法会議に掛けられることもなく処刑された。これは、つい先日のことだ』

 「この状況で、更迭ではなく処刑ですか。しかも、軍法会議も無しとなると」

 『馬鹿だと思うだろ? 私もそう思う。その後任人事を巡って、軍内部が荒れに荒れているのが原因の1つだな。どう考えても、軍はしばらく落ち着きそうにもない』

 「こちらとしては、敵の自壊には感謝ですね。それで、政治局の方は?」

 『そちらは、政治局トップであるオリガ・アウロヴァが周囲の反対を押し切ってマスロフの処刑を強行したことが原因になっている。結果として、急激に彼女の求心力が低下しているな。彼女自身、その地位に就くまでに方々にかなりの恨みを買っているからな。処刑強行によって、これまでは表面的に従っていた彼女とは反りが合わん連中が先を見据えて暗躍を始めたわけだ』


 軍部トップが処刑されたことによる、軍内部の指揮命令系統の乱れ。そして、国家トップであるアウロヴァもまた自身の行動により足を取られていると。連邦内での醜い足の引っ張り合いが、結果的に私達には有利に働けば良いのだが。行動が読めない要素が増えるのは、些か好ましくはないですね。


 「集結していない、残りの戦力の動向は?」

 『各々が駐留している担当宙域にて、状況の推移を慎重に見極めているといったところだな。どの勢力の誰と手を組めば良いか。奴らも、この先を生き残るのに必死だからな。結果として、α部隊の受ける圧力が減り、一馬のβ部隊が受ける圧力が増える可能性が少し高くなっている』

 「一馬さんには?」

 『既に報告済みだ。まぁ、向こうも想定外の事態を考慮して当初より戦力を増やしているから、そうそう問題にはならんだろう。むしろ、連邦軍が集結出来ず各個撃破の形になれば、それはこちらに取って有利に働く面もあるからな。一馬としては、現状を最大限に利用する腹積もりのようだ』


 敵の敵は味方とまではいかないにせよ、相手が勝手に互いの足を引っ張りあって身動き取れなくなってくれるというのならば、美味しく利用するというスタンスでしょう。私としても、その方針に依存はありません。やはり、予め向こうの戦力も増やしておいて正解でしたね。


 「アウロヴァはどの程度の間、持ちそう?」

 『正直、予想が難しい。今回の一件で求心力が低下したとはいえ、元々連邦内でそれなりの規模の派閥を率いているわけだし、相応の力を未だ保持している。派閥の連中も互いに腹の探り合いをしていて、そう簡単には動けない。他の派閥の動きもあるが、今すぐどうこうとはならないだろう』

 「他の派閥の動きは?」

 『虎視眈々と動いていると言えば聞こえは良いが、実際のところは醜い内部闘争だな。ただ、今の状況で権力の座をアウロヴァないし彼女の属する派閥から奪ったところで、我々に負ければその責を負わされるのはソイツになるからな。だとすれば、今は敢えてアウロヴァとその派閥を矢面に立たせておいて、自分達は将来の身の振り方を考えておいた方が得策と言える。例えば、こちらに情報を流すとかな?』


 対連邦戦は、事態がかなり流動的になりそうですね。計画に無い場当たり的な対応というのは本来ならば余り褒められたものではありませんが、この様な状況になってきている以上はそれも致し方が無いと判断せざるを得ませんか。それにしても、サウサンの言い方からすると、既に動きがあるようですね。


 「……既に接触があると?」

 『あぁ、連中あらゆるコネを総動員してこちらに接触を図ってきている。多くが、情報や物資と引き換えに自身や家族の助命を求める内容だな。中には、こちらに呼応して武装蜂起するとまで言っている馬鹿までいる。共和国や帝国に対して接触を図っている連中もいるな』

 「そこまでして、保身に走りますか。共和国辺りなら未だしも、帝国などはその手の連中を嫌いそうですが。勿論、我々も」

 『誰しも、自分が可愛いということだな。権力に魅了された連中に、沈む泥船と心中する覚悟などないさ。共和国のような愚衆政治に囚われた国家も、連邦の様な血生臭い政治闘争に明け暮れる国家も、その手の連中の覚悟などその程度でしかない』


 沈みゆく泥船からの脱出。生き残る為だと言えば聞こえは良いですが、結局のところ自身のこれまでの行いと正面から向き合う覚悟が無いと言うだけのこと。今をつくるは、過去の己自身の行動。今の己の立ち位置は、過去の己の行動の結果。


 「……反吐が出ますね」

 『あぁ、同感だ。一馬からも、丁重に持て成してやれと許可は貰っている。覚悟のない連中には、それに相応しい末路を用意してやるさ』

 「期待しています」


 大抵の人間は、他の誰かで代用できるもの。故に、簡単に己を売るような者をわざわざ生かしておく必要は無いですね。サウサンがどの様に持て成すのかは不明ですが、精々苦しんで貰いましょうか。愚者の末路に相応しい最後を。


 『ふっ、任せろ。そんな訳で、もう暫くは規模の小さい敵を適宜叩いて貰うことになるな。恐らく、最終的には、事前想定の7~8割程度の戦力が惑星『トゥーラ』防衛に当たる筈だ』

 「分かりました。予定を修正しつつ、対処します」

 『ではまた、次の定時連絡でな』

 「えぇ、また」


 さて、予定を修正しつつ『トゥーラ』に向かうとしましょう。敵戦力ごと、『トゥーラ』にコロニーレーザーを撃ち込むのもアリですね。何事も、事故はつきものですし。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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