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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第1章:歴史の始まり
23/336

1-23:要塞司令官としての奮闘③

このオチだけは初期から決まってた。

 さて、どうするか? 残りの敵艦は7隻。内1隻は駆逐艦よりも高い火力及び艦隊指揮能力を持つ巡洋艦。ついでに付け加えると、妙に運が良いせいで奇襲からの初撃を躱しただけで無く、その後の攻撃からも生き延びている。幸運艦と言うべきか、艦長以下乗組員の腕が良いのか。何れにせよ、あの艦は今回の戦闘におけるキーマンと言えば良いだろうか。さっさと、沈めたいが生き残りそうなんだよな。


 「さて、どうするか……」

 「迎撃陣形を相手取るのでしたら、現状の艦数で取れる手は多くは有りませんわ」

 「だよな……」

 「あの陣形は1隻でも沈めばその部分の火力が相応に低下しますわ。ですので、4隻を集中運用して狙いを絞るのが1つですわね」

 「なるほど。でも、相手もこっちの動きに合わせて陣形を変えて来るとか無いかな?」

 「仰る通りですわ。あの陣形は、柔軟に各艦を運用する事に長けていますので対応力は高いのも特徴ですね」


 やはり、簡単には行かないよな。艦数では負けている。機動力では勝っている。火力は、投射量では負けているな。でも、見ていた感じ砲弾の貫通力はこっちが圧倒してるな。改アスローン級駆逐艦は既に何発も被弾しているけれども、行動に支障が出るほどの損害にはなっていない。地力の差が大きいのだろうな。これらをどう活かすべきか。


 「こっちの強みは地力の差か。なら、それを活かすしか無いよな」

 「とは言え、余り過信していますと、痛い目に遭いますよ?」

 「至近距離での砲撃戦は避けたいけれども、巡洋艦を仕留めるには仕掛けるしか無いよな」

 『意見を述べても宜しいでしょうか?』

 「ん? 何かアイディアでも有る?」

 『はい。無理に撃沈に拘るべきでは無いかと』


 巡洋艦の撃沈が必要無いって事か? でも、この戦闘で勝つには少なくとも指揮を取っている巡洋艦の撃沈が必要になるのでは無いのだろうか?


 「巡洋艦を撃沈せずに、勝つって事か?」

 『はい。相手の残存戦力を降伏させる事を提案します。過程は変わりますが、結果は我が方の勝利に変わりは有りません』

 「降伏か……」

 「確かに、勝利を得る上で別に敵艦を全て沈める必要は有りませんね。元々補給艦は拿捕する予定でしたし」

 「下手にガチンコでやり合うよりも、可能性が有るならば賭けてみるか」

 「面白そうですわ!」


 撃沈では無く、降伏させて勝利を得る。得られる物が増える訳だし、悪い手では無いよな。でも、どうやって降伏に追い込む? 距離を取って睨み合ってても、相手が降伏するとは思えないしな……。


 「具体的なプランが有るなら、聞かせて貰えるかな?」

 『はい。まず、此方は単艦毎に四方からランダム機動での散発的な攻撃を仕掛けます。これは敵軍の火力を特定艦に集中させず、時間を稼ぐのが目的となります』

 「時間稼ぎ? 時間……、あっ!」

 「どうかされましたか、司令官様?」

 「イースキーだ」

 「そう言えば、コロニーに向かわせてますわね?」

 『はい。イースキーが今回の決定打となります』


 イースキーが決定打になる。でも、イースキーが4機増えた程度で相手が降伏するのだろうか? 確かに、火力は増えるし相手も狙いが付けにくくはなるとは思うけど……。


 「イースキー4機で決定打になるのか?」

 『一般的(・・・)に戦闘機は空母での運用が前提となります。ランドロッサ要塞の事を知らない敵は、第16コロニーとは逆側からイースキーが現れれば、間違いなく母艦となる空母の存在を疑うでしょう』

 「それで? 疑うと降伏に繋がると?」

 『空母は単艦で作戦行動を取る事は有りません。最低でも、巡洋艦クラスが率いる直掩艦隊が複数随伴しています。つまり、此方には戦闘機隊を含む更なる増援が有ると敵に錯覚させられるのです』

