表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第5章:「大国の終焉・上」
259/336

5-31:彼の宙は戦場である⑧

12億円、下さい(ド直球

 1隻、また1隻と砲撃や魚雷の直撃により爆散して果てる連邦軍の艦艇。先ほどまでは、それなりの対宙砲火が此方にも向けられていたのだが、今は各々の艦に迫り来る魚雷は艦載機、ミディール改への迎撃で手一杯の様子。


 サウサンは、これまではボーナスステージないし初心者ステージだと言っていたが、はてさてどうなのだろうか? まぁ、そもそもの数の差が大きすぎて比較が難しいってのはあるが。……今のところ、友軍に目立った被害は出ていない。


 こちらの1個艦隊にすら満たない規模の偵察艦隊では、時間稼ぎすら怪しい様だ。もし、これが逆の場合ならどうか? 勝つのは無理でも、時間稼ぎ位なら如何様にも出来ると断言出来る。勿論、ドクター謹製の専用機や経験を積んだ戦闘AIの管理下にある艦隊があってこそではあるけどさ。


 『ひとーつ、くーびーをぱっきんちょ!』

 『ふたーつ、くーびーをかっとばせー!』

 「……」


 何故に、首? 相手は軍艦な訳で、生身の敵将ではございません。まぁ、ヘイスァとバイスァの摩訶不思議ワールドは今に始まった事ではないので、気にしたら負けなんだけどさ。確実に、悪化の一歩を辿っている気がしてなりません。


 「2人共、油断だけはするなよ?」

 『あーい』

 『るーい』


 今、ボンバーな世界に出てくる跳んだり・蹴ったり・ダッシュしたりする不思議動物の幻想が見えた気がするのは木の精か? きっと、疲れているんだな。この戦いが終わったら、オッサンは起こされるまで昼寝するんだ。


 「それにしても……」


 次々と僚艦が爆散していながらも、敵艦隊の動きに乱れは見えない。共和国軍の艦隊ならば、そろそろ大きく混乱が起こり始めても良さそうなのにな。この辺も、練度の違いが出ているのだろうか。或いは、そうせざるを得ない理由でもあるのか……。何れにせよ、コイツでの初陣な訳だし良いデータを集めないとな。


 「ソフィー。離脱した艦への追撃状況は? それと、例の魚雷だかはどうだ?」

 『離脱した駆逐艦2隻は、先行させた艦載機隊が捕捉し攻撃を開始しています。そう時間を置かずに、片付けられるかと。それから、魚雷らしき代物に関しては速度的に捕捉は厳しいですね』

 「分かった。なら、魚雷の追尾は中止で良い。バレようが、バレまいがやる事は変わらないからな」

 『了解しました』


 此方の艦に比べて足が遅い駆逐艦ならまだしも、流石に魚雷の追撃は無理があった模様。恐らく、これでオッサン達の接近が敵拠点にも伝わる事だろう。なので、奇襲と言うよりか強襲作戦になる訳ですね。


 「と言う訳だ。ヘイスァとバイスァ。遊んでいる暇は無いぞ? 速攻で皿ごと喰らい尽くせ!」

 『がってん(以下自主規制)』

 『かっぱ(以下同文)』

 『はま(右に同じ)』

 『くら(左にも同じ)』

 『(同文)ロー』


 君達、色々な人に怒られるから、回るお寿司についてはそれ位にしておきなさい。オッサン的には、光物かエンガワが好きです。後、サーモン。子供だって? 良いんだよ、美味ければ何でも。大人だろうと、子供だろうと、美味いモノは美味いで良いのよ。世の中、その位に適当な方が上手く回るものです。


 「……」


 さて、さっさと此処を片付ける為に、仕事に戻りますかね。最大20基の複合兵装ユニットを操作し、主武装たる200㎜ビームキャノンにて敵艦を貫くだけの簡単なお仕事。うん、自分で言っていて中々に意味不明な事をしている自覚はある。でも、仕方が無いよね? それが必要な事だから。


 敵艦から放たれる砲弾やミサイルを最低限の回避機動で後方へと置き去りにし、手隙の兵装ユニットで返礼品をプレゼント。かつての、オグマやミディールでは不可能だった自分の思い描く理想的な機動を叶えてくれるこの機体。


 艦隊旗艦の名を引継ぎし『ラーズグリーズ』は、間違い無くオッサンの半身と言っても過言では無い位に馴染んでいた。先ほどから、敵艦から放たれる砲弾やミサイルが弾ける度に小さな金属片らしきモノが其処ら中にばら撒かれているのだが、それすらこの機体には当たらないからな。


 メインスラスターを小刻みに吹かし、本能の思うがままに機体を駆る。宙という何も遮るものの無い空間を、誰に咎められる事も無く自由に突き進む快感は、何度経験しても良いモノだ。まぁ、司令官なんて立場にあるので、そうそう勝手にはとべませんけどね。


 『かず』

 『まー』

 「ん? どうした?」

 『敵、分かれた!』

 『別れた!』


 敵さんは、数少ない残存艦隊をこのタイミングで2分したか……。起死回生の策を思い付いたってよりかは、恐らく時間稼ぎだろうな。ただ、駆逐艦はまだしも魚雷は既に追撃を諦めた以上、彼らの目的は半ば達成されたと言っても過言ではない状況。今更、火力の低下する艦隊の分割なんぞ無駄だと思うが。


 「まぁ、それを相手が知る由も無いか……」

 『かず』

 『まー』

 『『どーするーる?』』

 「あー、ヘイスァとバイスァでそれぞれ好きな方を叩いてくれ。で、勝った方にはバケツパフェをご馳走しよう」

 『バケツー!』

 『パフェー!』

 「無理すんなよー!」


 まぁ、きっと2人には聞こえていないだろうがね。今まで以上の速度で敵艦を血祭りに上げていくヘイスァとバイスァ。バケツパフェの威力、実に恐るべし。その内、惑星の1つや2つ位なら滅ぼせるんじゃね?


 えっ? お前は何をしているのかって? いやだな、ちゃんと仕事をしてますよ? 今だって、敵艦隊の旗艦と思しき巡洋艦―例の偵察特化型―を20基の兵装ユニットをフル活用して数少ない抵抗手段を端から削り取っている最中です。おっと、今ので最後だな。


 「ソフィー。敵旗艦と思しき艦の兵装と各部スラスターを潰した。可能なら鹵獲、最悪でも残骸だけ回収して曳航を頼む」

 『了解しました』


 これが、ただの巡洋艦だっていうなら容赦なく沈めるところだけど。特殊な偵察特化型の艦ともなればね? これまでに集めていた情報は乗組員達に消されるだろうし、各種装置も最優先で破壊されるだろうが、例え残骸だとしてもドクター達に見せれば色々と分かることもあるだろう。


 「……さて。おっと、今のは冷っとしたわ」


 狙ったのか偶然かは分からないが、こちらの予定針路を丁寧に掠める様に数発の砲弾が通過していった。後ほんの僅かでも速度が速ければ当たっていたかもしれないな。いや、その場合は確実に避けただろうけどね。


 きっと、今のは気を抜くなっていう宙からの警告なのだろう。そう思って、気を引き締めることにする。勝って兜の緒を締めよって言うしね。対コールマフ連邦戦の序盤も序盤のこんなところで被弾しましたじゃ、要塞から金輪際出して貰えなくなるのは明白だし……。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