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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第5章:「大国の終焉・上」
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5-48:合間の出来事

漸く、ワクチンの予約が出来た。

これで、少しは安心できると良いんだけど。

 「お帰りなさいですわ、一馬様!」

 「あぁ。ただいま、シャンイン」

 「ご無事で何よりです、香月司令官」

 「ありがとう、ドクター」

 「一馬。例の情報は派手にばら撒いておいた。早速、彼方此方が騒がしくなっているぞ?」

 「流石は、サウサンってところかな? まぁ、利用させて貰うさ」


 惑星『アナディル』の現地政府を降伏させたソフィー率いる主力艦隊と合流したオッサン達は、我らが母屋たるランドロッサ要塞へと帰投を果たしていた。ミーティングルームで出迎えてくれたシャンイン達と言葉を交わしつつ、先ずは用意された飲み物で喉を潤す。いやー、生き返るわ。


 「はぁー。やっぱ、此処が一番落ち着くわ」

 「当然ですわ。此処は、一馬様の家ですもの」

 「家か……。確かに、何時の間にか此処が帰る場所になってきたな」

 「帰る場所がある、それだけで人は強くなれるものですぞ?」

 「ドクターの言う通りだ。誰しも、安心できる止まり木が必要だからな」

 「違いない」


 安心できる止まり木か。確かに、何時でも帰れる或いは休める場所があるって安心感はデカいよな。特に、何だかんだと戦闘に身を置いているとどうしても、その手の安心感ってのを欲する様になる。温かい食事と、ゆっくりと休める寝床。気を許せる仲間の存在もデカいな。


 「一馬さん。先の一連の戦闘における最終報告が纏まりましたので、ご覧ください」

 「ありがとう」


 小型端末を卓上に置き、ソフィーから送られてきた戦闘詳報を開く。さて、どの程度の損害になっているかだな、ふむ……。


 「撃沈・撃墜を含め、此方の損害は艦艇8233隻、艦載機4822機…。ミディール436機にランドグリーズも28機か。ぶつかり合った規模からすれば、少ないと見るべきかな?」

 「拠点にて防衛兵器も含め待ち構える相手との戦闘でしたし、20個艦隊相当の戦力に加え、前線拠点1つと中継拠点1つを潰したことを考えれば、問題ありません。そもそも、現在の要塞の建造能力ならば数日で再建される程度の損害ですし」

 「それも、そうだな」


 現状の1個艦隊(定数1780隻)ならば、艦載機隊やミディール隊を含め5個艦隊が48時間で実戦配備可能となっている。そう考えれば、この程度の損害はそれほど気にする必要も無い訳だ。それに、今回の経験がフィードバックされることで、戦闘AIは更に成長する。次に同じ条件で戦ったとしたら、その損害は大幅に減る事だろう。まぁ、同じ条件での戦闘なんて起こり様がないんだけどさ。


 「ドクター、周辺宙域での回収状況は?」

 「損傷艦は、全て修理ドックにて修理が完了しておりますぞ。撃沈された艦の残骸に関しては、連邦軍艦共々端から回収しており、現在のところ戦闘によって生じた残骸の約83%が回収完了となっております。引き続き、工作艦とミディール隊による回収を継続しております」

 「例の偵察特化型巡洋艦に関しては?」

 「軍港の一角にて、鋭意分析と解析を行っております。報告を聞く限りですが、そう時間を要せずに丸裸に出来るかと」

 「分かった。引き続き、よろしく頼む」

 「お任せ下され」


 周辺宙域全体に散らばる無数の残骸達。そのまま捨て置けばただの邪魔なデブリと化すし、或いは敵に情報が渡るリスクともなる。なので、可能な限り回収して漏洩防止と共に資源として要塞の糧になって貰うのが一番利に適っているのだ。


 ドクターには、ランドロッサ要塞でこの宙域に到着してから今までラボでの研究開発と並行して、これらの回収に勤しんで貰っていた。ついでに、鹵獲した例の偵察特化型巡洋艦も解析を進めて貰っていた訳だ。報告を聞く限り、ドクター達の手に余る様なとんでも吃驚メカでは無かった様だ。まぁ、対抗策が直ぐに出来るかは別の話だけどね。


 「サウサン。各国の反応は?」

 「帝国は前線まで距離がある事もあり、状況を静観しているようだな。無論、裏では忙しく嗅ぎまわっているがな? ウチに比べれば大したことは無いが、それなりに諜報にも力を入れているらしい」

 「なるほど」

 「共和国は、猿山の大将が前線への戦力投入を急いでいるな。この機会に連邦側へと前線を一気に押し上げるつもりのようだ。捕らぬ狸の何とやらにならなければ良いが……。で、一方の連邦だが此方からの仕掛けに対しては情報統制を行い混乱をどうにか抑えている。それと並行して、残った拠点への戦力と物資の集中を進めているな。まぁ、統制を掛けているとはいえ、抜け穴なんぞ幾らでもある。連邦の屋台骨に取って致命傷となっていなくとも、小さな見えない傷や跡は必ず残る。後は、それは拡げてやる手助けをするだけだ」


 帝国は、当事者でも無いことからひとまず静観の様相を見せているか。共和国はこれを好機と捉え攻め上がらんと画策し、対する連邦は内部の締め付けを行いつつ、これ以上の失態を避けんと戦力を集めているか。


 「シャンイン。そう言えば、共和国との協議はどうなってる?」

 「あー、それなら停滞中ですわ。中々、条件が纏まりませんの」

 「確か……。停戦、非武装宙域、捕虜引渡し、共闘だったよな? で、捕虜以外は基本的にOK出したと思ったが」

 「停戦に関しては特に問題ありませんの。共和国としても、帝国との停戦がなった以上は対連邦戦に尽力したいですもの。それと捕虜に関してはガルメデア側が否定的でしたし、そもそも交換対象もいませんので此方から突っぱねましたわ。問題なのは、非武装宙域と共闘ですの」

 「んー、非武装宙域は場所の線引き。共闘は、実利より心情的な部分が大きいとかか?」

 「その通りですの。明確な線引きが出来れば、それは共和国の勢力が大きく衰退した事を如実に表しますもの。なので出来るだけ、狭く限られた宙域に収めたい思惑が透けて見えてますわ。一方で、共闘は軍内部に強い反発があるようで、此方も話しが纏まりませんの」


 共和国との停戦協議。恒常的なものではなく、あくまでも連邦を叩くための一時的な措置だ。それはどちらにとっても同様な訳で、だからこそ余計に揉める時は揉めるんだろうな。例え、一時的なものであろうとも、潜在的な敵と手を組むってことに何かと思う連中は多いだろう。


 「取り合えず、停戦だけで良いんじゃないか? 後は非武装じゃなくて、戦闘回避義務って事で良いと思う。それなら、どうにか彼方さんも妥協できるだろ」

 「了解ですの。それで、どうにか纏めてみますわ」

 「あっ、それからフォラフ自治国家に手を出したら即時戦闘再開だと強くいっておいてくれ」

 「勿論ですの。また『ステッサ』にお邪魔(・・・)するって言えば、喜んで首を縦に振る筈ですわ!」


 暫くは、連邦戦に掛かり切りになるからな、少しばかり釘を刺して置くとしよう。戦力を振り分けても良いんだけど、下手に共和国を刺激して余計な事をされても面倒だしな。あくまで、向こうが先に手を出したって体になるようにしておかないと……。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] 追い詰められた連邦が新型機を開発しないように、7番目のコロニーを監視しないと。
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