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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第6章『大国の終焉・中』
323/336

6-26:オペレーション・サジタリウス⑨

本日もゆっくりと進行中。

 「ヘイスァ。コロニーと惑星からの回答は?」

 「どっちも脳DAZE!」

 「……そうか。バイスァ。ミディール隊1個大隊と共に先ずはコロニーに挨拶してきてくれ」

 「らーだぜ!」


 パトロール艦隊との偶発的な遭遇戦から少しばかり時間は進み、β任務部隊の針路上には産業用コロニーと惑星がその姿を現していた。確か、サウサンからの事前情報だと惑星『ウエレン』だったか。年間を通して平均気温は低く、雪や氷によって閉ざされている季節が長いとか。主な産業は、コロニーで行われる農業と、寒さに強い家畜の毛を使った織物工業。


 特段、戦略的に降伏させる意味があるかと言われると微妙ではあるのだが、コールマフ連邦政府が外敵からの脅威にさらされた辺境の惑星やコロニーに対し何ら有効的な手段を打てないって事実が此方としては必要な訳で。まぁ、体の良いやられ役とでも言えば良いだろうか。


 とは言え、別にコロニーを破壊したり惑星を人が住めないような状況に追い込む事が目的ではない。あくまで、連邦政府に対する期待値を削りたいだけだ。……元々、そこまで高くないって事実からは今だけ目を逸らすがね。サウサン曰く、辺境の惑星やコロニーは各々で排他的かつ閉鎖的なコミュニティを形成しがちで、中央とは形式的な繋がりが主だそうだ。


 一応、連邦政府から派遣されてきている人間達がいるものの、エリート意識とやらで地元の人々とは対立がちという有り様。それでも、軍事力が背景にある限りは一応の安定があった訳だ。それを、オッサン達が絶賛破壊中ってだけで。


 さて、ブリッジを飛び出し格納庫へともの凄いスピードで走り去っていったバイスァを見送ったら、お仕事の続きといきましょうかね。まぁ、そうは言っても大抵のことはヘイスァ達で回るんだけれども。下だけでなく、上まで忙しないってのは組織として余り褒められた状況ではないからな。これ位の緩さが丁度良いのだろう。


 現在のところ、工程は予定通り消化できている。まぁ、偶発的な戦闘は数回発生したものの此方の損害は皆無。弾薬や推進剤の消費も想定内であり、今後の作戦継続に何らかの支障もきたさない。初めての実戦を経たランスァとホイスァの専用機は、データ分析も兼ねてそれぞれ大掛かりな分解整備を実施中。暫くは戦力外となるが、特に問題は無い。


 ヘイスァとバイスァは適度にブリッジの仕事を熟しつつ、暇を見つけては専用機で宙を駆けまわっている。ホンスァとランスァは、代用機としてランドグリーズを借り受け模擬戦に夢中。ランドグリーズ自体は高性能な汎用機ではあるが、専用機のベースとなっているため機体特性はかなり近い。


 そろそろ、オッサンも専用機で実戦をしておかないとって話ではあるんだが、如何せん敵の規模が小さすぎてな。まぁ、余り贅沢を言っていられる状況でもないし、次あたりに出てみるか。


 「かずまー」

 「惑星」

 「回答!」

 「「「ビュンビュンだぜよ!」」」


 どうやら、惑星の方からも勧告に対する回答が来たようだ。さて、コロニーと同様に此方の提案を拒絶するのか、或いは別の道を選ぶのかだが……。やはり、答えはノーとのこと。


 「辺境には辺境のプライドがあるか。……それで何もかも護れるって言うならば言うこと無しなんだがね」


 確かに、生きていく上でプライドを守ることは大切だと思う。とは言え、それは状況がそれを許す限りの話であって、今この状況でそれを声高らかに語った所で何の意味を為さない。プライドだけでは、国も家も家族も未来も守れやしない。


 「ホンスァ。先行している艦隊に伝令。衛星軌道上からの対地攻撃を準備させてくれ」

 「あいまむ」

 「それは、性別違うからな?」

 「あいまん」

 「……もはや意味不明だよ」


 相変わらず、我らが愉快系アイドルグループの思考は意味不明である。それでもコミュニケーションは取れているのだから、計算された意味不明さとでも言えば良いのか。まぁ、上手く回っている限りは気にしたら負けだな。


