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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第1章:歴史の始まり
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1-28:戦後処理②

戦後処理は続くーよ、どこまでもー。

 翌日の5月27日、朝9時から要塞、コロニー、共和国の実務者による3者協議が始まった。所謂、公式的な形での戦後処理と言うヤツだ。まぁ、実際には共和国本国からの人間は居ないので現場責任者による会合と言えば良いだろうか。

 参加者は、ランドロッサ要塞からは俺と補佐官であるシャンインの2人。コロニー側からは元締めたるコルネス・ディア・サンテスに加え、インフラ担当のディアナ・グ・ティグアン、治安維持担当のグラハム・バッガス、資源担当のマルコ・シザーズの合計4人。共和国からは、暫定的に艦隊指揮官を務める柴犬ことローガン中佐と、副官のコサック少佐。彼らに加えて此方も暫定指揮官を務める、海兵隊のボックス少佐と副官のマルコイ大尉の合計4名。そして、今回の戦闘の原因ともなったフォラフ自治国家のナターシャ嬢とアイザフ大佐もオブザーバーとして参加している。何だかんだで総勢12名もが通信回線越しに集合したのだ。


 「さてと、朝からお集まり頂きありがとうございます。まずはお互いに自己紹介といきましょうか。では私から。ランドロッサ要塞の司令官を務める香月一馬です。彼女は補佐官のシャンイン」

 「司令補佐官のシャンインですわ」


 大体の面子の顔と名前は把握しているが、そうでも無い参加者もいるので自分から名乗る事で会話の流れを作る。例え、砲火を交えた間とは言え、挨拶は大事だからな。シャンインもそれに倣って名乗る。


 『では、次は我々の番だな。第16コロニーガルメデアの統治機構を預かるコルネス・ディア・サンテスだ』

 『コロニーのインフラを預かるディアナ・グ・ティグアンよ』

 『治安維持部隊を預かるグラハム・バッガス』

 『資源担当のマルコ・シザーズと申します』


 我々に続いて名乗りを上げたのは、コロニー側の実務者達。スキンヘッド紳士に、喰えないおばさん、後の2人は初見だな。治安維持部隊を率いるバッガスは元軍人って感じが見ためから伝わってくるし、逆に資源担当のシザーズは学者肌って感じの人物だ。どちらも30代後半から40代前半って所だな。特に後者のシザーズは犯罪者って感じがしないから、何らかの冤罪でもくらってコロニーに追放された口かもしれない。


 『次は、我々だな。共和国軍、第151任務部隊を暫定的に預かるタロ・ローガン中佐だ』

 『同じく、第151隊β艦隊、巡洋艦フリーダムの副長を務めるジロ・コサック少佐です』


 彼らの名前を聞いて、ギリギリの所で噴出さなかった自分の精神力の高さに感謝したい。


 お前ら、南極物語かよ!? 北海道出身か!?


 残念ながら、俺の胸中に浮かぶ疑問に答えてくれる人物など居ない。自己紹介は無常に続くのである。


 『共和国海兵隊、第10海兵師団701大隊の大隊長代理を務めるギル・ボックス少佐だ』

 『……同隊の副官を務めるブラウン・マルコイ大尉』


 顔が引き攣らない様に必死に耐えている内に共和国側の自己紹介が終わっていた様だ。さて、ローガン中佐は既に何度かやり取りが有るので凡その人物像が掴めているが、後の3人は何とも言えないな。胸中複雑過ぎて余りに記憶に残らなかったせいもあるが。まぁ、1名だけ豪い剣幕で俺を睨んでいるけどさ。はて、何か恨みを買っただろうか? オッサンほどの善人が恨みを買う訳ないしな……。


 『フォラフ自治国家首相、ツァーロフ・ベル・モルゴフの娘、ナターシャ・ムル・モルゴフです』

 『フォラフ自治国家軍、特務艦ディーシー号の艦長を務める、バンロック・アイザフ大佐だ』


 最後に、オブザーバーであるフォラフ自治国家の2人が名乗って自己紹介タイムは終了となる。何気にナターシャ嬢のご尊顔を拝見するのは初めての機会だったりする。うん、美人だな。ちょっと、目付きがきつめではあるけれども、それもまた彼女の魅力の内だろう。淡い紫色の髪は腰位まで延ばされていて、思わず目を奪われる。人工的な色合いを感じないから、恐らく天然の髪色なんだろうな。アイザフ大佐? 彼の容姿説明とか誰得だよって事でカット。


