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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第1章:歴史の始まり
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1-29:戦後処理③

皆様、台風の被害は大丈夫だったでしょうか?

各地で大きな被害が出ており、日常に戻るまで、今しばらく時間が掛かる方も多いかと思います。

拙作では有りますが、皆様の日々の気晴らしになれば幸いです。



※ローガン中佐の名前が、1-24ではマイラス・ローガン、1-28ではタロ・ローガンになっていたので、後者に統一しました。前者は修正してあります。話の展開に特に変化はありません。

 「さて、続いては鹵獲した共和国軍の艦艇についてですね」

 『補給艦と駆逐艦2隻を此方が貰うと言う話だったかな?』

 「そうですね。それに加えて、コロニー周辺に浮遊している小規模な残骸も其方で回収して下さい。ぶっちゃけ、此処まで曳航する事を考えると相応の大きさの物で無いと効率が悪いので」

 『では、境界付近の物に関しては適宜協議という形で良いだろうか?』

 「此方としては、問題有りません」

 『では、その様に手配しよう』


 次に議題となったのは、降伏した共和国側の艦艇について。実際には、昨晩の内に話は付いているので再確認って程度でしかないな。一応、微妙なサイズの残骸についての線引きが曖昧だったからハッキリとさせる意味は有ったかな。本来の所有者たる共和国軍人達を外野に勝手に取り分を決める我々に対して、マルコイ大尉がまたイライラとしているが、無視しよう。艦隊側のコサック少佐も気持ち、不快感を見せているか。まぁ、負けたとは言えこの様な形で自分達の母艦を失う訳だし、決して良い気分では無いだろうな。


 「海兵隊の使用していた支援戦闘車はどうします?」

 『出来れば、此方で貰いたいのだがね?』

 「残っているのは6両でしたっけ?」

 『そうだ。もし其方で必要と言うならば、割当数の協議が必要だな』


 支援戦闘車か。どうだろうか? 確かに、現状ではうちの要塞に陸上戦力ってのは存在しないんだよな。要塞内では必要ないかな。流石に移動用に使うってのは無駄だろうしな。


 「司令官様。現状では我々に不要かと思いますわ? 資源にはなりますけれども」

 「うーん、規格外の兵器を取り入れるのもリスクだな」

 「それも、そうですわね」


 そんな事で、海兵隊の使用していた支援戦闘車は残り全てコロニー側にプレゼントする事にした。まぁ、要塞まで運んでくるのも面倒だしな。折角なので、彼らに有効活用して貰おう。


 「では、支援戦闘車はコロニー側で有効活用して下さい」

 『感謝する。その分、約束の資源(・・)については配慮しよう』

 「それは、助かります」


 艦砲射撃の的になった昇天した、連絡通路再建の為の資源援助。それを少しだけ減らしてくれるって事だろう。実質、そっちの方が此方としては助かるから良い取引だと言えるだろう。


 「話が出た所で、ついでにそっちも決めておきますか?」

 『ふむ、此方に異存は無い。シザーズ、後は頼む』

 『分かりました。それでは、香月司令官さん。改めて宜しくお願いしますね?』

 「此方こそ」


 要塞から拠出する資源についての交渉と言う事で、サントスからシザーズへとバトンタッチされた。さて、学者さんぽいけど、どうなんだろうか? まぁ、1つの部門を預かっている以上、曲者なんだろうけどさ。お手柔らかにお願いします。


 『さて、早速ですが連絡通路2ブロック分ですので……、3000tと言った所ですかね』

 「多くね!?」

 『2ブロックで500m程になりますし、妥当な数値だと思いますが?』

 「艦艇の残骸も回収出来るし、支援戦闘車の分も有るだろ? 2500だな」

 『言いますね。では、2900では?』

 「もう一声いこうぜ? 2650」

 『新米司令官と聞いていましたが、中々強情な方の様だ。では2750で』


 強情って評価はそっくりそのままお返しするよ、シザーズさん。向こうから見えない位置で、シャンインがあの規模なら2700が限度ですわって端末画面上で意思表示しているよ。俺としても必要以上の資材拠出は避けたいしな。


 「2675。これ以上は譲歩しない」

 『刻みますね。では、2700で。此方としては、これ以上の譲歩は出来ませんね』

 「じゃ、交渉決裂って事で」

 『……』


 さて、どう出るかな? 笑顔を浮かべて此方を見つめるシザーズさん。こっちも笑みを浮かべて見つめ返す。先に視線を逸らした方が負けってゲームを勝手に始めてやろうじゃないか。こう見えても、オッサンは視線合わせゲームでは強いぜ?