 「現状を耐え抜いた所で、増援が来れば一巻の終わりって事か」

 『はい。優秀な指揮官であればあるほど、部下を無駄死にさせる決断は避けるでしょう。イースキーを投入後、相手に何らかの損害が出れば決断をするかと思われます』

 「空母が居ないとバレたら終わりだけど、それまでにどうにか一撃を加えられれば俺らの勝ちか」

 「やる価値は有るかと思いますわ」


 最後の1隻まで戦うとか言われないとも限らないが、今は戦闘AIの判断を信じよう。オッサンの勘なぞ、大した価値は無いが、上手く事が運びそうな予感がする。それに、何でもかんでも殴り合いで解決する必要は無いしな。知略を用いた戦闘も今後必要になるだろうし、今から経験を積むのは悪くない。


 「よし、そのプランで行こう。戦闘AI。各艦はそれぞれ単独で敵艦隊に仕掛けつつ、時間稼ぎを行う。イースキーが現場宙域に到着後、一気に仕掛けるぞ」

 『指令、受託。敵艦隊降伏を目的とした戦闘行動を開始します』


 それまで2隻毎に攻撃を仕掛けていた友軍艦隊が、単艦にバラけて四方から敵艦隊へと攻撃を掛けていく。此方の攻撃に対し相手は陣形は変えず迎撃を開始する。特に巡洋艦と2隻の駆逐艦の火力が集中する、正面方向から仕掛けている2隻の駆逐艦が激しい弾幕に遭っている。でも、地力の差でそれをどうにかいなしながら果敢に攻撃を続けている。


 「イースキーは?」

 『後、2分です。次の回頭後に仕掛けます』

 「よし、ここがヤマ場だな。耐えてくれよ……」

 『友軍各艦、損害率が平均25%超えました。機動性が平均13%低下しています』

 「無理は出来ませんわね」

 「だな。でも、後少しだ」


 今の俺に出来るのは宙域図を見ながら祈るだけだ。此処まで来たのならば余計な口出しはせず、信じて待つのみ。


 『敵駆逐艦に被弾を確認。続けて、イースキー現場宙域へ到着。戦闘行動を開始します』

 「良しっ、間に合った!」

 『敵艦隊に混乱が見られます。もう一押しかと』

 「回避行動は最低限で良い! 一気に押し込め!」

 「決めましょう、司令官様!」

 『敵複数艦に被弾を確認。内1隻は大破確実』


 これで、共和国艦隊は7隻中3隻が手負いになった。内1隻は大破と来ている。戦闘AIの読みが正しければ、そろそろ相手が動くはずだ。それにして、これだけの攻勢の中で未だに大したダメージを受けていないと思われる例の巡洋艦は何なのだろうか? 幸運の不沈艦って言うやつ?


 「粘りますわね」

 「だな。向こうもかなり厳しいと思うんだけどな……」


 まだ、相手に降伏を決断させる一撃には足りないのだろうか?


 『香月司令官。敵旗艦からの発光信号が放たれました』

 「発光信号? 内容は?」

 『降伏です。敵艦隊より降伏の発光信号を確認しました』


 ようやく、相手が降伏した。どうにか、此方は1隻も失わずに済んだな。まぁ、無傷の艦は1隻も無いから終わった後の修理が大変だな。でも、今は勝利を喜ぼう。ディーシー号の時とは違う、共和国正規軍との戦闘での勝利。これから始まる長い戦いの序章。それを無事に乗り切れた事を喜ぼう。オッサン、勝利の雄叫びを……、恥ずかしいからあげない。


 「……ふぅ、終わったか」

 「お疲れ様でした、司令官様!」

 『香月司令官。返信はどうされますか?』

 「降伏を受託。武装解除し此方の指示に従えと」

 『了解しました。直接、相手側と話されますか?』

 「そうだな。敵とは言え、戦った相手だ。礼節は尽くそう」

 『了解しました。共和国側の旗艦と通信回線開きます』

 「さて、どんな人物か……」


 度重なる幸運によって、最後までほとんど無傷で生き残った巡洋艦の艦長。意外過ぎるその存在に、オッサンは思わず叫ばずにはいれらなかった。


 「柴……、犬ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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