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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第5章:「大国の終焉・上」
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5-44:惑星『アナディル』攻略戦①

休み中に、少しでも書き溜めを。

 惑星『アナディル』。コールマフ連邦とボルジア共和国が大小数多の衝突を繰り返す最前線から、直線距離にして凡そ18光分の距離にある有人惑星。人口は、惑星全体で約10億人ほど。元々は、辺境に良くある農業を主体とした牧歌的な惑星だったのだが、共和国との関係が悪化し、デブリ帯に彼の国を睨む最前線拠点が設けられた事によって、そこで必要とされる軍需物資の生産及び中継拠点として多額の資金が投入されその姿形が大きく変貌した。


 長閑な農業主体の惑星が、突然の重工業化で劇的なビフォーアフターを迎えたってところだな。まぁ、元から生産されていた食料自体も軍事面で必要な物資だから引き続き生産が続けられているようだが、かつての自然豊かだった頃の面影は鳴りを潜めてしまっているようだ。


 「連邦軍の駐留戦力は、常設で3個艦隊。後は、地元政府による治安維持部隊が幾らか……。辺境とは言え、共和国との最前線を支える重要な軍需拠点だよな? 些か、護りが少なく無いか?」

 「確かに、惑星『アナディル』は最前線を支える重要な惑星の1つではあります。しかし、後方のより大規模な軍需生産拠点に比べてその絶対的な価値は低いものです。それに、最前線に近いが故に敵軍に奪われる事も想定していますし、何よりその最前線を突破してきた敵軍を食い止められるだけの戦力を1つの中継拠点の防衛に予め集めるのは戦力配置の面から考えても極めて非効率です」

 「重要ではあるけど、何が何でも護らなければならない場所でも無いと?」

 「はい。あくまで、後方と最前線を結ぶ、連邦軍の広大な補給網を構築する1点に過ぎません。1点が陥落した程度で、最前線を維持出来なくなってはそもそも意味がありませんので。無論、だからと言って全く影響が無い訳でもありません。実際に、私達が彼の惑星を陥落させれば、連邦軍の対共和国戦に支障が出るのは確実。既に前線拠点の1つを失っていますので、中継拠点の更なる陥落で影響はますます大きくなるでしょうね」


 オッサン達のように、ランドロッサ要塞を失えば早々に詰みになるような状況とは異なり、連邦にとっては拠点の1つに過ぎないか。まぁ、ソフィーの言うように最前線を突破してきた敵を相手に、拠点を護り切るだけの戦力を事前に集めておくってのは非効率だわな。なら、最初からその戦力を最前線に回せって話だし。


 「それと、下手に辺境に戦力を集めると、余計な芽が出る事を助長しかねません。一馬さんもご存じの通り、連邦の政治体制とそれによる一極支配は極めて苛烈なものです。一言で言うならば、従わねば排除される。その様な強権的な体勢である以上、例え最前線を支える拠点の1つであろうとも纏まった戦力が出来上がると言うのは、中央に対して特定の意思を持つ可能性を増長しかねないのです」

 「最前線なら常に使い潰されるからまだしも、その後方拠点ともなれば話は別か。勿論、連邦だって、目や耳となって働く番犬を投入はしているだろうが、それも万全ではない。共和国勢力圏と距離的に近いことも相まって、余計に警戒せざるを得ないか」

 「はい。こう言ってはなんですが、自分達の政治体制が結果的に中継拠点の防衛を脆弱にしているとは何とも皮肉な結果ですね」

 「だな」


 自らの指針で、自身の首を絞めている訳か。連邦って実はマゾなんじゃね?

 まぁ、結果としてオッサン達にはナイスアシストになっているから、問題は無いんだけどさ。それに巻き込まれる、惑星『アナディル』の地元民には幾ばくかの同情を覚えるわ。いや、元から中央に対して反発心を持っていたとすれば自業自得なのか?


 「敢えて、もう1点だけ最もらしい理由を追加するのならば、輸送航路自体には常にパトロールの艦隊が展開して目を光らせていますし、各宙域の警戒に当たる地方艦隊もいます。また、輸送艦隊にも常に護衛艦隊が専従しています。何かあれば、近隣にいるそれらの艦隊も急行できますので、必要以上の戦力配置は不要と言えるかと」

 「色々な都合上の結果って事か。何れにせよ、俺らにとっては都合が良いから構わないけどさ。相手側の事情なんぞを一々勘案してたら、キリが無いからな」

 「はい。我々にとって、重要なのは此方にとってプラスとなり得るかどうかですからね」

 「そうだな。今回は相手のアシストを大いに利用させて貰うとしよう。まぁ、余り時間を掛けると残りの前線拠点に退いていった連中が、慌てて出張ってくるかもしれないが……」


 パトロールの艦隊や、地方艦隊なら数的にも大して問題にはならない。だが、前線拠点から戦力が出張ってくると些か面倒だ。彼らには俺らが仕掛けてくるかもと勘違いし、拠点の護りを固める事に固執していて貰わないとならない。


 可能な限り、短時間で結果を出す必要があるな。まぁ、別に一定期間を占領する訳ではないから、一当てして直ぐに離脱もありではあるが……。その辺は、現地での見極めだな。


 「惑星『アナディル』の攻略に関しまして、サウサンと調整を行い此方が攻勢に出る前に、通商破壊艦隊による連邦軍輸送艦隊及びパトロール艦隊への襲撃を行います。敵がそれらに意識を向けている間に、我々は主力艦隊を持ってして主要な集積拠点と生産拠点を叩きます」

 「流れとしては、手始めに何時も通り電子戦艦による通信妨害。続いて、長距離砲撃とそれに続く艦載機隊による各種衛星網の破壊。その後で、主力艦隊は衛星軌道上に展開している敵の駐留艦隊を叩きつつ、大気圏へと突入を敢行。地表にある集積拠点と生産拠点を可能な限り破壊……」

 「後は、各地にあるエネルギー拠点も並行して叩ければベストですね。エネルギーの供給を絶てれば、中継拠点としての復旧には相応の時間と費用が必要となりますので」

 「前線拠点が1つ落ちた現状で、更に続けて中継拠点が1つ失われれば、この宙域に大きな波風が立つな。惑星『トゥーラ』攻略に向けて、着実に足場をつくらせて貰うとしよう」


 全ては、惑星『トゥーラ』攻略に向けた布石。相手がどれだけ強力無比な国家であろうとも、全てが完璧ことなど有り得ない訳で、そこに付け入る隙は存在する。ジワジワと、足元から浸食していこうじゃないの。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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