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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第5.5章『変革の靴音』
285/336

5.5-7:変革の靴音⑦

再びの要塞サイド。

もうひと月半で、今年も終わりですね。


投稿を始めてから丸2年が過ぎたものの、物語は遅々として進まず。

気長にお付き合いください。


 「サウサン補佐官」

 「ん、何だ?」

 「こちらをご覧ください」

 「ふむ。……これは」

 「複数のルートから同様の情報が上がってきましたので、無差別ルートで再確認を行いましたが、同様の報告が上がって参りました」

 「そうか」


 一馬に提出する最新の分析レポートを纏めている最中に、部下の1人から端末画面を見せられる。そこに表示されている内容は、今後に相応に影響を与える内容だった。複数のルートから同様の情報が得られ、更に他の複数ルートでも確認出来たとなると、ほぼ確定情報と見て良いだろう。


 「全ての情報を私の端末へ。これから、一馬に状況を報告してくる。それから、前線の部隊へ例のプランの延期を指示しておいてくれ」

 「了解しました」

 「それから、関連する情報が更に無いか、専従班を編成し徹底的に分析を進めておいてくれ」

 「はっ! 直ちに、専従班を編成し、情報の分析を開始します」


 指示を復唱し敬礼する部下を横目に、私は自身の城たる分析室を後にする。端末から一馬に時間を空ける様にメッセージを入れると共に、改めて今しがた齎された情報へと目をやる。


 (コールマフ連邦軍、輸送部隊解体か……)


 こちらの想定の枠を大きく飛び超えるような突拍子もない対抗策では無いが、実際に打って出られると些か厄介な手法でもある。これまで進めてきた通商破壊戦の主なターゲットは前線を含めた各地へと戦略物資を輸送する輸送部隊だ。そのついでに、護衛部隊も幾らかは喰っているとは言え微々たるもの。


 輸送部隊を叩く事で、連邦軍の軍需物資輸送に支障を起こし、それを起因とした戦力の分散を誘発する。更に、先の前線拠点攻略以降は情報戦を大きく仕掛け小さな種火を連邦の勢力圏内へとばら撒く一方で、大規模かつ広範囲への同時多発的な襲撃を準備し戦場そのものを大きく書き換える予定だった。


 対連邦戦において、全ての起点が輸送部隊に対する通商破壊戦となる。逆に言ってしまえば、狙うべき輸送部隊が無くなると正面きって殴り合いする回数が雪だるま式に増える事になる。無論、そうなったらそうなったで、一馬とて戦力を更に増強するだろうし狙うべき場所も慎重に決めるだろう。だが、こちらの消耗もかなりのものになるのは避けようがない。


 一応、このまま通商破壊戦を続ける方法はある。但し、それは本戦において掲げる大義名分を大きく損なう事に繋がる悪手に他ならない。まぁ、実態としてはギリギリセーフと言えなくも無いが一馬としては避けるだろう。


 「さて、一馬ならどう切り返すか……」


 一馬の事だ、諦めるなんて選択はまずするまい。何らかの対抗策を、捻り出すだろうさ。……出来れば、私も楽しめる策が良いのだがな。




 「……なるほど。早速、相手も手を打ってきた訳か」

 「そうだ。まぁ、突拍子もない手段では無いが、そのまま例の策を実行する訳にもいかないだろ?」

 「まぁ、そうだな」


 分析室から司令室へと顔を出すと、直ぐに一馬とミーティングを持つ時間を得られた。丁度、少しばかり休憩を取ろうとしていた所らしい。まぁ、これでその休憩も無しになるが状況が状況だけに許せとだけ言ったら苦笑いがかえってきた。


 「連邦軍輸送部隊に所属する全ての艦艇が除籍され、その乗組員達も全員が退役扱い。その上、そっくりそのまま民間企業に譲り渡して、一切合切の軍需物資輸送を業務委託。建前上は、軍の兵站を民間企業が軍に代わって一身に担うという事だけど、その内情は看板をすげ変えただけといって良い」

 「あぁ。例えどの様な姿であろうとも、その実態は軍の輸送部隊と何ら変わらん。だが、今や民間籍(・・・)となった元軍の輸送艦と、経験豊富な軍出身の乗組員達としか言いようが無いのも事実」

 「それらを攻撃すれば、批難されるのは俺達だな。世間的には軍事組織が、民間企業所属の艦艇を攻撃した事になる。当然、正義なんて幻想を対連邦戦の旗印に掲げている俺達にとっては、極めて都合が悪い事態になるのは明白」

 「出来ても精々追い返す程度だが、相手がそれに素直に従う義務はない。無理に停船させようとして接触でもすれば、批難されるのはやはり我々の方だ」


 現状で、手元にある情報を元に話すと、一馬も直ぐに状況を把握した。とは言っても、別に顔色が悪くなったという印象は受けない。どちらかと言えば、事実を淡々と受け止めているだけのようだ。まぁ、表情に出さないだけで内心は相当焦っているのかもしれないが、ここのトップとして今の一馬の姿は個人的に好ましい。


 何時でも余裕をもってなんて馬鹿な事は言わないが、表情をコントロールする術程度は上に立つ者ならば持っていて当然だ。上の者が下の者と同じ目線で物事を見る事は大事なことだが、状況に応じて下の者とは別の温度感を持って貰わなければ困る。


 「何も手を打たなければ、連邦の国力もあって直ぐにでも綻びが出始めていた兵站網は回復するな」

 「……あぁ。ひと月もあれば、ほぼ元通りだろう。多少の問題ならば、どうとでも出来るのが大国の強みだからな」

 「そして、そこから一気に力を貯め始めるか……」

 「無論、連邦の国力を持ってしても1日や2日で終わる内容では当然ながら無い。だが、時間は双方にとって良くも悪くも味方になってしまうのは避けようが無いだろうな?」

 「そうなれば、必然的に相手のホームでの正面切っての殴り合いが避けられないか……」


 さて、どうしたものかと腕を組み思案顔を浮かべつつ、虚空へと視線を流す一馬。その脳裏で、何が浮かび何が消えていくのかは分からん。それが、最善の策となるか次善の策となるか。はたまた、愚策となるか。何れにせよ、我々の歩み道は1つの難所へと差し掛かった。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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