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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第5.5章『変革の靴音』
288/336

5.5-10:変革の靴音⑩

どうにか、年内に投降出来た。

次は、年明けとなります。


本年も本作をお読みいただきありがとうございました。

皆様、良いお年をお迎えください。

 色々と吹っ切れたミーティングの後、ドクターのラボへ足を運んでいた。何でも、依頼していた爆雷敷設艦が正式に完成したとの事。以前から実施していた先行量産型での試験が全て完了し、これで正式に実戦配備仕様の量産型建造へと移行出来ることとなった。無制限通商破壊戦への移行を決断した直後という何とも絶妙なタイミングに思うところが無い訳ではなかったが、使える手札が増えたことを純粋に喜ぶべきだろう。そもそも、頼んだのは自分だしな。


 「先ずは、トラリー級輸送艦をベースに開発していたウェイモント級敷設艦ですな。各種運用テストを加味し、思考爆雷ならば1,000基、機動爆雷ならば650機まで搭載が可能となっております。輸送艦がベース故に最低限の自衛兵装のみとなっておりますので、敷設任務の際は護衛の艦隊が必要となります」


以前から、ドクターには機雷敷設艦の開発を依頼していた。暫く前に先行量産型がロールアウトし、各種試験を繰り返していたが、それが漸く完全なる形として日の目を見ることとなった。トラリー級輸送艦をベースに開発された、ウェイモント級敷設艦。元の輸送艦同様に艦としての戦闘能力は微々たるものだが、元々求められる役割が違うのだから問題はない。


 この艦は、その腹の内に満載した機雷を散布する事に意味がある。宙域や、通商路の閉鎖。追撃してくる敵艦隊への手痛い置き土産。飛び交う砲弾や、魚雷、ミサイルとは異なる役割を持った兵器である爆雷。1度、機雷によって封鎖された宙域を安全にするには、膨大な時間とコストが掛かる。勿論、その過程で犠牲も出るだろう。


 「なるほどね。早速、量産に入らせるよ。やるからには、徹底的にやってやるさ。コールマフ連邦の勢力圏内あらゆる宙域に、機雷源をうみだしてやる」

 「それは吉報ですな。実は、敷設艦の開発に合わせ既存の機雷も改良を施しましてな。思考爆雷に関しては、爆薬の量を増加。それに加えより探知が困難な形状へと改良しております。それから、機動爆雷も同様に爆薬の量を増加。そして、こちらは推進器回りを再設計し速度と旋回性、更に追尾性能も向上させております」

 「流石は、ドクター。敷設艦搭載数の変化は?」

 「何れも、既存の機雷と同数の積載が可能となっております。無論、これからご説明する潜航敷設艦も同等ですぞ」


 どうやら、通常の敷設艦に加えて、潜航艦ベースの敷設艦も開発していた様だ。予想より少しばかり開発完了までの時間が掛かっていたのは、どうやらそれが原因だったのか。依頼した時は気が付いていなかったが、機雷敷設という特性は潜航艦という特殊艦に良く合うものだった。


 「ウェイモント級とほぼ同時に開発を進めましたのが、クロンメル級潜航母艦をベースとしたクログヘイン級潜航敷設艦ですな。船体が大型なだけに、その積載量もウェイモント級の比ではございません。思考爆雷ならば、12,000基。機動爆雷でも、8,000機まで搭載が可能となっております。この艦が1隻展開するだけでも、敵に取ってはさぞ脅威となりましょうぞ」

 「確かに。使い分けとしては、敵陣奥深くはクログヘイン級。勢力圏外周部は、ウェイモント級かな。何れにせよ、機雷の生産を急がせないとな。搭載する機雷がありませんじゃ、意味がないからね」

 「左様。敷設艦としての役割を果たせぬでは、宝の持ち腐れですからな。建造は、機雷の生産状況を見つつで良いかと」


 現状、爆雷の在庫は思考爆雷が1,000に、機動爆雷は140万弱。旧式となるこれらを敷設しつつ、新型の機雷も量産を進めると。取り合えず、10隻位ずつ建造して様子を見てみるかとも思うが、一先ずはサウサンに意見を聞いた方が良さそうだな。適当に機雷をばら撒くより、サウサンの持つ情報を基に散布した方が効果は絶対に高いだろうし。


 「敷設艦と新型機雷に関してはこれ位かな。他に何か報告はある?」

 「そうですな。香月司令官の搭乗されている専用機に関して、少しばかりございます」

 「ラーズグリーズ?」

 「はい。先の戦闘後、ラボで細部まで検査したところ、メインフレームの複数個所で歪みや亀裂が見つかりましてな。詳細に分析した結果、許容値を上回る負荷が掛かっていた事によるものと判明いたしました」

 「あー、それはまた、何とも」

 「どうやら、香月司令官の操縦技量に対し、既に機体が追い付かなくなりつつあるようですな?」


 今の専用機であるラーズグリーズも、ドクター達が心血注いで生み出してくれたワンオフ機。これまでの専用機もそうだけど、幾らなんでも短命過ぎやしませんか? これは、オッサンが悪いんだよ説にワンチャンあるか?


 「次の機体の設計も始めてはおりますが、完成まで暫し時間が掛かりますのでな。現状では、既存の機体の改良でいくしか他に方法がございません」

 「えっと、ご迷惑をお掛けします?」

 「いえいえ、迷惑などと微塵も思ってもおりませんぞ。探究者として、常に進化し続けている香月司令官の専用機開発は、正に己の全てを捧げるに値する職務。こればかりは、下の者に任せきりとはいきませんからな」


 もう少し、機体操縦を大人しくすれば暫くは問題無く持つのだろうけれども、その加減が上手く出来ないんだよな。何て言うか、常に上を先をって感じでついつい悪い癖が出てしまう。なまじ、機体がそれに追従出来ていると感じていただけにひく事を完全に忘れていた訳で。本当に、ドクターには頭があがらない。


 「まぁ、無理の無い範囲で頼むよ。それで、既存の機体の改良はどの方向で?」

 「メインフレームの材質変更。フレーム構築形状の変更。機体フレームの変更。内部構造と配線の配置転換。接合部への新たなダンパーの割入れ。システムの全面的な書き換え。メインスラスターの形状変更と推力増強。複合兵装ユニット結合部の全面的な見直しとその改良。ざっと、この辺りですかな? 後は、複合兵装ユニットにも改良を加えますぞ。他にも何か要望があれば、可能な範囲で対応致しますが、ございますかな?」

 「……イエ。オマカセシマス」

 「さようですか?」


 改良ってレベルじゃない気がするけど、ドクターが改良って言うのだから改良なのだろう。ガワ以外、ほぼ別物になりそうな気もするけど、まぁ彼に任せておけば問題は無いはずだ。少なくとも、マッドな部分はあっても、その作品は極めて真っ当だからな。確か……。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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