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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第5章:「大国の終焉・上」
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5-27:彼の宙は戦場である④

主人公サイド。次回から戦闘!

 6月21日にランドロッサ要塞を発ったオッサン率いる主力艦隊は、25日の昼前には目標宙域の手前まで順調にきていた。道中、そこそこの規模の哨戒網が敷かれていたが、特に発見される事も無くコールマフ連邦の勢力圏内を進軍できていた。そして、後2時間弱で共和国軍と第1防衛ラインを挟んで対峙する、連邦軍の最前線に位置する軍事拠点へと辿り着くってタイミングで、出会った訳だ。


 「ソフィー。相手の動きに変化は?」

 「お待ちください。……現時点では、針路・速度ともに目立った変化はありません。それから、通信内容も傍受している限りでは、平時のものと判断してよろしいかと?」

 「そうか……。んー」

 「かず」

 「まー」

 「「疑問ブクブク?」」


 此方の艦隊の針路上を斜めに横切り形で航行する、連邦軍の偵察艦隊と思しき艦影をレーダーが捉えている。映し出される大きさから、敵さんは巡洋艦と駆逐艦のみの編成の様だ。今の艦隊速度だと、そう時間が掛からず接敵するな。


 これまでも、何度となく連邦軍の偵察艦隊とは遭遇している。だが、何れもドクター謹製の隠匿システムにのお陰で、それらの艦の警戒網を易々と潜り抜けて此処まで来れた。なので、今回も問題無いといきたいところなのだが、どうしても引っ掛かることがある。それは、サウサンから要塞を発つ前日に聞かされていた話だった。




 「新型の巡洋艦?」

 「いや。正確には、既存の巡洋艦を偵察特化型に改良した艦だな」

 「それが、前線に配備されてるって事?」

 「あぁ。今までは、建造コストの問題なんかがあって連邦本国や重要な軍事拠点なんかに、極少数が配備されていただけなんだがな。ここ最近、追加建造されて配備先が増えているようでな?」

 「俺らが向かう先にも、居ると?」

 「連邦の最新の配備計画を解析した限りでは、前線の各拠点に複数隻ずつが配備されている」


 極めて重要機密であろう最新の艦艇配備計画が、既に丸裸になっている事に恐怖と言うか連邦に対する哀れみすら覚える今日この頃、皆様は如何お過ごしでしょうか? 相変わらず、サウサン率いる諜報部門の情報収集能力はヤヴァイ。防諜もヤヴァイレベルらしいし、本当に味方で良かった。


 「それで、サウサンが態々その話を出発の前日に持ってくるって事はだ。……発見される可能性があるって事か?」

 「前にも言ったが、連邦は共和国の様にはいかん。今までの(・・・・)経験則でいったら、痛い目に遭うと忠告しているだけだ。まぁ、一馬なら何とかするだろうがな?」

 「……評価が高過ぎて怖いんだけどね?」

 「私の上官として、これ位で躓くようではな?」

 「あははっ……。善処します」


 笑って誤魔化すしかない。まぁ、サウサンと始めとした皆の期待には可能な限り応えたいのは本心ですよ。ただ、元々はただのしがない一般人だからね。何事も、程々でお願いします。




 「……って話があった訳よ」

 「なるほど。サウサンがそう言うのであれば、確かに警戒するに越した事はありませんね」

 「だろ? まぁ、とは言ってもどうするのが正解かと言われると悩むんだけどね……」


 相手が此方を掴んだかどうか、判断する方法は少ない。例えば、先ほどソフィーに確認して貰った針路や速度、通信なんかに何らかの変化があれば予想は立てやすいのだが。今の所は、何の音沙汰も無し。勿論、既に此方を探知していて敢えて何もしていない可能性もある。その場合、厄介な相手って事になる訳だが……。


 「針路を変更し、揺さぶりを掛けますか?」

 「それも1つの手だよな」


 此方が進路を変え、相手の探知範囲外に出ようとした場合に、相手の出方は2つに1つだ。針路を変えるか、変えない(変えられない)か。変えてきた場合は、確実に探知されており継続して此方へと接触を維持する意思を示した事になる。一方で、変えない場合は本当に此方に気が付いていないか、或いは探知している事を此方に悟られない為に、敢えて針路を維持するかだな。


 現時点で、相手方は針路・速度は変わらず、通信内容も平時のもの。此方を探知しているか否かは不明だが、慎重を期すならば既に探知されている前提で行動するべきだな。勿論、実際には探知出来ていない場合や、確信を抱いていない場合もある。とは言え、それを調べる術は無い。流石に、そんな魔法みたいな手段は無いのよ。


 「……」


 さて、どうするか? 一番避けなければならないのは、前線拠点に報告される事だな。サウサンからの情報では、拠点に駐留している戦力そこまで多くはないし、そもそも整備や乗組員達の休養などで最低限の人員しか残っていない艦も多数あるとの事。そうなると、可能な限り相手に対して迎撃準備の時間を与えたくないところ。


 理想を言うならば、報告をされる前に電子戦を仕掛け通信を遮断。次の定時連絡の前までに片を付け、拠点側が事態に気が付く前に強襲を掛ける。前線拠点の要となる超大型の工作艦や推進剤運搬艦、輸送艦などの支援艦艇と、可能な範囲で施設類を破壊しておきたい。駐留戦力に関しては、ぶっちゃけ拠点さえ潰せば、その戦力は大きく削れたも同然だからな。最悪、火の粉を払う程度でも十分だろう。


 あくまで、この戦闘の目的は表向きは共和国前線立て直しの為の軍事支援、実際にはランドロッサ要塞に所属する戦力の経験値稼ぎとなる。勿論、今後に控えている惑星『トゥーラ』攻略に向けた重要な布石ともなるけどな。なので、出来るだけ連邦に想定外のリソースを割かせる形での、拠点攻撃が望ましい。


 と、まぁ理想をツラツラと述べた訳だが、現実的な戦いといきましょう。既に相手に探知されており、報告は時間の問題と。では、どうすれば良いか? シンプルにいこうじゃないの!


 「……連邦軍偵察艦隊に対し、電子戦による通信遮断からの強襲攻撃を仕掛ける。艦隊速度は、そのままを維持。万が一、敵艦が拠点への情報伝達の為に遁走する様ならば、それを追撃しつつ敵拠点まで一気に駆け抜けるぞ!」

 「了解しました。主力艦隊、第1種戦闘配置! 電子戦スタンバイ!」

 「ラ」

 「ジャー?」

 「メ?」

 「「ジャー?」」

 「炊飯?」

 「「「ジャー!!」」」


 ヘイスァ達に釣られて、ついオッサンも盛り上がっております。仕方が無いよね、だって戦争だもの。 さて、戦争を始めるとしよう。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] 双子の掛け合いが、本田千恵子と荘真由美のチキンラーメンCMを思い出す。
[一言] 昼夜のない宇宙で昼前というのは違和感が・・・ 大体、惑星の自転から作り出した「時間」という概念をどうやって宇宙で運用しているのだろう? 「秘密戦隊ゴレン」 「ジャー」
[良い点] いつも楽しみにしてます。 [一言] >「ラ」 >「ジャー」 >「メ」 >「「ジャー」 >「炊飯」 >「ジャー」 の所で >「ラ」 >「ジャー?」 >「メ?」 >「「ジャー?」」 >「炊…
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