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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第6章『大国の終焉・中』
303/336

6-6:同時多発的⑤

先週はGW明けでやる気が出ず。今週は今週だからやる気です。ダメ作者です。

展開が遅くてすみません。


 「サウサン。それで、もう1隻の方はどうですか?」

 「あぁ。そちらは、途中で補給を受けつつボルジア共和国の勢力圏内へ戻る道中だな。例のコロニーが、彼らに取っては最後の目的地だった様だ。最も遠い宙域が、最後の目的地と言うのは何とも疑わしいがな」

 「……確かに、効率の面から良いとは言えませんね。ちなみに、針路は共和国へと真っ直ぐですか?」

 「いや、最短ルートは連邦と共和国の最前線になる。どちらかへと迂回するルートを取るだろう」

 「ワルシャワ帝国方面或いは此方側と?」

 「そうだ。……まだ、最終的な通行航路が関係各所へは提出されていない様だがな。恐らくは、戦況を見ているのだろう」

 「帝国側へ向かわれると、手が出し難いですね」


 コロニーでの虐殺に関与した疑いのある船舶の残りの1隻。ボルジア共和国に拠点を置く人道支援団体所有の船舶。サウサンから端末に送られた情報によると、貨客船『メリディアン号』という船の様だ。支援活動に従事するスタッフの居住エリアに、大量の支援物資を保管する貨物エリア。医療支援用のスペースも船内に設けられている様だな。


 公開されている情報を見る限りだと、真っ当な支援活動用の船舶に見える。とは言え、貨物スペースの様に実際には何があるのか表からは窺え無い部分もあり、これだけでは白とも黒とも判断できずに困るところなんだが。


 「その支援団体の内情は探れるか? 今回の事案に関与しているとなると、連邦側と何らかの繋がりがあるだろうからな」

 「既に始めさせている。流石に軍レベルのセキュリティは講じていないだろうから、そう時間は掛かるまい」

 「そっちは頼んだ。で、ドクター実際のところなんだけど、民間の船舶であのミディール擬きを複数機搭載して整備やらをするスペースは確保出来るものなのか?」

 「我々の様に常時即応態勢でとなると、相応のスペースが必要となり他の積荷との兼ね合いから些か厳しいでしょうな。恐らくですが、あの手の民間船舶を隠れ蓑にするならば、普段は複数のコンテナ内部に分解した状態で格納し、検査の目を誤魔化しているかと。そして、必要に応じて船内か船外で組み立てて投入する仕組みの方が、理に適っておりますな」

 「そうか」


 オッサン達ランドロッサを始め、各勢力が運用している空母は初めから艦載機等の機動兵器の運用を前提に設計が為されている。故に、専用の格納庫や整備スペースが予め備わっているのが普通だ。でも、民間の船舶となると、当たり前だがそうではない。


 勿論、事前に改装を加える事で相応の設備を備える事は可能だろうが、今度は臨検などの際に確実に引っ掛かる事になるのは明白だ。簡易的な工作室程度ならまだ言い訳も立つだろうが、本格的な設備ともなったら、言い逃れも出来まい。


 積載されていても怪しまれ難い船外作業用のポッドをベースにし、外装は民生品にカモフラージュして貨物コンテナに積んでおく。武装類もパーツ単位に分解してから複数のコンテナに紛れ込ませれば、そう簡単に原形へと辿り着かれることは無いだろう。


 「機体と武装は良いとして、弾薬類はどうだ?」

 「僻地のコロニーとは言え、最低限の治安維持部隊はおります。それらへの、弾薬類供与に予め紛れ込ませておけば問題無いかと。或いは、そもそも現地にあるモノを最初から使う前提やも知れませんな」

 「なるほど。出来る限り、関与している人間の数を減らすならその方が都合が良いか」

 「はい。関与している者が減れば減るほど、露呈する可能性は減りますからな」


 機体と武装は荷物に紛れ込ませて運び、弾薬類は現地調達。後は目的地で一方的な虐殺を行い、我々ランドロッサを犯人に仕立て上げるのに必要な映像を確保するだけだ。中立ないし友好的なはずの民間船が、虐殺する為の兵器を運んでいるなんて誰もがつゆほども思わないだろう。


 「……運び込む手段は分かった。でも、機体の回収はどうする? 虐殺が行われているコロニーに何時までも入港している訳がないよな?」

 「ベースが、此方の予想通り船外ないしコロニーで運用されている作業用ポッドならば、虐殺に使用された機体はその場で処分、代わりに現地で運用されている別の機体を積み込んでしまえば問題は無いかと。或いは、こうなってくるとベースそのものも現地調達やもしれませんな。基本的に連邦の宙域内ならば、運用されている作業用ポットはほぼ同型の機種の筈ですので」