 『やれやれ、お噂通り喰えない方ですね。良いでしょう、2600で手を打ちます』

 「それはどうも。お礼に駆逐艦2隻は損傷の少ない艦を提供しますよ」

 『良いのか? 此方としては、ありがたいが……』


 相手が予定より下げてきたので、ここ等で此方も手札を切っておこう。本当は後の交渉に残しておいた方が有利なのだろうが、構わない。それにしても、サントスが妙に食いついてくるな。そんなに意外な提案だろうか?


 「今後の付き合いも考えて、必要経費ってヤツですよ」

 『ふっ。そう言う事にしておこう』

 「さて、大方はこの辺ですかね?」

 『そうだな。捕虜の待遇、艦艇や兵器の配分割当、連絡通路の再建資材。後は、他の参加者から何か有るか?』


 取り合えず、俺としてはコロニー側と交渉すべき事は凡そ終わった感じだろうか。後は、他の参加者達の反応次第だな。おっと、手を挙げたのはナターシャ嬢か。でも、彼女はオブザーバー枠だからな。何かを要求出来る立場には無いのだが。アイザフ大佐も慌ててるしな。さて、どの様な話だろうか?


 「ナターシャ嬢。貴女はあくまでオブザーバーの立場。何かを要求出来る立場には在りませんよ?」

 『それは分かっております、香月司令官様。ですが、提案する事は許されるのではないでしょうか?』

 「提案ですか……」


 提案ね。一体、ナターシャ嬢はこの場において何を言い出すのやら。共和国の軍人もいる中で、下手な事を言い出されても困るんだがね。


 「一応、聞きましょう。ただし、下手な期待は持たないで頂きたい」

 『それは勿論、分かっております。……皆様、今回の戦闘で亡くなった全ての方々の鎮魂の為に、追悼する機会を用意しませんか?』

 「……」

 『……』

 『……』


 多分、この協議の場にいる全ての人間の胸中にあったのは驚きだろう。彼女を護衛し、この辺境の地までやってきたアイザフ大佐。それを追跡し捕縛する為に派遣された共和国の艦隊と海兵隊の臨時指揮官達。逃避行の最中に偶発的に邂逅し、結果的に介入を決めた俺達。逃亡中の彼女を受け入れ、潜伏する為の場所を用意していたコロニー側の重鎮達。誰もが、彼女の言葉に二の句を失った。それ程に、彼女の提案はこの場の誰にとっても予想外だったのだ。


 「参ったね。まさか、ナターシャ嬢からその様な提案が出るとは……。良いだろう、ランドロッサ要塞の司令官として、ナターシャ嬢の提案に賛同しよう」

 『ふむ。コロニー側としても異論は無い。若い彼女の提案に、大人である我々が難癖付けるなど有り得んよ』

 『……共和国軍を代表して感謝を。本来ならば、我々はその様な配慮を受けられる立場には無いのだからな』

 『良かった。皆様、ありがとうございます』


 そう言って、俺達に頭を下げるナターシャ嬢。やれやれ、追われて逃亡している人間とはとても思えない。あのマルコイ大尉ですら、呆気に取られている位だからな。いやいや、面白いじゃないの。


 「さて、ナターシャ嬢から素晴らしい提案も有った事ですし、ここらで一旦は休憩としませんか?」

 『そうだな。協議忘れが無いか、再確認する時間も必要だろう。コロニー側に異論は無い』

 『共和国側にも異論は無い』

 「では、そうですね。2時間後に再度此方から通信を繋ぎますので、集まって頂けますか?」

 『では、後ほど』

 『了解した。では』


 コロニー及び共和国側との通信が切断される。残ったのはナターシャ嬢達、フォラフ自治国家組だな。ちなみに、ナターシャ嬢はコロニーへと戻ったディーシー号の船内から参加している。


 「さて、ナターシャ嬢。先ほどは素晴らしい提案をありがとうございました。お陰で共和国側もだいぶ態度が軟化した様に感じます」

 『いえ、私はただ思った事を言ったまでですので。むしろ、オブザーバーで在りながら口出しをしてしまい、申し訳ございませんでした』

 「謝罪の必要はありませんよ。あの場で誰も思い付かなかった事を提案してくれた。皆、貴女に感謝していますから」

 『そう、でしょうか?』

 「えぇ。そうですよ」


 彼女の背後に映っているアイザフ大佐達も、頻りに頷いている。間違いなく、彼女はあの提案で協議に参加している全員の心を掴んだ。まぁ、共和国側は内心複雑だろうとは思うけどね。でも、戦死した戦友達の為に行われる鎮魂の場を、態々ぶち壊す様な愚行はしないだろうさ。それだけは、オッサンでも確信出来る。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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