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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第6章『大国の終焉・中』
322/336

6-25:オペレーション・サジタリウス⑧

何度でも言いますが、専用機はロマンです。

コスパなんて、現実の軍隊が考えてれば良いんだよ!(暴言)


 「ソフィー達の方は順調だな」


 正面のモニターに映し出されている蹂躙劇から目を逸らすように、オッサンはソフィー&サウサンから送られてきた先ほどの戦闘の報告書へと目を落としている。いやね、目的地に向かっている途中で偶発的にコールマフ連邦軍のパトロール艦隊と遭遇した訳よ。


 規模も少ないから、発見した先行艦隊で処理するだけで良かった筈なんだけど。幾分、連邦勢力圏の外周部を進んでいせいで、やる事なくて暇を持て余していた方々がおりまして。


 『『『『ひと狩りいくZE!』』』』


 って、咆哮を上げながら我らがランドロッサ陣営の愉快系アイドルグループの面々が、制止する暇も無くそれぞれの専用機を駆って出撃しちゃった訳でして。独り残されたオッサンは、その事実からそっと目を逸らしたね。これが本物の軍隊ならば、無許可出撃とか無断持ち出しとか色々と軍紀に反するってことになるのだろうけれども。ねぇ?


 「……相手の目と耳は奪ったし、他に情報を流す手段も封じた。まぁ、ランスァとホンスァは初実戦てのもあるから、大目に見るか」


 戦闘開始の定石である、電子戦によるレーダーや通信システムの遮断。そして、以前遭遇した連邦軍の偵察型巡洋艦が使用した通信魚雷への対策も打ってある。まぁ、定時連絡が途切れた時点で露呈するのだが、多少なりとも時間を稼げれば十分だろう。


 パトロール艦隊が消息不明になったことが明るみに出た頃には、既に該当宙域を此方は離脱している。何処へ向かったか分からない以上、連邦軍が打てる手は少ない。それに、元々ここら一帯の戦力は以前にも増して削られているからな。機動艦隊クラスの戦力は、その大半が前線か惑星『トゥーラ』防衛など主要な防衛目標に振り分けられてしまっている。


 オッサンのβ任務部隊が進む道中には、殆ど脅威となる様な戦力は存在していない。精々が、今この瞬間に正面のモニター内で次々と爆散しているパトロール艦隊か、後は地方艦隊と呼ばれる微妙な規模の戦力程度だ。


 既に、ソフィー率いるα任務部隊の凡その戦力規模は、連邦側に把握されているだろう。そして、コロニーレーザーによって前線基地が消滅したことも。少なくとも、その様な状況において戦力を各地へと追加派遣というか、元に戻すというかは不明だが、何れにせよその余力など連邦にはない。正面から来る此方の主力という名の誘引戦力を、是が非でも止めなければ彼らに未来は無いからな。


 連邦政府が戦時だとしてどれだけの人員を無理矢理に動員しようとも、勢力圏内にあるあらゆるドックを軍艦建造のためにフル稼働させようとも、今から戦力差を埋めるには時間が圧倒的に足りない。現有戦力を可能な限りα任務部隊の対応に宛がう以上、こちらの障害は当初の予定を上回ることはない。


 そして、サウサンが地道に撒いていた種が各地で一気に芽吹く。外と内。双方からの力は、確実に連邦を追い詰める。後は、窮鼠猫を噛むにならないように、しっかりと叩き潰していくだけだ。……後詰の戦力を建造しておかないとな。共和国のおいたの件もあるし。戦力増強の無限ループに嵌りそうだ。


 『かず』

 『まー』

 「どうした、ヘイスァ?」

 『敵』

 『弱い』

 『練習』

 『不足』

 『『『『俺を踏みだ(自主規制)』』』』

 「そうか……。折角の練習台だ、色々と試してみると良いよ」

 『『『『アイアイ!!』』』』


 暫く大人しく(?)戦っていたヘイスァ達だったが、想定以上に敵さんが弱いらしく不満の様子。まぁ、前線配備の経験豊富な艦隊と違って、治安維持がメインのパトロール艦隊が相手では仕方が無いだろうな。1軍と2軍どころか、プロとアマチュア、いや下手するとプロと素人レベルかもしれん。