 「さて、大まかなにお互いの顔と名前が一致した所で協議と……」

 『待て!』

 「参りって……何ですか、マルコイ大尉?」


 さぁ、話し合いを始めようって所で邪魔が入る。声の持ち主は、先ほどから俺を睨んでいた海兵隊のマルコイ大尉。眼鏡を掛けて神経質っぽいキャラだったし、こういった場で真っ先に奇声を上げる役割を神から与えられている様だ。それにしても、先ほども言ったが俺は恨みを買った覚えは無いのだけれどもね? 戦闘についてだって? 軍人である以上、死は覚悟のうえだろうが。その覚悟が無いなら、軍人なんぞになるなっての。オッサンは、その覚悟がまだ無いけどね!


 『貴様、香月と言ったな? 分かっているのか! ボルジア共和国を敵にする意味を! 理解出来たら今すぐ我々を解放しろ! そうすれば、命だけは助けてやっても構わんぞ?』

 「……さて、馬鹿は無視して話を続けましょうか?」

 『き、貴様!?』

 『マルコイ大尉、口を慎め!』

 『ボックス少佐殿!? あの様な辺境の蛮族に何故!?』

 『我々は、負けたのだ……。彼らの慈悲で今も生きている事を忘れるな』

 『……くっ』


 悔しさで顔を歪めながらも、黙り込むマルコイ大尉。いや、慈悲って訳では無いよ。ただ、コロニー側が労働力を欲しているだけの事。要らないって言われてたら、恐らくだけど宇宙に放り出していただろうさ。共和国へ丁寧に送り返すなんて親切な事はしない。その為の船も推進剤や食料も勿体無いからね。


 「ボックス少佐は現状を的確に理解して頂いている様で何よりです。さて、協議を始めましょう」

 『ふむ。まず何から決めるかね?』

 『我々は、昨日も香月司令官殿とは交渉したが、北星条約に基づく人道的な扱いを求める』


 何から話し合いを始めるかと問うサントスに、人道的な配慮を求めるローガン中佐。まずはその辺から協議を進めるとしよう。人道的な扱いをコロニー側に確約させれば、共和国側は態度を軟化するだろうしな。


 「では、まずは彼ら捕虜の扱いに関してですね。ローガン中佐の仰る通り、彼とは昨晩の話し合いの中で北星条約に基づく人道的な配慮を要塞司令官として約束しています。コロニー側にはこれに追従して頂きたい」

 『……もし、嫌だと言ったらどうするんだい、坊や?』

 「そうですね。喩え話に例え話で返すのもなんですけども、うちの艦隊がコロニー周辺で実弾演習を行う事になるかもしれませんね。その時にうっかり照準がそれて、重要ブロックを吹き飛ばす事になるかもしれません」

 『言うじゃないか。100万近いコロニーの住民を虐殺すると?』

 「喩え話ですよ? 現実にならない事を祈りましょう」


 全く、ティグアンおばさんはどうして話を脱線させたがるんだか。労働力ってのは、適切な食事と睡眠、休憩を与える事で最大限のパフォーマンスを発揮出来るんだよ。暴力等で力尽くに働かせた所で効率は決して向上しない。それ位、分かっているだろうにさ。最初から、コロニー側としても人道に配慮した扱い以外の選択肢なんぞ存在しないんだよ。


 『冗談はそれ位にしておけ、ティグアン。我々は貴重な労働力を少ない代償で得る事が出来るのだ。その程度の配慮など当然の事だろう?』

 『分かっているよ。ふんっ、覚えておきな、坊や?』

 「忘れます」

 『その口、縫い合わせてやるよ』

 「シャンイン、糸切りハサミ用意しておいて?」

 「お任せ下さい!」

 『こいつ等……!』


 何故か、激おこなティグアンおばさんは置いておこう。歳を取ると血圧が高くなるのだろう。俺も気を付けないと。ゴマ烏龍茶だっけ? 端末から注文出来るか後で探してみよう。


 「さて、では人道に配慮する事で各々方で異存は有りませんか?」

 『コロニー側は無い』

 『共和国側も無い。配慮に感謝する』


 取り合えず、1つ目の問題は解決したな。後は、ぶっちゃけメインはコロニー側と共和国側だよな。俺はのんびり観戦と洒落こみたいね。ってか、どうして俺が司会進行役みたいな事をやっているのやら?

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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