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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第5章:「大国の終焉・上」
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5-34:彼の宙は戦場である⑪

風の向くまま、気の向くまま。

 「……」


 先行するファリアス艦隊とムリアス艦隊が降り掛かる火の粉を払う為に、派手にドンパチかましている。その光をツマミに艦橋でコーヒー片手に、優雅に眺めている今日のオッサンです。あの光の中で、一体どれだけの命が潰え消えていっているのだろうか。


 まぁ、そんなことは直ぐに意識の片隅に追いやられるんですけどね。今更、命がどうだの嘆くほど綺麗な心なんぞ持ち合わせちゃいないのだよ。勿論、外道に喜んで落ちるかと言われれば悩むがね。えっ? 悩むのかって? そりゃ、それしか手段が無ければ仕方が無いでしょ。何事も時と場合によるってことです。


 「一馬さん」

 「ん? どうした?」

 「鹵獲した敵艦ですが、陸戦隊より艦内の制圧が完了したとの報告が届きました」

 「了解。こちらの被害は?」

 「先行報告では、軽傷者が数名でておりますが、任務継続には問題ないとのこと」

 「そうか。念のため、負傷者は艦に下げて治療を受けさせてくれ」

 「では、その様に現場指揮官に伝えます」


 数時間前に、丸裸にした上で鹵獲した連邦軍の偵察特化型巡洋艦。オッサンの護衛という名目でソフィーが主力艦隊に同行させていた陸戦隊を、突入させて艦内の制圧を行っていたのだが。それが無事に完了した様だ。数名の軽傷者だけで完了したと言うならば、成果は十分だろう。


 「艦内の状況は?」

 「はい。戦闘による死傷者多数。艦内の数か所では、火災も発生しましたが鎮火済みです。なお、有毒ガスの類は確認されていません。また、敵艦の将校クラスを複数名拘束したとのこと」

 「負傷者は、病院船に収容し手当してやってくれ。勿論、陸戦隊による監視は厳重にね?」

 「了解しました」

 「将校クラスは、必要ならば手当てを行った上でこっちに連れて来てくれか。可能ならば、個別に隔離した上で、諜報メンバーに尋問して貰おう」

 「手配します」


 ちょっとした思い付きで、今回の主力艦隊にはドクター謹製の病院船を新造し帯同させていた。基本的には、同行している陸戦隊の治療が目的なのだが、今回の様な連邦軍の捕虜に対しても有効となるからな。実際に、今回の様なケースは今後も起こり得るだろう。


 「艦内設備に関しては何か報告が上がってるかな?」

 「そうですね。設備に関しては艦橋を始め、主要な部署では乗組員による破壊作業が行われたようです。情報の取り出しは、厳しいかと」

 「まぁ、予想通りかな。後で、専門チームに徹底的に見て貰うとしよう。最低限、こちらの情報が漏れる様な仕掛けだけは潰しておきたいからね。そうすれば、後は要塞でドクターに丸投げすれば良いし」

 「合わせて、手配しておきます。……きっと、ドクターも喜ばれるかと」


 未だ配備数の少ない偵察特化型の巡洋艦。先の動きを見る限り、此方の動向を掴んでいた可能性が高い。なので、少しばかり無理をして鹵獲を行った。まぁ、内部設備に関しては粗方事前に破壊されてしまうだろうとは予想していので、特に問題はない。ウチには、優秀過ぎる仲間がいる。


 『粉砕されていない限り、製造メーカーから使用用途まで全て暴いて見せましょうぞ。なので、何か気になる物が手に入ったならば、遠慮なくお持ち下され』


 かつて、ドクターがそう言っていたのを思い出す。流石に、艦艇丸ごとは想定していないかもしれないが、物は試しだからな。後で、連絡を入れておくとしよう。で、その下準備という訳ではないが、同行して貰っているドクターとサウサンの部下達に艦内の確認をお願いする。


 殺傷力のあるトラップ系などは、陸戦隊が艦内の制圧時に虱潰しに取り除いているが、ビーコン等の位置情報を送信する仕掛けなど余計なお土産が残っていないとは限らない。餅は餅屋とは良く言ったもので、非戦闘系となれば彼らの得意とするところ。


 「まぁ、何か手に入ればラッキーって感じで気軽に行こう」

 「はい。それと、先ほどの戦闘で被弾した艦艇に関しては全て拠点艦への接舷が完了しました。何れも小破未満で、戦闘行動に問題はありません」

 「了解。取り合えず、先の戦闘に関してはこんなところかな?」

 「そうですね。一先ずは、この程度でしょうか。戦闘詳報に関しては、後ほど纏めた物を端末にお送りしますので、一馬さんは少しお休みになって下さい。当面は、前衛艦隊で問題なく対処が可能ですので」

 「分かった。そうさせて貰うよ。その代わり、俺が戻ったらソフィーも休めよ?」

 「……善処します」


 適度に釘を刺して置かないと、ソフィー達は仕事漬けになるからな。まぁ、彼女達は金属生命体の特性として、人間の様な睡眠を基本的には必要としないらしいが。とは言え、上官として仲間として、彼女達が休みなく働く様な環境は好ましくない訳で。時折、こうして注意をしている。


 「じゃ、頼むよ。何かあったら、呼んでくれ」

 「はい。ごゆっくり、お休みください」

 「また後で」




 艦橋から艦内に設けられた私室へと戻り、ベッドに身体を横たえる。特段、先ほどの戦闘で疲れたという感覚は無いのだが、休める時には休むというのもまた、戦いに身を置く者の義務らしい。自身の感覚では疲れを感じていなくても、肉体は人知れず疲弊しているなんて良く聞く話。万人に適用できるのかはしらんが。


 「……さて、何処まで行けるかね?」


 ボルジア共和国と睨み合うコールマフ連邦の前線拠点は、全部で3か所。先に理想を言ってしまうならば、その全てを叩き潰せれば上々の出来だろう。ただ、無理をしてまで叩く必要が無いのもまた事実だったりする。


 実際のところ、拠点1つを潰すか或いは機能停止に追い込めれば良いかなってのが本音だ。後は、徹底的に後方の補給路を叩いた方が効率が良いと思う。経験値的には旨くは無いが、強力な艦隊であろうとも補給を断たれればその力を十全に発揮する事は困難になるからな。


 そもそも、元を質せば共和国が態勢を立て直す時間を稼ぐのが主目的なわけで。その序に、ウチの経験値稼ぎをやらせて貰うってだけですからね。なので、無理をせず程々のところで撤退したい。まぁ、とは言っても、相手のあることなので全てがこちらの都合だけで決まる訳もないのが頭の痛いところ。


 「風の向くまま、気の向くまま……」


 ついうっかり、全部平らげちゃったになっても良い様に、しっかりと休むとしよう。


 

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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