5.5-14:変革の靴音⑭
その頃、要塞ではこんな事があった的なお話。
2週空いちゃって申し訳ない。どうにも、筆が進まず……。
1度、吹っ切れてしまうと色々と物事は進む様になるもので。軍拡じゃーとばかりに、各種生産プラントを1段階強化(金属・推進剤2億480万/日、非金属・弾薬5,120万/日)、建造ドック・修理ドックも2段階強化(262,144隻/同時)、生産ラインも2段階強化(8,192ライン)そして軍港もそれに合わせて1段階強化(1,638,400隻)した。
普通に考えたら、廃棄された資源衛星に収まる規模では無いのだがその辺は摩訶不思議パワーとでも言っておこう。いや、本当に外から見たら絶対に有り得ない規模に内部がなってるから。まぁ、空間拡張技術がなんちゃらって話らしい。
さて、与太話はその辺にしてだ。半ば、勢いで215システムポイント(残929SP)もの消費となったが、問題は無い。それに見合うだけの戦力強化に繋がるからな。これから、益々戦闘行為は増え失われる艦も出る。やると決めたからには、徹底的にやるしかない。その為には、ここ等で一気に戦力を増やしておく必要がある。
「……それにしても、流石はサウサンと言うべきか」
迷いが吹っ切れたオッサンにサウサンが提示してきたのは、コールマフ連邦に属する惑星やコロニー群の中でも辺境に位置するそれらに対しての軽度な示威行為だった。固有の名称を持つ艦隊を1つと、幾つかの通商破壊艦隊、機雷敷設艦、そしてミディール改を搭載した潜航艦部隊による侵攻作戦だ。
侵攻作戦とは言っているものの、実際に武力を持ってそれらの惑星やコロニーを文字通り制圧する訳ではない。通信を遮断して孤立化させ、更に、宙域には新造の敷設艦で機雷を大量に敷設。後は艦隊と通商破壊艦隊で、周辺宙域を封鎖。〆に、潜航艦部隊がミディール隊を地上へとばら撒けば終わりだ。
何れの惑星やコロニーも治安維持部隊に毛が生えた程度の戦力しか持ちえない以上、此方の戦力が展開した後は形式的に対峙して見せる以外には何も出来ないとサウサンは言い切った。実際のところ、例え相手が治安維持部隊程度の戦力だろうと、ミディール1個大隊強だけでは潰すだけで一苦労なのだが。
あくまで、こちらの狙いはある種の膠着状態を創り出すことだけだ。大勢に影響を与えない程度の戦力で彼らを制し、連邦中央から孤立させる。制圧して支配下に置いてしまえば、それを管理する義務が生じるからな。あくまで、中央との繋がりを絶つだけだ。なので、自分達の生活は自分でどうにかしろってことだな。
そんなことがあり、8月後半は戦力強化に勤しみ、月が変わった9月頭に惑星『ボルクータ』を始めとした辺境の惑星やコロニーに対する、軽度な示威行為を目的とした侵攻作戦が開始されたのだった。まぁ、結果は火を見るよりも明らかだったのは言うまでも無い。
ドクター謹製の通信遮断装置は遺憾無くその性能を発揮し、次々と惑星やコロニーを情報から切り離していった。後は、敵艦隊を相手にする時と同様に電子戦によって相手の電子的な目と耳を奪い、悠々と予定通りに事を進めるだけだった。
まぁ、侵攻作戦に関しては立案者であるサウサンと補佐役のドクターがメインで戦況を監督しているから、オッサンは司令室でその報告書に目を通すだけなんだけどさ。今も、2人はサウサンの根城でとても悪い笑顔を浮かべている事だろうさ。南無。
通商破壊戦も無制限という形で再開され、それに続く侵攻作戦も現在の所は順調に推移している。こちらの手札となる戦力を順調に増強されている。主力艦隊だけで、60万隻を超えたからな。これだけの隻数があれば通商破壊艦隊で出ている損害程度なんぞ屁でも無いと、デカい口を何時か叩けたら良いなー。
「順調の様ですね」
「ソフィー」
下らない事をダラダラと司令室で考えていたら、ソフィーが入ってきた。ここ何日か要塞内の事で色々と忙しそうにしていたが、表情を見るに落ち着いた様でなにより。
「私も居ますわ!」
「シャンインも私も、仕事が一段落しましたので、一馬さんとお茶でもと思いまして」
「なるほど。なら、ミーティングルームへいこうか」
何だかんだ、ここ暫くは各々がバタバタとしていて、ソフィー達ともゆっくり話をする機会が取れてなかったからな。可能な範囲で合わせていた食事の時間すらも、微妙にズレ気味だったしね。
「さっ、行きましょう。一馬様!」
「はい、はい。あんまり背中を押すなよー」
「ふふっ。シャンインも何時も以上に楽しそうね?」
「何だかんだ、外交はストレスが溜まりますの! 本っ当に欲の皮が分厚い下衆が多くて嫌になりますわ」
「まぁ、その辺の愚痴も聞かせてくれ。こちらで出来る事があるかもしれないしね」
「お願いしますわ!」
「……ですから、私は言ってやったんですの! って、聞いていますの、一馬様!?」
「30分前の俺を止めてやりたい」
「一馬さん。気持ちは分かりますが、それは流石に……」
あれから、ミーティングルームに移ってお茶会となったのだが。開始冒頭から今の今までずっとシャンインの愚痴が止まらない。いや、マジで止まらない。目にも留まらぬ速さで、紅茶とお茶菓子を口に運びつつも、愚痴がマジで止まらない。
ガルメデアコロニーやフォラフ自治国家、ボルジア共和国にワルシャス帝国。更には、中立的な大小様々な組織やら何やらからのコンタクトが、ウチで唯一の外交窓口であるシャンインの所へと集中している訳だ。当然、中には色々と彼女からみて癇に障る人間もいるだろう。流石に、その相手を殴る訳にもいかないしな……。
例え、その手の連中相手だとしても、彼女は笑みを浮かべて相対しなくてはならない。ランドロッサ陣営の名を背負っている以上、相手に付け入る隙を与える訳にはいかないからな。此方の意図を説明し、納得はせずとも理解はさせなくてはならない。
外交活動ってのは、おざなりにすると後々に大きく響いてくるから本当に面倒なんだよな。その重圧を一身に背負わせてしまっている彼女には本当に頭があがらない。なので、愚痴の1つや2つなら喜んで聞くのだが……。
30分ノンストップは流石にキツイです。本当にごめんなさい。
お読みいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに!