5.5-19:変革の足音⑲
1話丸々、艦隊名考えるのに使うバカな作者がいるそうで。
※お礼※
いつも、誤字報告ありがとうございます。助かります。
※お知らせ※
本話を持ちまして、第5.5章『変革の足音』は完結となります。
次話より、第6章『大国の終焉・中』をお送りします。
引き続き、本作をよろしくお願いいたします。
例のバカこと管理者の襲撃から数日が経過した。気が付けば9月も中旬に入り、要塞内では今日も戦力増強が続いている。その傍ら、サウサンから上がってくる各地の状況に目を通している訳だが、特に目に付く様な出来事は起きていない。そもそも、何か大きな事件なりが起これば真っ先にサウサンが自ら報告に来るだろうしな。
「……」
気にし過ぎても仕方が無いので、バカの忠告を頭の片隅に追いやる為に目の前の事に集中する。まぁ、集中するって言っても新しい艦隊の名称を考えるってだけなんだがね。現在、要塞では固有の名称を持つ艦隊が全部で6個存在している。
オッサンの直掩艦隊を務める『ダグザ艦隊』と『ヌアザ艦隊』。
要塞主戦力となる『ファリアス艦隊』、『フィンジアス艦隊』、『ゴリアス艦隊』、『ムリアス艦隊』。
で、現在これらの艦隊と同規模の戦力を保有する艦隊が3個分建造及び編成済みとなっている。今回は、それらに固有の名称を与えるのがオッサンのお仕事な訳だ。これまでの艦隊では、ケルト神話からその名を頂戴していた訳だが、今回はどうするか。毎回、同じだと芸が無いしな。
「神話に、星座。数字に、曜日。季節に、気象。色に、形。地名に、国名。人物に、動植物と……」
名前を頂戴する候補は大いに存在する。星座なら、12個艦隊分の名称が直ぐに決まるな。ただ、正直これらの名称は色々な作品とかで使われていて安直な感じが否めない。いや、それを言ったら神話もそうなんだけどね。……まぁ、あの時は若かったってことで。
数字となると、各言語ごとに色々と個性は出るものの意味を考えると微妙になってしまうのが痛いかな。ツヴァイ艦隊とか、一見すると格好良くも見えるが、単に2番目の艦隊って意味にしかならんし。ドイツ語以外の言語でも同様だろう。これは却下。
曜日は言わずもがなと言うか。月曜日艦隊とか、朝起きるのが辛い感じがして嫌だ。日曜日艦隊も、明日から仕事かって感じがして嫌だし。敢えて嬉しいのは、金曜日艦隊だろうか? まぁシフト制の仕事をしている人達からすれば、そもそも受け止め方が変わる訳だが。これも却下だな。
季節もどうだろうか。春艦隊とか夏艦隊。んー、何か違う。
気象はどうか。パッと思い付くのは、モンスーン艦隊とか、ハリケーン艦隊とか、タイフーン艦隊あたりだろうか。タイフーンとか、元いた世界では兵器の名前とかに使われていた筈。候補としてはありだけど、割とポピュラーなのが判断に悩むところかな。
後は、色や形、地名に国名、人物に動植物か。赤い艦隊は3倍速くなりそうだが、それはそれでどうなのか。ペンタゴン艦隊? 日本艦隊? 信長艦隊? どれも何て言うか微妙だ。別に悪い訳では無いのだけども、響くものが無い。
後は、何があるか。四元素、五行説、精霊、悪霊、天使、悪魔、方位、シンボル、タロット。
「意外と悩むな」
入れてからテーブルに置いたままだった為に、すっかりと冷めてしまったコーヒーを口に運ぶ。コーヒーの原木や豆の産地・品種とかはどうだろうか? 原木ならばアラビカ艦隊、ロブスタ艦隊、リベリカ艦隊。産地は国名だから外すとして、品種ならキリマンジャロ艦隊とかマンデリン艦隊、ブルー・マウンテン艦隊とかになるな。どーなんだコレ? 良いのか悪いのか、判断がつかん。
後は、十二天将(神将)とかも有名どころだよな。確か十二支や季節、方角なんかもそれぞれに定められていた筈。貴人艦隊とか、六合艦隊とかだな。でも、この辺も割かし定番だと言われるとそれまでっていうね。名付けって本当に難しいわ。
後は、元いた世界だと太平洋艦隊とか大西洋艦隊みたいな、海の名を冠した艦隊も複数の国で存在していたか。ただ、宙で海の名を冠した艦隊ってのはどうなのか。この宙から見たら、元いた世界の海なんて、ぶっちゃけ水溜まりレベルだしな。広い宙を駆ける艦隊の名にそれではあんまりだろう。
「んー、後は個人的な趣味の方向で何か……」
良くやっていたゲームに出てくる名称とか、部隊名とか。機体名や愛称。コードネームやタッグネーム。厨二心を擽る二つ名もあるな。候補はかなりの数に上るが、どれも元の印象が強くてな。自分が指揮する艦隊の名前としてはどうなのかって所が引っ掛かるが。でも、方向性としてはそっちの方がしっくり来そうではある。
「……待てよ?」
ゴースト(死霊)、ファントム(幻霊)、スペクター(亡霊)、レイス(生霊)。これらに加えて、教導艦隊としてレクエイム(鎮魂歌)なんてどうだろうか。……うん、完全に厨二入ってるな。個人的には好きだけど、流石に良い歳してこれは恥ずかしい。
……駄目だな。完全に思考が纏まらん。アレもコレも考えている内に、自ら終わりの無い罠に嵌った感じだわ。全てをリセットして、もっとシンプルに思考を纏めて……。
「……モルフェッサ、ウスキアス、エスラス、セミアス」
原点に戻って、既存の艦隊名と統一性のある名前を記憶から呼び起こす。都市の名と、そこに暮らすドルイドの名。これならば、艦隊名として統一性は確保出来るな。咄嗟にその名が出てくるかは別の問題だが。
うん。迷走しながら1周回って、どうにか良い感じに軟着陸した様だ。とは言え、既に3艦隊は編成まで完了しているし、次の艦隊も何時でも建造に入れる段階にはある。そう遠くない将来にまた名付けで悩むことになりそうだ。
「……良し。戦闘AI! 編成済みの仮称X-1艦隊を『モルフェッサ艦隊』。仮称X-2艦隊を『ウスキアス艦隊』。仮称X-3艦隊を『エスラス艦隊』とする。なお、今後建造が予定される仮称X-4艦隊には『セミアス艦隊』の名を与える。良いな?」
『……了解しました、香月司令官。識別コード設定、……完。認証コード設定、……完。データベース更新、……完。新たなる力の誕生を、祝福致します』
こうして、新たなる艦隊が我らがランドロッサ要塞に加わった。今後、ますます厳しさを増すであろう戦いを前に、オッサンは1人激戦を終えたのであった。いや、マジで疲れた。
お読みいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに!