表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第6章『大国の終焉・中』
317/336

6-20:オペレーション・サジタリウス③

前回の投稿からひと月、漸く色々と落ち着きましたので投稿を再開します。

もう少し投稿できるかと思ったものの、全く落ち着かなかった。

 確かな方針が決まりさえすれば、物事というのはそこからは一気に進むものだ。先行艦隊とは言え数も性能も圧倒的に上である以上、100隻程度の小規模艦隊など直ぐに丸裸になった。


 「政治的な亡命の希望者か」

 「ぼー」

 「の」

 「めー」

 「どぅする?」


 所属不明だった小さな艦隊には、コールマフ連邦から政治的な亡命を望む者とその家族達や友人、支援者らが多数乗り込んでいた。相手の言い分を真に受けるならば、彼方此方の辺境惑星から理由は違えど微妙な立場にいる者達が、自らの命大事さに金で買収したパトロール艦隊で他勢力への亡命を目指している途中だという。


 まぁ、一応は筋が通るか。間違っても、自分達の存在を周囲へアピールしながら宙を航行する訳にはいかないからな。連邦の勢力圏のかなり大外とは言え、そこら中に連邦の監視の目はある。彼らに見つかれば、政治的な亡命を求めている者達の末路など1つしかあるまい。


 亡命しようとしているなんてバレた日には、自分の命だけでなく、家族や親類、或いは支援者にまでその責めが及ぶことは間違いないだろう。連邦政府からすれば、不満を溜めている民衆の目を逸らす丁度良いスケープゴートになるしな。捕まれば、全てが終わりだ。


 「行先については?」

 「共和国」

 「っぽい」

 「帝国」

 「とも」

 「意見は纏まって無いわけか。まぁ、どっちだろうと、俺達には関係ないけどな」


 彼らがワルシャス帝国を目指そうと、ボルジア共和国を目指そうと、或いは第三勢力の何処かを目指そうと、オッサン達には何ら関係のない話だ。政治的な亡命をしたいというのならば、どうぞ勝手にすれば良い。……そもそも、サウサンがあらゆる手段を用いて連邦に出血を強いている状況だしな。彼らも、その結果なのかもしれん。


 連邦政府の求心力が、外周に近づけば近づくほど崩壊しつつある状況というのは、此方側からすれば非常に好ましい。パトロール艦隊が金で買収されるレベルまで士気が落ちているとなれば、道中の戦闘も多少は回避ができるかもしれん。


 勿論、連邦残党軍なんて厄介な勢力が後々の宙へと残らない様に可能な限り潰すべきではあるが、そうは言っても対連邦戦が長引くのは好ましくない。特に共和国は先のテロ事件以降、国内での政治的な纏まりを失いつつある。猿山の大将が何やら動いているようだが、劇的な改善は難しいだろうな。


 「どう」

 「するー」

 「なに」

 「するー」

 「……そうだな。先行艦隊に指令。当宙域にて、如何なる勢力の艦艇とも遭遇(・・)した事実は存在しなかったと。そう伝えておいてくれ」

 「「「「アイサー」」」」


 オッサン率いるβ任務部隊は、この宙域で如何なる艦艇、艦隊とも遭遇をしなかった。それがランドロッサ要塞公式の記録となる。故に、その公式記録に相反する存在などあってはならない。非道と思うかもしれないが、今は戦争中であり情報の遮断は大原則だ。


 例え、彼らが政治的な亡命を真に心から望んでいる者達だとしても、何処かで何らかの情報が連邦に漏れるかもしれない。その様なリスクが僅かにでも存在するならば、今後の作戦進行のためにも此処で万全を期す必要がある。


 ……いや、それらしい理由をどれだけ並べたところで、結局はオッサンが臆病なだけだ。今回のオペレーション・サジタリウスに向けて何度も何度もシミュレーションを繰り返した。僅かな見落としも、綻びも存在しないようにと。


 それでも、完璧など存在し得ない。所詮、シミュレーションはデータ上の解に過ぎず、人と言う不安定な要素が最も影響を及ぼすこの宙での戦いにおいては、気休め程度にしかならない。だから、要塞に帰るまでの間、何処までも冷静にそして冷酷になると決めた。


 「かず」

 「まー」

 「()

 「殲滅」

 「「「「完」」」」

 「……了解。先行艦隊に指令。所定のコースに戻れ」

 「「「「アイ、愛、sir」」」」


 100隻足らずの敵性艦隊など、文字通り一瞬で宙のデブリへと化した。駆逐艦も巡洋艦も、補助艦隊も等しく宙へ散る。それらにどれだけの人間が乗っていたのかは知らないし、知る必要もない。連邦の最外周にあたる辺境の宙に、生まれたばかりの真新しいデブリが少しばかり増えただけだ。


 「さて、少しばかり道草を食ったが先を急ぐぞ。そろそろ、ソフィーとサウサンが始まりの花火を打ち上げる頃だからな?」

 「線香?」

 「ネズミ?」

 「蛇玉?」

 「爆竹?」

 「もう少し大きいヤツだよ。……それにしても、何処からその謎知識を手に入れるのやら」


 相変わらず、ヘイスァ達の謎知識は底が見えない。まぁ、常に情報を貪欲に吸収し続けている結果なんだろうが。それらが、どれほど役に立つかは正直なところ不明ではあるが、それらもまた彼女達を形作る一部である以上、終わりはないのだろうな。


 「さて……」

 『……聞こえるか? カズマと愉快系ガールズ』

 「聞こえてるぞ、サウサン。どうした?」

 『予定通り、花火の打ち上げ準備が終わったぞ』

 「そうか。タイミングは任せる。予定通りなら、そろそろソフィーも」

 『……一馬さん、こちらも射程に捉えました』

 「おっと、言っている傍から来たな」


 サウサン、続いてソフィーからも秘匿通信が繋がった。ソフィー率いるα任務部隊、サウサン率いる通商破壊艦隊による先制の打ち上げ花火の準備が整ったようだ。ここから、一気に連邦の戦力を削り取ると共に、その膨大な国力もまた削っていく。


 支配する気も、統治する気も無い。唯々、その力を削り落とす作業。その過程で、どれだけの血が流れるかなど些末なことと自分に言い聞かせる。全ては、勝つためだ。……何て言うか、毎回自分に言い訳している気がする。まぁ、一般ピーポーには言い訳が必要なんですよ。


 「さて、こっちは僅かばかり予定外の遅延が発生したが、今後の予定に変更はない」

 『こちらは何時でも始められるぞ。全艦隊が配置についている』

 『こちらも、何時でも始められます』

 「了解。現時刻を持ってオペレーション・サジタリウス、フェーズ1への移行を宣言する」

 『『了解』』


 さて、おっぱじめようか?

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