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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第5章:「大国の終焉・上」
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5-38:彼の宙は戦場である⑮

最後に勝つのは、パワー。

 「……」


 少しずつだが確実に、此方の艦隊がコールマフ連邦軍の防衛艦隊を追い込みつつある。前線拠点を中心に球形の防御陣形を形成して、各種設置型の兵器類と共に防衛に専念している彼らだが、如何せん戦力の差は大きい。とは言え、こちらも相手の出方を窺いつつなので、決定打には欠ける状況が続く。


 「未だ、敵防御陣形に乱れは見られず。士気は、旺盛の様ですね」

 「……あぁ。それなりに削ってはいるが、これは骨が折れそうだ」


 ジリジリと詰め寄ってはいるものの、相手の突拍子のない行動を警戒しつつなので、どうしても進みが遅い。それに、相手側の士気が未だに高いのも厄介な点。そろそろ、防御陣形に乱れが出てきても良い頃合いかと思っているのだが、未だ綻びは見えず。


 1隻、また1隻と爆散して果てる連合艦。しかし、その穴は直ぐに僚艦によってカバーされる。確実に、その層は薄くはなっているのだが、未だ崩壊には至らず。まぁ、こちらの被害も当初の予定よりかなり少ないので、悪い話ばかりではないのだが。


 「……」


 戦場を、対艦ミサイルや魚雷、砲撃が飛び交い、その合間を、艦載機やミディール隊が縦横無尽を駆け抜け、哀れな獲物を宙のデブリへと変えていく。エンジンをやられ、残弾ある限り砲火を轟かせながらも、救援が来ない限り漂流するしか選択肢の無くなった敵艦を、容赦なく貫く光の矢。配備が進むビーム兵器は、その威力を如何なく発揮し戦果を上げる。


 玉ねぎの皮を剝くが如く、敵艦をひたすら沈める作業。駆逐艦も巡洋艦も、戦艦も母艦も。爆ぜて散るその瞬間までこちらへと一矢報わんとばかりにミサイルや魚雷、砲弾を放ち続けるその姿は、敵ながら見事としか言いようが無い。まぁ、だからと言って手を抜くことも、見逃すこともないけどな。


 「……このまま削り続けてもいいけど、少し挑発してみるか」

 「挑発ですか?」

 「そう。拠点を捨て、脇目も振らず一目散に逃げ帰るならば、今回だけは見逃してやるって内容の通信を、相手に送り付けるんだよ。勿論、国際チャンネルでな?」

 「連邦は、のってくるでしょうか?」

 「さぁ? でも、相手がどの様なつもりであれ。何らかのリアクションは見られると思うけどね?」


 挑発して、簡単にのってくるならばそれでも良い。逆に、これ幸いと撤退を開始するのも良し。最後の一兵まで戦い抜くって覚悟を決めるの良いし、拠点を自爆させるのも有りだ。あくまで、狙いは一石を投じて変化を強制的に起こすこと。


 「では、早速試してみましょう」

 「文面は任せるよ。出来るだけ、相手を挑発しておちょくる様な内容が良いかな?」

 「分かりました」


 さて、どう動くかな?




 「……」

 「……」

 「反応がありませんね?」

 「だな。こりゃ、指揮官に冷静に対処されたか」


 安い挑発には、丸で動じませんでした。相変わらず、陣形を維持しこちらの攻勢をしっかりと受け止めています。まぁ、それでも数が減って少しずつだが情勢はこちらに傾きつつあるがね。どれだけ士気が高かろうと、僚艦のカバーが優れていようとも、絶対数が減れば小さな綻びがで始めるもので。


 それでも、未だに戦意は旺盛であり、こちらの攻撃に負けじと応戦してくる姿勢は決して先ほどまでと何ら変わらない。こうなってくると、ある種の根比べの様相を呈してくるわけだ。まぁ、片や無人艦なので最終的にはオッサン達の方が有利なのは当然の帰結だが。


 「一馬さん。少し話はズレますが。1点、気になった事があります」

 「ん?」

 「連邦艦に対して、電磁パルス兵器の効果が些か薄い様に感じるのですが?」

 「あぁ。確かに、完全なる機能不全を起こしている艦は今までより少ない様に感じるね。……多分、それなりに対策がされているんだと思うよ」

 「対策ですか? まぁ、共和国から私達の情報を得ていたのならば、理解も出来ますが……」 

 「それは、どうだろうね。どちらかと言えば、元から攻防両方の面で研究もしていたと思うよ? どの勢力にしろ、軍艦は高性能な電子部品の塊だからね。どうすれば、効率良く戦えるかを考えれば、どの勢力でも行き着く答えは一緒だろうし」


 相手が沈むまでミサイルや魚雷、砲弾を叩き込むのも1つの選択肢だ。でも、それには費用面であったり、相手も反撃をしてくる以上は彼我の損失なんかを考えなくてはならず、決して最適とは言えないだろう。電磁パルス兵器は、使い方次第ではあるが、低コストで相手を無力化できるメリットがある。


 共和国は、それらの兵器を運用している様子は見られなかったし、対策も為されていたとはお世辞にも言えない。まぁ、連邦も先のフォラフ自治国家近郊宙域での戦闘ではそれらしき様子は見受けられなかったから、対策が普及したのはつい最近の事なのかもしれないが。


 「何れ、現行の電磁パルス兵器では、有効打と言えなくなるかもしれないな。その辺は、ドクターに相談するとしてだ。そろそろ、流れを一気にこちらへと引き寄せたいところだよな」

 「待機させているランドグリーズ隊を動かしますか? 相手がこちらに気を取られ背を向けている今ならば、奇襲の効果は高いかと?」

 「それが呼び水となって、撤退に舵を切ってくれれば儲けモノか。ダメでも、敵戦力を大きく削れるしな」

 「はい。まぁ、その場合は撤退に対する待ち伏せ策は捨てるしかありませんが」


 姿を消し、静かに連邦軍の背面へと回り込んでいたランドグリーズ隊。巡洋艦クラスが搭載している主砲を上回る200㎜ビームキャノンなら、火力面は申し分ない。ただ、正面戦力となるミディール隊との兼ね合いから、艦隊に随行している機体数が少ないのが痛い。


 「よしっ! 盤面が膠着しているって言うならば、強引に動かすとしよう」

 「では、動かしますか?」

 「あぁ、派手に暴れさせてやれ。で、正面のこちらもそれに合わせて火力を上げるぞ? 畳み掛けると相手に錯覚させる」

 「了解しました。主力艦隊、更なる攻勢に出ます」


 火力isパワー。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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