1-3:オッサン、説明を受ける②
前回に続き説明回。次回は少し要塞内の様子をお伝えします。
それから、本作へご評価を頂きありがとうございます。
執筆の励みとさせて頂きます。
「それでは、各項目についてご説明しますので、1つ前の画面へと戻って下さい」
「えっと、これかな」
画面左下にある左向けの矢印をタッチすると、先ほどまで見ていた6個の項目が並んだ画面へと戻った。
「では、最初に開発の項目を開いて下さい」
「了解」
開発の項目にタッチすると、画面が切り替わり2つの項目が出現した。艦艇と兵器か。
「艦艇と兵器の項目が表示されているかと思いますので、まずは艦艇の項目を開いて下さい」
「艦艇と……」
画面が切り替わり表示されたのは、いわゆる開発ツリーと呼ばれる物の様だ。基本は上から下へ、或いは左から右へと条件を達成する事で、より強力な艦艇が開発可能になるヤツだな。一番上に記載されているのは、艦艇の艦種か。左から駆逐艦、巡洋艦、戦艦、空母、潜航艦の5種。更に繋がりの無い別系統にだが、輸送艦、補給艦、工作艦、揚陸艦の4種がある。戦闘メインの艦艇と、支援メインの艦艇が別系統の開発ツリーになる様だ。現時点では、初期の駆逐艦が建造可能となっている様だ。
「各種艦艇の説明をしますか?」
「そうだね。お願いするよ」
一応、何となくは知っている心算だが、宇宙では役割が変化している場合もあるな。後で、知らなかったでは済まないだろうし。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥って言う位だ。
「では、最初は駆逐艦です。駆逐艦は小型の艦艇ですが、機動性及び旋回性が非常に高く、搭載された強力な対艦魚雷を用いた一撃離脱戦法を得意とする艦艇です。一方で、それ以外の兵装は最低限の自衛用のみとなりますので、カバーする為に複数隻での同時運用が前提となる艦艇となります。建造する際はご注意下さい」
「駆逐艦って、やはり防御の面では弱いのかな?」
「そうですね。他の艦種に比べて打たれ強いとは言い難いかと。ただ、小型な分、回避能力は高いですし、被弾面積も小さいので狙いづらい艦艇ではあります」
「なるほど」
機動性で相手を翻弄しつつ、最大火力を放り込んで即時離脱すると。開発ツリーから考えると、この駆逐艦を複数隻揃える事から始まるのだろうか。
「次は、巡洋艦です。この艦艇は他の艦艇と比べて求められる役割が多いのが特徴となります。艦艇としては、駆逐艦より一回り程は大きい船体に中火力の主砲を搭載。それに加えて対艦魚雷、対潜爆雷、対空砲を装備した様々な戦況に対応する能力が与えられています。他にも、他の艦艇と比べて強力なレーダーを搭載しており、艦隊の目としての役割が有ります。後は複数隻の駆逐艦から構成される、小規模~中規模の艦隊を率いる旗艦としての役割も与えられていますね」
「駆逐艦では潜航艦とは戦えないのかな?」
「そうですね。駆逐艦は船体が小型の為に、索敵用のレーダーも近距離の物しか搭載出来ておりませんし、対潜爆雷を搭載するスペースも無いので、兵装搭載スペースに余裕のある巡洋艦が対潜攻撃を担う形になっています」
「なるほど」
駆逐艦は対艦攻撃に特化した艦艇で、巡洋艦は万能型の艦艇と言う事か。巡洋艦がいない状況で潜航艦と遭遇したら、逃げの一手しか打てなくなるのが痛いな。開発ツリーを進めて巡洋艦は早めに手に入れておきたい。
「では、次の戦艦です。戦艦は、艦隊における単艦としては最大火力を誇る艦艇となります。強力な主砲を始めとした各種搭載兵装は、何れも敵艦隊へと多大なダメージを与える物となります。一方で、船体が大型の為に、機動性は低く、回避能力も高くありません。ですが、厚い装甲で覆われているので簡単には撃沈されません」
「戦艦って、駆逐艦の最大の標的になるのかな?」
「戦艦と、この後で説明する空母が標的になる事が多いですね。どちらも戦況に大きな影響を与える艦艇ですので、最優先目標にされます」
「配置する場所と、投入するタイミングが重要か」
「はい。少なくとも戦艦や空母を単艦で運用するのは愚策となりますので、ご留意下さい」
「肝に銘じておくよ」
どう考えたって、戦艦1隻の建造コストは駆逐艦や巡洋艦の比じゃないもんな。何も出来ずに沈められたら、マジで笑えない事態になるのは確定だよ。まぁ、だからと言って後生大事にした結果、大した戦果も挙げられないじゃ話にならないけどさ。
「一先ず、次の空母と潜航艦で艦艇の説明は終わります。残りの艦艇に関しては開発が可能になってから改めてご説明します」
「開発が可能になったらって事は、何か条件が有るって事か」
「はい。それをお教えする事は出来ませんが、何れ自然に解放されますので、ご安心下さい」
「分かった。それじゃ、空母の説明をお願いするね」
