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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第6章『大国の終焉・中』
304/336

6-7:同時多発的⑥

後手に回ると、中々その差を埋められないもので…。

 「……」


 コールマフ連邦で発生したコロニー内での虐殺。既に、映像は連邦政府系メディアを通して、広く報道され始めた。凄惨な映像をバックに、如何にも文言の羅列が並ぶそのニュース映像。事案を自ら創り上げ、人心を扇動し、引き締めを行う。連邦からすれば、僅かな痛みで大きな見返りを得られる手段だ。勿論、バレたら一巻の終わりでもあるが。


 虐殺に関与したと思われるのは、2隻の民間船舶。何れも、北星条約やその他諸々の諸条件によって通商破壊戦の対象外となっていた。連邦に、それを上手く悪用されたと言うべきか。何れにせよ、早期に事態の収拾を図らないと、色々と面倒な事が起こるのは確実。


 「コールマフ連邦の狙いが、国内世論の誘導と引き締め、そして反体制派に対する体の良い粛清の実施であるとするならば、襲撃はまだ続くと見て良いかと」

 「そうですわね。全ての非を私達に容易に被せられる以上、手を緩める事は考え難いですの」

 「仕組みが簡単ゆえに、継続も容易いですからな」

 「我々としては、早急に物的証拠を押さえるしか手が無い。現状、下手なアピールは悪手にしかならんからな」


 完全に、後手に回っているな。だが、それに対して愚痴をこぼしたところで何も変わらない。連邦は、良い手段を得たと小躍りしている事だろうさ。何として、次かその次で防がないと……。


 「カズマ。証拠確保のため、陸戦隊をか……」

 「どうした?」


 陸戦隊をと言った所で、サウサンの口が不自然に閉じられた。その視線の先は、手元の端末に固定されている様だ。恐らく、新しい情報が上がってきたのだろう。そして、それは彼女の口を閉じさせるだけの何かってことの様だ。……嫌な予感がする。


 「……やられた。先手を打たれたぞ」

 「先手?」

 「2隻とも、沈んだよ……」

 「し……、はぁ!?」


 沈んだ? 2隻とも? 誰が、何の為に……。まさか!?


 「つい、今しがた入ってきた情報だ。2隻とも、内部からの爆発によって沈んだとの情報が連邦内で報道されている様だ。明確なテロ攻撃だと。その犯人は……」

 「……俺達ってことか」

 「そうだ。先のコロニー襲撃、そして今回の民間船舶へのテロ攻撃。どちらも、我々が犯人だと(・・・・)連邦政府は名指しで非難をしている」


 クソったれが!!


 「……なるほど。連邦は粛清と言う名のコロニー襲撃を行い、その批難の矛先はあの映像によって全て我々に向けられる。そうなれば当然、こちらが無実の証拠を押さえるために動くのは簡単に予測が出来る。ならば、押さえられる前にテロ攻撃だと言って沈めてしまえ解決する。我々に更なる非難の矛先が集められ、かつ証拠は全て宙へ塵となって消え去ると。コロニー襲撃から此処までが、連邦の計画だったのですね」

 「船外作業用ボットの残骸なら、現場で見つかっても大しておかしくありませんし、その他の外装部品もそうですわ。民生品を流用したのであれば、別にあっておかしくないモノばかりなのは、予想に容易いですもの」

 「現場で実際の襲撃に関わった者達も、船もろとも宙へと散ってしまえば、正に死人に口なしですな。敵ながら、良く考えておりますぞ」

 「これで物的な証拠も、関与した者達の証言も全て手に入らん。……正確には、指示した者を捕えられればまだ可能性はあるが」


 完璧に、相手のシナリオ通りになった訳だ。連邦は何ら痛みを負わず、大きな見返りを得た。逆に、オッサン達ランドロッサ陣営は、彼方此方に火種を抱えることになる。中立であるはずの報道関係は勿論のこと、人道支援団体のバックにいる共和国の資産家達が何を共和国政府に迫るか分かったものじゃない。


 「今更、否定の声明を出したところで意味を為さないだろうし……。押さえるべき証拠も塵になって消え去った。計画の首謀者は今の段階では不明。後手に回るどころか、周回遅れにされた気分だな」

 「カズマ。厄介なのは、次がある可能性だ。報道関係の船舶も、人道支援団体の船舶もまだまだ多数ある。次にどの船が使われるか、正直予測が困難だ。そして第2、第3の襲撃と証拠隠滅が行われれば、それも我々の責任にされるだろう」


 敵は、綿密に計画を立てて実行に移し、実行者は余計なことを喋られる前に証拠と共に処分することで、こちらに尻尾を掴ませない。何十、何百とやる訳でなく数件程度ならば使い捨てにする工作員の確保も容易いだろう。極端な話だが、重犯罪者に恩赦と引き換えにやらせるなんて手法も取れるからな。処刑する手間も一緒に省ける。


 「それだけじゃないですわ。今後、攻撃対象外の民間船舶が連邦領内で消息不明になった場合、状況がどうあれ私達の関与が疑われるのは必至ですわ。全域で通商破壊戦が行われていて、かつ今回のコロニー襲撃や対象外のであるはずの民間船舶へのテロまで実行した組織ですもの」

 「そうですな。シャンイン嬢の言う通り、我々の立場は敵の策でかなり危うくなっておりますぞ。対連邦で方向が一致している共和国や帝国も、今後の流れ次第ではその方針を変えるやもしれませんな。特に共和国は、政界に影響力のある資産家達が五月蠅くなるのは間違いないかと」

 「ついでにと言う訳ではないが、共和国が揺れれば冒頭で軽く触れていたフォラフ自治国家の政情不安にも影響が出るだろう。それと、パルメニア教団の件もそうだ。アレは、経緯はどうあれカズマが大きく関わっているからな。連邦と教団の過激派が、裏で手を組む可能性もあり得る」

 「そうなると、下手すると『ガルメデアコロニー』へも影響が波及するかもしれませんね。必要な事だったとはいえ、当時の権力者達を武力で一掃したのは我々ですし、その際にコロニー内部で陸戦隊とミディール隊による戦闘も行っていますので」


 これまでランドロッサ陣営が行って来た様々な行動が、全て悪い方向へと返ってくる訳だ。参ったね……。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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