 取り合えず、コロニーにはバイスァが挨拶に向かい、惑星『ウエレン』は幾らか重要な施設を吹き飛ばしてから再度勧告を送るとしよう。交渉ってのは、スマートに物事を進めないとな。こちらとしても、下手に民間人に多数の犠牲が出ると厄介だし、敵意を向けられるのは何もしない連邦政府だけで十分だ。


 「ランスァ、念のため周辺警戒を厳に」

 「あいまん」

 「……」


 どうやら、感染する様だ。まぁ、彼女達の場合は以心伝心というか、互いに何もせずとも何処かで確かに繋がり合っているという不思議な感じがある。双子と言うか、この場合だと四つ子か? シャンインが余計な手出しをしたからそうなったのか、最初からそうなる素質があったのかは不明だが、別に悪い話ではない。


 流石に、漫画やゲームじゃあるまいし長距離でテレパシーのようにお互いの状況を言葉やイメージにして知らせ合う様なことは出来ないようだが、ある程度の距離までならば互いの位置を無意識に認識しあっている節があるんだよ。流石は、銀河に名だたる愉快系アイドルグループ。


 各母艦から、イースキー隊とミディール隊が展開し警戒態勢を構築していく。先行艦隊だけでなく、索敵用の小規模艦隊も周辺に幾つか潜ませているので、連邦軍から奇襲を受ける可能性は低い。とは言え、何があるか分からないのが戦争だし、そもそも敵だってただの馬鹿じゃない。


 馬鹿じゃないはずだが、賢いかと言われるとそれはそれで悩む。確かに、最初はボルジア共和国よりも厳しい相手だと認識していた。実際に、サウサンは対共和国戦をチュートリアルと称していた位だからな。ただ、実際には手持ちの戦力が揃えば揃うほど、勝てぬ相手では無いとハッキリ理解できるようになった。


 勿論、要所要所で厄介な状況になったりはしたが、現状は此方の筋書きに沿う形で今なお推移しているのは紛れもない事実。そうなってくると、自然と湧き上がるのは愚かな慢心だろう。勝っているのだからとか、順調にことが進んでいるのだからとか、そうなる要因は幾らでもある。


 何か、突発的な事態が起きるとするならばどのタイミングか。あの管理者(バカ)のことだ、本来ならば有り得ない何かを仕込んでいる可能性は否定できん。要塞を発つ前に、ソフィー達にも念を押しておいたが、もう1度ダメ押ししておいた方が良いかもしれない。




 「かず」

 「まー」

 「コロニー、撃ってきたよ?」

 「自衛行動に出たか。バイスァは?」

 「距離」

 「とって」

 「オーダー待ち!」


 つらつらと考え事をしていたら、どうやらバイスァ率いる部隊がコロニー側から攻撃を掛けられたようだ。掛けられたと言うか、向こうさんからすれば仕掛けられたから反撃したってことなんだろうが。まぁ、細かいことは気にしなくていい。状況がどうであれ、やることはシンプルだ。


 「応戦を許可する。敵の攻撃手段を潰せ。ただし、コロニーへの被害は最小限に止めるようにな?」

 「あい」

 「あい」

 「あい」


 バイスァ機から送られて来る映像を見る限り、コロニー側の自衛手段は幾らかの誘導兵器と弾幕を張る為の高角砲の類。後は船外作業用のポッドに、無理くりランチャーやら機銃なんかを付けた簡易的な機動兵器擬きが幾つか。それ以外だと戦力の引き抜きで駆逐艦以上の艦艇はおらず、民間船舶に毛が生えた程度の警備艇が数隻ほどコロニー周辺宙域に展開しているだけだ。


 現状、脅威になる得る戦力は見受けられない。あくまで、意地を見せるための抵抗なのか。或いは、何かを待っているのか。とは言え、増援が来たとしても数の差は埋まりようが無い。何より既に相手の喉元に刃を突き付けているのはこちら。


 『かずまー?』

 「どうした、バイスァ?」

 『んー、何かこっち来るっぽい?』

 「来る? 何がだ?」

 『ふめー』

 「……」


 何か、ね。こんな辺境の、それこそド田舎と言っていいコロニーで、バイスァが態々口にする程の何かがあると? だとしたら、それはこの状況においてジョーカーとなり得るモノか否か。前者だとしたら、好ましくない展開が待っているかもしれん。


 「……バイスァ。念のため、後退しろ。コロニーへは、ミディール隊のみ前進させる」

 『あい……まっ!?』

 「バイスァ!?」


 一筋の緑色の閃光が、宙を貫いた。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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