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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第1章:歴史の始まり
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1-24:宇宙は広い

宇宙は浪漫だよ。

 『確かに、私はシーバ族の者だが……』

 「シーバ族? 甲斐とか北海道とか紀州とか土佐とか秋田とか四国とかいるのだろうか……」

 『ほう。貴官は我が部族に詳しい様だな?』

 「他にもいると?」

 『ふむ。貴官が言っているのは、恐らくカーイ族、ホッカイ族、キシュー族、トッサ族、アキータ族、シコク族の事ではないだろうか?』


 共和国側の旗艦である巡洋艦フリーダム号と通信が繋がり、画面一杯に柴犬の顔が映し出された事で、俺は思わず叫んでしまった。いや、流石に吃驚するでしょ!? 言葉を話す犬だぜ? 確かに宇宙は広いし、俺が知らない人類(?)もいるだろうけどさ……。彼らの祖先は、俺が元いた世界の犬達なのだろうか?


 「なるほど。それから、先ほどは取り乱してしまい、失礼しました」

 『いや、そういった反応は珍しく無いのでな、気にしていない。とは言え、謝罪は受け入れよう』

 「貴方に感謝を。さて、降伏と言う事ですが……」

 『あれだけ、見事に打ち負かされたのだ。悔しく無いとは言わんが、負けは負けだ』

 「そうですか、降伏にあたり何か希望は有りますか?」

 『艦隊指揮官として、貴官には北星条約に基づく人道的な対応を要請する』

 「……了解しました。ランドロッサ要塞司令官として人道的な対応をお約束します」

 『感謝する。……後、1つ確認したいのだが?』

 「何でしょうか?」


 北星条約って何って思ったりもするけれども、彼の言い方からして元の世界で言うハーグ陸戦条約やジュネーブ条約などと同等の物と考えれば良さそうだな。捕虜を肉体的或いは精神的に追い詰めて楽しむ趣味は無いから、特に問題は無い。勿論、必要な尋問等は行わせては貰うが。


 『貴官は連邦か? 或いは帝国か?』

 「……」

 「……司令官様。別に答えても問題有りませんわ」

 「そうなの?」

 「どの道、今回の戦闘で我々の存在はバレましたわ。むしろ、堂々と宣言しても宜しいかと?」

 「なるほどね」 


 答えて良いものか悩んだが、シャンインが問題無いと言うならば良いのだろう。何れバレるならば、遅いか早いかの違いだけか。なら、言われた通り堂々と宣言しようか。


 「我々は、何れの勢力にも所属していない」

 『所属していないとは? では、何の目的でこれだけの戦力を有しているのだ?』

 「世界平和かな?」

 『……ほぉ。ふざけて冗談を言っている訳では無さそうだな』

 「まぁ、信じられないでしょうけどね……」

 『大言を吐く者というのは往々にしているが、貴官はその者達とは何か違う様に感じるな』

 「それは誉められているのかな? それとも、実は馬鹿にしているとか?」

 『ふふっ、これでも褒めているつもりだ。それにしても、世界平和とは大きく出たな?』


 まぁ、3大勢力によって戦乱吹き荒れるフォルトリア星系において、世界平和目指してますとか大言を吐くヤツとか、普通は一笑されて終わるのがオチだろうな。


 「縁あって世界を救う事になった新米司令官ですよ」

 『そうか……』


 そのまま黙ってしまうシーバ族の艦長。あれ? そもそもこの人(犬?)の名前すら知らない事に今更気が付いた。むしろ、こっちも名乗って無い。初見の柴犬インパクトが大きすぎて、大事な事を忘れていたわ。


 「今更だけど、改めて名乗ります。香月一馬。香月が家名で、一馬が個人名です。貴官の名は?」

 『これは失礼した、香月司令官殿。私は共和国軍第151任務部隊β艦隊旗艦フリーダムが艦長、タロ・ローガン中佐。出身は、惑星ヤアトのシーバ族はローガン家だ』

 「ヤアト? 大和?」

 『ふむ。昔はヤマトと呼ばれていた時代も有るそうだが、貴官はご存じだったのか?』

 「いや、似ている地名を知っているだけですよ」

 『ほぉ。先ほど、我々の部族を知っていた事と良い、貴殿とは何やら浅からぬ縁がありそうだ』


 縁と言うか、何て言うか。日本犬という元いた国では良く知られた愛玩動物ですなんて、口が裂けても言えないけどね! でも、マジで彼らの祖先は日本から宇宙へと渡ったんじゃないかとは思う。幾ら何でも、色々と繋がり有り過ぎじゃね? しかも名前がタロって、語源は太郎かタロウだよね。


 「あはは、ちなみにニホンもしくはニッポンって単語に聞き覚えは?」

 『そこまで知っているのか!? ニッポンは、……部族に代々伝わる、我らが遠い祖先の暮らしたる故郷の名だ。部族の者以外に知っている者がいたとは驚いた』

 「マジか……」

 『貴殿は一体何者なのだ? 先ほども言ったが、何か浅からぬ縁が有る様に感じる』

 「司令官様。今は、先に降伏に付いての話を進めるべきですわ。未だにコロニー内では戦闘が続いていますし」

 「そ、そうだな。ローガン中佐、個人的な話は後にして事務的な話をしよう」

 『これは、失礼した。話を脱線させてしまったな、すまない』


 色々と驚愕の情報が次々と出てきた事で完全に話が脱線してしまっていた。シャンインが止めてくれなければ、そのままになっていただろう。コロニー外での戦闘は止まったが、宇宙港からコロニー内部での戦闘はまだ終わっていない。まぁ、宇宙港にいる補給艦には降伏が伝わっている様だが、未だに上陸した海兵隊が戦闘を止めた様子は見られない。さて、どうしたものか……。


 「ローガン中佐。貴官には上陸した海兵隊に命令する権利は有りますか?」

 『ふむ、微妙な所だな。151隊司令官のシンクレア大佐なら停戦命令を出せるんだが、私だと従うか微妙だ。下手に刺激すると徹底抗戦を言い出しかねん。奴らには血の気の多いヤツが多いからな』

 「そうですか。では、一応呼び掛けを行って頂けますか? 此方でも対処を考えますので」

 『了解した。それから、艦隊は現状待機で良いのかな?』

 「……無いとは思いますが、下手な行動は慎んで下さい」

 『ローガン家の名において、約束しよう』

 「では、通信は一旦切りますので」

 『承知した』


 巡洋艦フリーダムとの通信回線が切断され、画面がブラックアウトする。静寂が戻る司令官室。俺は椅子に深く腰掛けると、大きく息を吐いた。


 「何だが、物凄く疲れた……」

 「お疲れ様でした、司令官様!」

 『現状、巡洋艦フリーダム以下の共和国艦艇に動きは見られません。引き続き警戒を続けます。それから、第1分艦隊が間も無く第16コロニー宙域へ到着します』

 「シャンインもお疲れ様。悪いけど、コーヒーを貰えるかな? 糖分が欲しいから砂糖多めでお願い」

 「お任せあれですわ」


 コーヒーをいれに行くシャンインの後ろ姿を横目に見ながら、これからの事に思いを馳せる。海兵隊と言う目前の問題も勿論あるが……。そもそもオッサンは、戦後処理とかやった事がありません!

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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