「それでは、空母の説明を。空母は戦艦を上回る大きさの船体となっていますが、他の戦闘艦艇と異なり、最低限の自衛兵装以外は攻撃能力を保有しておりません。それを補うのが、艦載機と呼ばれる兵器になります。空母に搭載される艦載機は大きく分けて2種類。航宙兵器と機動兵器となります。それぞれの詳細は後日、兵器の項目を説明する際にお教えしますので、今は艦載機での攻撃に特化した艦艇とだけ覚えていて下さい」
この辺は、俺の知っている空母と同じみたいだな。後は、航宙兵器と機動兵器ってのが何かって事だな。航宙兵器ってのは、何となく戦闘機とかの宇宙版かなと思うが、機動兵器って何かね? アニメとかに出てくるロボットとかの事だろうか? だとしたら、オッサン大興奮なんだけどな。モ〇ルスーツとか男なら誰だって一度は憧れると思う、多分。
「次に潜航艦ですが、これの艦艇は特殊な運用形態となります。潜航艦は、宇宙空間に存在する空間の隙間へ潜り航行します。空間の隙間内部は外から艦艇のレーダーでは探知が出来ませんので、潜航中の潜航艦を発見する事は事実上不可能です。ですが、空間の隙間への出入口を作成する際に発生するシグナルはレーダーで探知出来ますので、それらを発見し次第即座に爆雷を投下するのが一般的な対処法ですね」
「隙間から出てきた所を砲撃するのではダメなのかな?」
「勿論、間に合わなければ砲撃も行いますが、爆雷は潜航艦同様に空間の隙間へ入り込めるので、有効性が高くなります」
「なるほどね」
空間の隙間ってのを海中だとすれば、攻撃手段は爆雷なり対潜魚雷なりになるわな。少なくとも砲撃は潜航艦が通常空間上に浮上してなければ効果は無いだろう。元の世界だとソナーとか有ったけど、空間の隙間には有効な手段が無いのが現状なのか。潜航艦、味方としては心強いけれども、敵だとかなり厄介な存在になりそうだな。
「艦艇の簡単な説明は以上となります。同様の内容が、生産の項目内にある情報の項目に有りますので、時間がある際に是非ご確認下さい」
「ありがとう。後で確認してみるよ」
「では、早速ですが艦艇の建造を行いましょう。前の画面に戻り、生産の項目をタッチして下さい」
「了解」
生産の項目を開くと、画面が切り替わり艦艇と兵器の2項目が画面上に表示される。これは開発と同じだな。
「艦艇の建造は艦艇の項目を開いて頂くと、現時点で建造可能な艦種及び艦艇のみが表示されます。香月司令官の場合、着任したばかりですので、アスローン級駆逐艦が表示されているかと思いますが、如何でしょうか?」
「アスローン級。確かに表示されていますね」
「では、タッチしてみて下さい。画面が切り替わりますので」
「……変わったね」
タッチによってポップアップ画面が立ち上がり、建造する隻数や、割当ドックの指定項目が表示された。
「建造する際に、要塞内で生産されている各種資源を消費します。資源については要塞の項目をご説明する際にお伝えしますので、今は私の指示通りに建造をお願いします」
「了解」
「建造数は左右の矢印で増減出来ます。建造を割り当てるドックについては、項目をタッチすると現在空いているドックの一覧が表示されます。取り合えず、建造数を2隻、ドックは1番と2番をそれぞれ指定して建造指示を出して下さい」
「2隻……、1番と2番と。これで良いのかな?」
「……はい。問題ありませんので、右下の建造開始ボタンをタッチして下さい。建造が開始されます」
「……押した」
端末上で全部完了するってのは、やはりゲームだなと思う。まぁ、実際には要塞の何処かにあるドックで建造されているから、端末上だけで完了している訳では無いけどね。建造か……、実際に見てみたいな。
「ソフィー。建造の様子を見る事は可能なのかな?」
「可能です。ただ、建造終了まで24時間は掛かりますので、今ドックに行った所で特に見る物は無いと思いますよ?」
「24時間⁉ そんな短時間で2隻も完成するの⁉」
「完全機械化された自動生産ラインでの建造となりますので、駆逐艦ならこの程度の時間で完成します。しかし、大型艦になるほど相応の時間が掛かる様になります。ですが、ドックの施設レベルを上げる事で建造に掛かる時間を多少は減らす事も出来ますので安心して下さい」
履いてます。ただ言いたかった。
「香月司令官。説明続きになるのも何ですから、少し要塞内を案内がてら散策されますか?」
「是非!」
「ふふっ。では、参りましょうか」
気分転換は大事だ。要塞とか、男として燃える要素多そうだしな。是非、見て回りたい。
決して、美人の補佐官と2人で歩きたいというオッサンの痛い願望からでは無い。決して無い。
お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに。
※アスローン級駆逐艦建造時間を12時間→24時間に変更