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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第5.5章『変革の靴音』
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5.5-5:変革の靴音⑤

次なら悪魔が……。

 さて、要塞内外の強化は引き続き継続するとしてだ。先の戦いを踏まえて、改めて今後の方針を決めておきたいところだな。勿論、最終的にはコールマフ連邦を下すことが現時点で最大目標になる。で、その為に力の象徴たる軍事力を叩くと決めた訳で。


 その軍事力を支える連邦最大の軍需拠点たる惑星『トゥーラ』。先の宣戦布告の折、最初の攻撃目標と断言した事で、連邦は彼の地を護るべく多くの戦力を結集させ迎え撃つ姿勢を取っている。穴熊を決め込んだとも言えるだろうか。で、そんな連邦に対し通商破壊戦により出血を強いつつ、ボルジア共和国との前線を支える拠点の1つと、その後方拠点たる惑星『アナディル』を経験値稼ぎに攻略した訳だ。


 サウサンが主導する通商破壊戦は、順調に連邦に対して出血を強いている。勿論、彼の国が黙って座視している訳も無く、輸送艦隊に同行する護衛艦隊の規模も大きくなっているし、通商路へは大小様々な哨戒艦隊が数多く出張り、警戒態勢を強化している。まぁ、それで目立つ戦果を出せているかと言えば否だがね。


 その多くを有人艦で運用せざるを得ない連邦に対し、此方の通商破壊艦隊は無人だ。チャンスが来るまで、じっくりと姿を潜め待ち続ける事が出来る。勿論、相応の戦力を有しているので一撃だけ加えて離脱するなんて芸当なんかも朝飯前。


 そのお陰もあってか、通商路を航行する連邦軍艦艇の乗組員達は士気の低下が著しいらしい。まぁ、分からなくもないがね。出航から目的地に到着するまで、例え何も起こらないとしても常に緊張を強いられるのだから。何も無ければホッと出来るが、次も無事とは限らない。何時、自分達の番が来るのか、その恐怖は相応のものだろう。


 「さて……。サウサンが準備を進めている例の作戦を皮切りに、本命たる惑星『トゥーラ』攻略に向けた動きが改めて具体化すると思う。流石に、これでも連邦があくまで待ちの姿勢を崩さないっていうならば色々と強硬策を考えるしかないけどな」

 「各地には、工作の甲斐もあってか少しずつ連邦政府への不平不満が溜まり始めている。特に、中央から遠い地域は尚更だな。これで、本格的に通商路がマヒしてもなお動かないとなれば、その不満は更に増大するだろうさ」

 「サウサンの言う様に、連邦の動き次第で大きく此方の取るべき選択肢が変わってくる。ただ、何れの場合にせよ、今までより更に規模の大きい戦いが起きるのは間違い無いし、避けようも無い」


 此方が狙うのは、敵の謂わば力の本丸と言っても良い場所だ。当然、これまでの様にはいかない。策を練り、投入出来る全ての戦力をぶつける必要がある。そして、当然それは今までに無い規模の戦いになる事を意味している。


 「次なる戦。コロニーレーザーは使われますかな?」

 「使いたいところだけど、ぶっちゃけ敵陣深くまでバレずに運ぶってのは不可能に近いと思う。そうなると、敢えて敵の目に晒しつつ運用した方が良いかな」

 「アレの威力ならば、並大抵の軍事要塞や艦隊では鎧袖一触。惑星とて、直撃を受ければ地表の被害は甚大。連邦は、蜂の巣を叩いたが如く慌てふためきますな?」

 「固まれば一撃で甚大な被害を与え易くなり、散開すれば各個撃破がし易くなる。それに、資源と時間を消費したとは言え、元は廃棄されていたコロニーだ。ここ等で使い潰しても問題は無い。戦略兵器ってのは、強力故についつい頼り過ぎるからな」


 以前から、何れかのタイミングでコロニーレーザーを手放す心算ではいた。強力過ぎる兵器ってのは、扱いが難しいし余計な諍いを招く可能性もあるからな。……まぁ、材料になるコロニーと資源、後はドクター率いるラボと時間さえあれば何時でも何処でも再建出来るってのもあるが。何基保有しているかバレない限り、幾らでもブラフとして使えるからな。


 「では、折角ですのでより小型で運搬しやすく、敵前での運用展開も容易な戦略兵器の研究でもしてみますかな?」

 「いや、別に他の戦略兵器が欲しいって意味じゃないからね!?」

 「そうは言われますがな、香月司令官。かつての銀河連邦も、多種多様な戦略兵器を運用し、その勢力圏を維持しておりました。要は、使い方さえ誤らねば良いのですよ。使う相手も無くただの案山子になろうとも、それで平穏が保てるのであれば良いではありませんか?」

 「……まぁ、ドクターの言い分もわかるけどさ」

 「では、その様に」

 「ちょっ!?」

 「実に楽しみですな!」


 なし崩し的に、次世代の戦略兵器開発にGOサインを出してしまった感じだが、嬉々としてラボへの指示を出すドクターを見ると今更ダメだとも言えなくなるわけで。本当に、意思の弱いオッサンでゴメンナサイ。まぁ、実際のところは使わなければ良いだけなんだけどね。ドクターも、オッサンの指示を無視してまでそれらの兵器使用を強行する事は無いし。……逆を言えば、許可さえ出れば躊躇せずに使うのだが。


 「一馬さん。我々が、選択を誤らねば良いのです。ドクターが言う様に、ただの案山子となる未来を創れば良い。そうではないでしょうか?」

 「まぁ、それは否定しないよ。どれほど強力な兵器も、使わない限り唯の金属の塊だからね。……取り合えず、ドクターに任せよう。少なくとも、彼なら変なモノは創らないだろうしさ」

 「なら、それで良いではありませんの? ドクターは、探究者として新たなモノに出会い、私達はこの先の道を切り開く大いなる術を得る。双方、Win-Winな関係ですわ!」

 「……あはは」


 撃たれる側は、決してWinでは無いんだよなって事は、口にしないでおこう。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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