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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第6章『大国の終焉・中』
327/336

6-30:オペレーション・サジタリウス⑬

本年も、どうぞよろしくお願いいたします。


更新再開です。正月太りを解消しないとw

 ランドロッサ要塞の司令部には、シャンイン、サウサン、ドクターの3人が集まっていた。要塞司令官である一馬と、筆頭補佐であるソフィーが出払っている以上、この3人が現在の決定権を持つ最高位の者達であった。そんな彼ら、彼女らが何をしているのかと言えば、性懲りもなく艦隊を差し向けてきたボルジア共和国への対応であった。


 「はぁ……。面倒ですの」

 「全くだ。相も変わらず、此方の場所すら把握できてないとはな」

 「まぁ、そうそう見つけられるものでもないですからな?」

 「お陰で、また自治国家までお散歩ですわ」

 「艦隊だけだがな?」

 「左様。我らが出向く必要もありますまい。一応、自治国家側もパトロール艦隊を展開させているようですな」


 先の、コールマフ連邦領内で発生した連続テロ事件。その報復として共和国は100個からなる懲罰艦隊をランドロッサ陣営に対し差し向けることを決定していた。しかし、相変わらず要塞の位置を特定すらできてない彼らは、ランドロッサを呼び寄せる為にとフォラフ自治国家宙域へと艦隊を向かわせたのであった。


 何ともせこい手段ではあるが、一定の影響力を自治国家に対して保持しているランドロッサ陣営としては、今後のことを考えると出て行って相手をするしかない。とは言え、既に戦力差は圧倒的なものであり、一馬曰く勝ち確なイベントゆえに適当に楽しむとのスタンスであった。哀れ、共和国軍。恨むなら、馬鹿な富裕層と有権者だ。


 「それにしても、良かったんですの? 私の艦隊だけでなく、ドクターの艦隊まで出してしまって」

 「構いませんぞ。普段は殆ど使うことが無いですからな。こういった時に暴れさせるのも一興かと」

 「まぁ、2人の艦隊が抜けてもまだ3個艦隊分(1千万隻弱)があるからな。そうそう此処は墜ちんよ」

 「左様。香月司令からも、派手にやって良いとお墨付きを頂いておりますしな」

 「それなら、報復の報復として共和国領内まで逆侵攻するのも良いですわ」

 「……不可能ではありませんな。むしろ、艦隊を真正面から捻り潰されて浮き足だったところを叩くのは理に適っておりますしな」

 「言いたいことは分かるが、今は止めておけ。今回の目的は、あくまでも躾だ。へっぽこな共和国とは言え、連邦の注意を少しは引ける。ある程度の目途が立つまでは、火の粉を払うだけにしておけ」


 今回、フォラフ自治国家宙域へと派遣された要塞の戦力は、シャンインとドクターに与えられている独立戦力である。2個艦隊で644万隻にも及ぶそれらの艦隊は、共和国軍艦隊を迎え撃つ為に布陣を完了させつつあった。


 コロニーレーザーの様な戦略兵器は無いが、500㎜対艦砲等のこれまでに何度も猛威を振るった対艦兵器は健在であり、これにイースキー隊やミディール隊が艦隊の直掩に当たる。何より、25倍強という艦艇数の差はそれだけで大きな力となる。人と巨人ならば、工夫次第では戦い方もあるだろう。しかし、こちらは状況が違う。


 何も分からず寡兵で敵地へと赴く共和国軍艦隊と、情報を調べ上げ圧倒的な差の付いた戦力で満を持して迎え撃つランドロッサ陣営では、最初から勝負は決まっている。これでランドロッサ陣営側に慢心や傲りがあったならば、共和国軍にも多少は見せ場が生まれたかもしれない。しかし、現実は残酷なものであり、指揮に当たる補佐官達にはそれらが全くなかった。


 「……そろそろ、対艦砲の射程圏内に入るか」

 「ですな。さて、シャンイン嬢。開始の笛でも鳴らしますかな?」

 「不要ですの。1隻残らず叩くためにギリギリまで引き付けてから、一気に畳み掛けますわ!」

 「なら、もう暫し様子見だな。馬鹿の1つ覚えみたく一直線に向かって来ている様だから、会敵までそう時間は長く掛からんだろう……、多分な」

 「では、新しいお茶でも用意しますかな。さて、茶の供は何が良いか」


 今日も平常運転のランドロッサ陣営であった。




 ランドロッサ陣営の面々が今日も平常運転をしている頃。一方の共和国軍はと言うと、その歩みは当初の想定よりも幾分か遅いものとなっていた。彼らが辺境と認識する宙域へと足を運ぶことになったのは、連邦領内で発生したコロニー襲撃と、民間船舶へのテロ攻撃に端を発している。


 何れの事件も、早々にランドロッサ陣営によるモノだと断定した連邦は大々的な非難をしつつ、共和国や帝国へと連携を呼び掛けていた。帝国は冷静に事態の裏を読み取り、のらりくらりと連邦側の呼び掛けをかわしていたが、共和国は違った。大統領など極一部は事実を正確に把握できていたが、沈められた民間船の出資者たる資産家達は、己のちっぽけなプライドを満たすために連邦の手を握った。


 本来ならば、大統領が自らテロ事件の裏にあるモノを暴露すれば多少は状況も変わったかもしれないが、資産家達の操作によって激昂した世論を前にしては、彼の言葉は余りに弱すぎたのである。何より、連邦の自作自演を裏付ける証拠を齎したのが共和国にとって決して良好な者達では無かったことも大きいだろう。


 そうして多額の金が裏で動き、世論が激昂しそれによって多くの議員が本心は別としても資産家達の思惑通り軍の派遣を強行採決するに至った。そうして100個にも及び機動艦隊が集められ、ランドロッサ陣営の非人道的行為に対する懲罰を目的とした特別艦隊が編成されるに至ったのである。


 艦隊編成は割とスムーズ(意訳)に進んだものの、特別艦隊の指揮命令系統の人選に時間が掛かった。当初、資産家達の意をくんだ議会側は息の掛かった者をその座に就けんと画策したが、軍側がそれを拒んだ。幾ら非人道的な行為に対する懲罰とは言えど、議会が軍へと介入し続ける行為をそう何度も甘んじて受けいる気はなかったのである。


 結局、議会と軍による幾度かの交渉や取引等の紆余曲折を経て、比較的中立派の人物が特別艦隊の司令官に就任することで決着となった。議会としても、軍と対立し何時までも懲罰艦隊を派遣できないことは世論や資産家の手前さける必要があった。一方の軍としても、世論の激昂ぶりを前に議会と正面から対立し続ける余裕はなかった。双方とも、色々と気にしなくてはならないことが多すぎたのである。


 さて、その様な穏やかではない船出を経てフォラフ自治国家宙域まで辿り着いた特別艦隊に待ち受ける運命とは如何に?

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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