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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第6章『大国の終焉・中』
309/336

6-12:新たなるチカラ

何だかんだ、機体紹介は次話に……。

なお、新たなる専用機は【3.5-4:カワル宙④】にて一馬がドクターに開発を依頼していた機体になります。

ようやく、登場ですね。作中ならまだしも、実年月だと2年以上前か…。

 「『シラヌヒ』ですか。次の大戦、乗られるのですな?」

 「……あぁ、流石にラーズグリーズだと、厳しいだろうからね」

 「なるほど。ご安心くだされ、既に粗方はカタチになっております。後は、香月司令官に魂を吹き込んで頂くのを待つばかりですぞ」

 「『不知火』に魂を?」

 「はい。使い捨ての兵器ならまだしも、『シラヌヒ』は香月司令官の半身ともなる代物。ガワと中身は我々の手で創り出せますが、一番重要となる想いを……。魂を宿らせることが出来るのは他を置いて、貴方以外に居られませんぞ」

 「……そうか」


 『不知火(シラヌヒ)』は、オッサンの専用機としてドクターに開発を依頼していた、ベース機体が存在しない完全ゼロベースの代物。当初から、男の子の夢を体現したとも言える過剰なスペックを盛り込んでいたので、ドクターが開発本格化に合わせ専従チームまで編成していても、かなりの時間を要していた。……まぁ、相反するとも言える仕様上、それは仕方が無いけどな。


 あの当時は、まだ『オグマ改』を専用機として乗り回していた時だからな、正直この機体の出番が回ってくるか半信半疑だった部分も多少はある。それでも、将来への備えとして開発中止を指示しなかったのは正しかったと、今更ながら過去の自分に感謝する。


 「後は魂だけって事は、実質完成しているって解釈で良いんだよな?」

 「はい。ラボで得られるデータは全て収集完了しております。後は、実機による各種テストさえ完了すれば、何時でも御身の力となる新たなる機体ですな」

 「了解。先ずは、ラボの格納庫で起動試験。後は、コロニー内の演習場と宙での実戦想定試験。相手は……」

 「「「「はい、はい、はい、立候補ー!!」」」」

 「アハハ……、直ぐに揃いましたな?」

 「お前達。……何時の間に?」


 ……おかしいね。私室で別れた筈のヘイスァ達が、何がどうしてドクターのラボに居るのだか。しかし、ドクターを始め他のラボ職員達も特に気にしていない辺り、もはや彼女達のわちゃわちゃとした存在感は此処では日常茶飯事なのだろう。


 実際、彼女達は自身の専用機開発でのテストパイロットを始め、ラボで研究開発されている兵器・兵装類の試験等に度々協力している。まぁ、その度にあの不思議ワールドに周囲を巻き込んでいるらしいが、それでも出禁なりを喰らっていない辺り、受け入れられているのだろう。


 本来の役割であるシャンインの補佐が、些か片手間になりつつあるのが問題ではあるが、それはヘイスァ達の初期成長に余計な介入をしたシャンイン自身の責任でもある。報告を聞く限り、やるべきことはしっかりとこなしているいる様なので、もう暫くは様子見で良いだろう。


 「それで、模擬戦の相手をしてくれると?」

 「ザッツラー!」

 「かずー」

 「まー」

 「ボッコボコに」

 「「「「してやんぜよ!」」」」

 「左様で」


 今の所、オッサンとヘイスァ達の模擬戦戦績は……彼女達の為にも言わないでおこう。それに、ランスァとホンスァは専用機での模擬戦は初めてだな。重装甲タイプと隠密タイプ(?)という、ヘイスァ達の専用機とは機体コンセプトが大きく変わってくる。


 ランスァは前面に出て装甲と弾数を活かしてインファイト、それをバイスァの射撃が支援しつつ、ヘイスァが一撃を狙う。背面や視界外からは、ホンスァが絶えず付け狙って来ると。割かし、バランスが良いんでないかね。


 「これで」

 「かずー」

 「まー」

 「めしうまー」

 「……そうか」


 何処からそんな言葉を勉強してくるのか知らないけど、シャンインの教育センスには脱帽だわ。いや、脱帽というか爆笑と言うか。取り合えず、面白いから君達はそのままでいてくれ。


 「さて、ドクター。早速で悪いけど、機体を見せてもらえるかな?」

 「畏まりました。それでは、此方へどうぞ」




 ドクターに案内されラボ内を歩くこと20分少々。道中、基本的な操作説明は受けたので、後は実機のコクピットを見て判断すればまずいけるだろう。実際、説明書を見るよりも実際に手に取って色々と触れた方が理解が速いって事は往々にしてあるからな。勿論、例外も沢山あるので過信しないように。


 ラボ自体、厳重に警備が行われているけれども、その中でも特にこのエリアは厳しい監視体制が敷かれている。陸戦隊に所属する完全武装したアンドロイド達も訓練も兼ねて常駐しているし、ラボの職員達も職能ランクに応じた立ち入り制限がされている。


 ほぼ顔パスで入れるのは、オッサンとドクター位だろうな。『不知火』開発専従チームの面々や、ヘイスァ達も入退室時には必ずチェックを受けている。……ただ、楽しそうなのはどうかと思うが。チャックしている陸戦隊の面々も何処か朗らかな雰囲気をだしちゃってるしさ。


 そんなこんなで、ラボの中でも最深部とも言える場所に足を踏み入れた訳だ。現行の専用機であるラーズグリーズですら、1段階セキュリティレベルの低い開発フロアだったからな。此処が、どれだけ厳重な環境下にあるかは想像に容易いだろう。


 「香月司令官、此方になります」

 「……あぁ、ありがとう」


 何だかかんだセキュリティレベルがとか言っているが、実際に此処に足を運んだのは今回が初めての経験だ。存在自体は、ドクターからの定期報告で知ってはいたけどね。聞くのと見るのとでは雲泥の差だよな。……百聞は一見に如かずとは良く出来た言葉で。


 他のフロアと同様に、各種データの収集と分析を行うエリアとは別に、キャットウォークが張り巡らされた格納庫が設けられている。機体を立てた状態でも横に寝かせた状態でも整備が出来る様に、全ての機材が所せましと配置されている姿は圧巻だな


 そして、その格納庫に起立状態で収容されている機体こそ……。


 「この機体こそ、香月司令官自らが立案された、新たなる専用機『シラヌヒ』ですぞ」

 「……あぁ」


 あの日、ドクターに渡した思い付くまま描いた殴り書きの様なラフスケッチ。それを基に、ドクターが生み出したオッサンの専用機。それを漸く、この目で拝む日が来た。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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