 結局のところ、どれだけ訓練を積もうとも1度の実戦から得られる経験に比べたら微々たるモノだ。勿論、訓練が無駄という訳ではない。それらの経験が無ければ実戦で己の役割を熟すことすら不可能だからな。訓練が土台をつくり、実戦がその上に立つ構造物とでも言うべきか。


 急ごしらえの兵士や艦艇など物の数にもならない。そもそも、その様な連中は、練度は勿論だが士気が壊滅的に低いからな。文字通り肉の壁として利用される様なことになれば、確実に離反する者達が出てくるだろうし、上手くことを運べば同士討ちさせられる。


 ……それにしても、ヘイスァ達の専用機は何処を目指しているのやら。ランスァとホンスァの専用機は今回が初実戦ということもあり各々のコンセプトを反映して製造された時と殆ど変わらない。一方で、ヘイスァとバイスァの専用機は、大規模な改修だけでなく細かいマイナーチェンジも何度か行われている。


 ヘイスァ機は、ビームランスとパイルバンカーを主武装にした近接戦闘型であることには変わりが無いが、パイルバンカーが一体化された左腕は結構変化している。パイルバンカー用の杭が内蔵6本から4本に減った代わりに小型シールドが外側に増設され、更にシールド内には内蔵式の高周波ブレードのオマケ付き。


 他にも頭部の左右にはバルカンポットを追加し、腰のマウントにはランスァ機と同系のビーム式ハンドガンと予備弾倉(4本)。背面のメインスラスター兼兵装コンテナは形状の変更などで、携行出来る予備の杭(18本→20本)やランス用の交換グリップ(10個→14個)が微増している。


 後は、装甲材や傾斜角度の見直しだったり、塗装の変更やシステムのアップグレード、通信関連の強化なんかが実施されている。コンセプトは維持しつつ、より継戦能力を強化した形だな。結構、色々と持っている割には比較的スッキリとしたスタイルを維持出来ているのは、偏にドクター達のお陰だろう。ヘイスァに任せたままだったら、確実に私の考えた最強ryになっていたはずだ。


 で、相方のバイスァ機だが、こちらは以前の改良からそこまで大きな変化は無い。ショットガンに、背面スラスターと一体型の長物である150㎜リボルバーカノンとビームキャノン。後は機体各部に内蔵された高周波ブレードだな。


 こちらは、兵装はそのままに機体各部の改修やシステム面でのマイナーチェンジが多かった。後は、頭部が砲撃戦に特化した形に更に変更された位だろうか。偏差砲撃用のレーザー式測距儀や、光学・デジタル併用の高倍率スコープ、それらを補佐する新たな砲撃専用システムの搭載。砲弾補充用のサブアームの増設や、携行する砲弾数の増量。当たり前だが、増加する機体重量に合わせてスラスター出力も向上している。


 近接のヘイスァと、遠距離のバイスァ。お互いに元のコンセプトを維持しつつ、経験を反映させた良い機体に仕上がってきている。ドクター曰く、オッサンみたいに機体の性能や拡張性がパイロットの成長に追いつかないって事態にもまだなっていないようだ。暫くは、現行機を改修しつつ使うことになるだろう。


 まぁ、本当なら彼女達が前に出るのは避けるべきなのだろうが、当人達がそれを望む以上は無理矢理止める訳にもいかず、飽きる迄は好きにさせるしかないな。……そもそも、オッサン専用機から得られた各種データを解析して最適化したモノをフィードバックしているせいか、以前よりも動きが色々とオカシクなっているのは木の精だろうか? いや、きっと気のせいだ。そう、思わせてください。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 専用機といったら名前をつけてやらないとカッコつかないですよね。 ああ、でも名前をつけてたらいろんな意味で大変になりますね、どこか幕間にヘイスァ機 ニックネーム 近接型… とかやったほうが話…
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