 「……ちょっと待て。前者はまだしも後者の場合にドクターの仮定通りだとしたら、該当船舶が運んでいるのは下手すると外装パーツと武装だけってことか?」

 「はい、その可能性もありますな。補充用の外装パーツや武装類は民生品に偽装し、予め攻撃対象の惑星やコロニーに運び込んでおくだけで準備は済みます。民間船舶を利用した母船は、現地で改造を行う者達とパーツ類を目的地へとただ運ぶだけ。後は、取材活動や人道支援活動の合間に予備品の補充と並行して組み立てを行い、表の活動終了後に置き土産として現地に兵器を投入すれば準備完了ですな」

 「……」


 あくまで、ドクターが述べたのは今ある情報を基にした推測でしかない。実際に、現地調達を増やせば増やすほど上手く行かなくなるリスクが上がるからな。なので、機体そのものは事前に船内に準備してあると考えた方が普通だろう。


 ……でも、事前の送り込みと現地調達で出来るのならば、民間船舶云々って考え方自体が間違えなんじゃないか? わざわざ、乗船している民間人に何かの拍子に見つかるかもしれないリスクを犯すだろうか? んー、混乱してきた。情報が少なすぎて、決め手に欠けるな。


 「……一馬さん。ドクターの考えですと、通商破壊戦の影響への考慮が欠けているかと。現地調達の場合、物資が途中で失われている可能性があります。現状では、惑星間やコロニー間での物資の安定輸送率はかなり低下しています。現地で予備品を受け取れるかどうかあやふやな状況で、今回の事態を裏で手を引いている者達が実行を指示するとは思えません」

 「確かに、ソフィーの言う通りだろう。だがそうなると虐殺が行われている間、該当船舶がコロニーに入港し続けていた事になるぞ? 流石に、それだけの騒ぎで誰も気が付かない事など無いと思うがな」


 ソフィーの言う様に、予め必要な外装パーツや兵装類を現地に送る場合、途中で失われる可能性が高くなる。そうなると、やはりベースの機体は現地調達にせよ外装パーツなんかは積荷として隠し持っている方が無難だよな。でも、今度はどうやって回収するかって話になる。


 サウサンが言う様に、虐殺が終わるまで民間船舶が現地のコロニーに留まるってのはリスクだ。コロニー内部から何らかの情報が送られるかもしれないし、船内の誰かがその光景を目撃してしまうリスクもある。民間船に乗っている全ての人間が協力者でも無い限り、リスクが多すぎるだろ。


 「……いえ、条件さえ揃えばいけるかもしれませんわ? 情報を見る限り今回のコロニーは完全閉鎖型のコロニーですから、宙は勿論のこと港からでも内部の様子を窺う事は不可能。後は、コロニー側と船舶側の通信システムを理由を付けて協力者達が抑えてしまえば、情報の流出は阻止出来ますわ。僻地のコロニーともなれば、港の管理者の人数など限られてますもの。下手すれば、銃1つで制圧完了ですわ」

 「通信関連を全て抑え、港へと通じる道を擬きか爆発物等で遮断すれば、住民は逃げ道を失う。後は虐殺を実行するだけか。コロニー内部での小規模の爆発程度ならば、港の設計上は衝撃も伝わってはこない。そこまで計算した上で実行したとなると厄介だぞ、これは?」

 「何も知らぬ者達は、見えない壁の向こうで虐殺が行われている事など知る由も無くですな」


 宙に浮かぶ外部からはうかがい知れぬ閉鎖型のコロニー。あらゆる通信を遮断し、入港しているのに何も伝わらない状況にしてしまえば、気が付く者も居ないと。これが事実だとしたら、かなり入念にシミュレーションを繰り返したのは間違いないだろうな。僅かな狂いでも、全てが水の泡になる可能性が高い。


 「やり方がある事は分かった。でも、あの映像は日中に撮られたものだ。どうやって、活動時間である日中に、無関係の人間を船内に押し込めておく?」

 「一馬さん。それは簡単です。港内で装置の不具合による空気漏れが発生したとでも伝えれば、誰も船から降りて来ません。大規模なテロでも起きたというなら未だしも、ただの故障の類ならコロニーでは日常茶飯事ですから大した騒ぎにもなりません。予め、修理の手伝いに人員を送ったとでも言っておけばそれで終いです」

 「その人員も、事態を外に漏らさない為の工作員なら四方丸く収まって万々歳って事か」

 「カズマ。これまでの話はおくまでも限りある情報内での我々の予測に過ぎん。だが、これらが大方事実であった場合、敵は入念に計画してこれらを実行に移している。恐らく、既に次も起こっているか起こる間際だと思うぞ」


 ……クソったれ。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] 「あのバカ」氏が言ってた一部は、これかな?
[気になる点] もしかして、胸くそ悪いテロに対してカズマさん専用機で突っ込んじゃう!? ドキドキ( 。゜Д゜。) [一言] にゃ~ん♪  ∧∧ (・∀・) c( ∪∪ )
[一言] 人権屋の資金源が裏社会やテロ国家で、工作機関のお先棒担ぎなんて現実にもある・・・ ん?電話だ。
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