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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第4.5章:揺れる宙
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4.5-27:束の間の平穏㉗

まぁ、こうなるよね。

 フォラフ自治国家近隣宙域における、ランドロッサ要塞陣営とコールマフ連邦軍機動艦隊との戦闘は、開戦から10時間余りが経過し勝敗が決まりつつあった。まぁ、ヘイスァとバイスァが口ではめんどー等と言いつつも、嬉々として帰投→休憩・補給・整備→再出撃を繰り返して暴れていたお陰もあるだろう。


 通信とレーダーを潰した上で、いつも通りに指揮命令系統に関わる艦から優先的に叩いていった結果、連邦軍は多くの艦が十分な連携も取れぬまま孤軍奮闘する事になった。まぁ、仕方が無いわな。如何に戦いを有利に進められるかが、勝敗の決め手だし。


 「さてと、もう少し観戦していたいところだけど、そろそろ時間だから行くとしようか。シャンイン、悪いけど留守を頼むよ? それから、ヘイスァとバイスァには決して無理はさせない様に。良いな?」

 「お任せですの。ソフィー、そちらは頼むますわ?」

 「えぇ、任されたわ。貴女も程々にしなさいよ?」

 「当然ですの!」

 「まぁ、何かあったら連絡を頼むよ。此方も、万が一は入れるから」

 「了解ですわ!」


 対コールマフ連邦軍戦も気になるが、今の主目的はパメラ嬢とパルメニア教の決別だ。一昨日に続き2回目の会談となる訳だが、さてさてどうなる事やらね? 中一日おいた事でオルガ支部長も少しは頭が冷えただろう。星託云々を彼が信じたかどうかは怪しいが、それでも今後の事を考えれば彼女の身柄を抑えたいと思うのは当然の帰結だしな。


 何より、上層部がそれを命ずるだろう。オルガ支部長の立場上、パメラ嬢の事を上に報告していないとは思えない。なら、聞かされた上層部がどう動くかは予想がし易い。とは言え、彼らには直接的にどうこう出来る直接的な力は無い。そうなると、動くのは聖戦師団だろうな。


 「……やれやれ、厄介なドンパチが起こりそうだ」

 「嫌そうな言葉とは裏腹に、随分と楽しそうに見えますが?」

 「ん? まぁ、ヘイスァ達が楽しそうに暴れてるのを見るとね?」

 「……なるほど。ですが、今回は私や護衛部隊にお任せ下さい。一馬さんは、パメラさんと共にご自身の安全確保を最優先でお願いします」

 「勿論。生身で無茶はしないよ」


 そう答えるとジト目で此方を見てくるソフィー。はて? 何か変な事を言っただろうか?


 「どうかした?」

 「いえ。初めてコンラッドを訪れた際に、尾行者を躊躇なく撃ったのは、何処のどなただったかと思いまして」

 「記憶にございません」


 そんな昔の記憶なんて既に彼方へとオサラバして貰いましたよ? オッサンは、過去を振り返らない男なんですよ。つねに前向きに、未来志向で進みます!


 「……はぁ。とにかく、無茶な行動だけは控えて下さい。後は私達がどうにかしますので。良いですね?」

 「あっ、はい」


 ソフィーの圧が凄い、圧が。はい、以外の答えを絶対に許してくれないやつだコレ。でも、言われなくてもそこまでの無茶をする気なんて更々無いんだけどね。だって、面倒じゃん。宙なら艦や機体と共に綺麗に吹っ飛んでくれるけど、生身同士だと彼方此方にね?


 「ま、まぁ、兎に角パメラ嬢に声を掛けて出発するとしようか?」

 「了解しました」




 そうこうあって、再びのコンラッド支部である。無事に到着した事から、別に説明する必要も無さそうだけど、道中は特に何も無く終わりましたよ。まぁ、入管が付けている同行者以外に尾行している連中がいるらしいとはソフィーから聞かされたが。教団本部か、或いは聖戦師団の連中かな?


 受付に声を掛けると、直ぐに案内の女性が来て部屋へと案内された。先日とは別の、以前まだ星女だったパメラ嬢と会談をした少し広めの部屋の方だな。先の部屋が空いて無かったというよりか、オルガ支部長以外にも誰か来ていると見るべきか……。


 「多分、オルガ支部長以外にも誰か来るな。大丈夫かな?」

 「あぁ。それこそ今更だろ? 誰が来ても、気持ちは変わらないさ」

 「なら、結構。前回と同様、俺は横で静かにしているから、好きに話を進めてくれ」

 「分かった」


 前回も、そして今回も。会談の主役となるのは、オッサンでは無くパメラ嬢だ。これは、あくまで彼女が教団と完全なる離別・決別を迎える為の通過儀礼に過ぎない。そこに、余計な手出しは不要。何らかの事態が起こらない限りは、出来るだけ大人しく見守るとします。多分ね?


 そうこうしている内に、扉をノックする音が室内に響き渡る。どうやら、待ち人が来た様だ。聞こえてきた足音の感じからすると複数人だな。まぁ、オルガ支部長と飲み物を持って来てくれた案内の女性って線もあるけどね。


 「……失礼する」


 そう言って、最初に入ってきたのは2日振りの再会となるオルガ支部長その人。そして、その後にトレーに幾つかのカップを載せた案内役の女性。最後に入ってきたのは、確か……。


 「……デルモート局長」


 パメラ嬢の呟きを聞いて、思い出した。彼は伝道統括局の局長を務めている、マクシミリアン・デルモートだ。褐色肌の男性で、恐らく立ち振る舞いからして元軍人かそれに近い経験者。確か、共和国軍によって星女や教団幹部が連れ去られた後、本部で混乱の収拾に当たっていた人物だった筈だな。


 全員が着席したのに合わせて、案内役の女性がそれぞれの前に飲み物を配膳してから、静かに退室していった。少しばかりの沈黙の後、先に口火を切ったのはデルモート局長だった。


 「……オルガ支部長から聞いていたが、実際に見るまで信じられんかった。お久しぶりです、星女」

 「デルモート局長も、変わりない様ですね」

 「貴女や教団幹部が共和国に連れ去られた混乱で、少しばかり痩せましたがな? それも、今日までと思えば何てことは無いと言うもの」

 「お言葉ですが、デルモート局長。先にオルガ支部長に話をした通り、私は星女として教団に戻るつもりはありません」

 「えぇ、聞きました。ですが、残念ながら貴女の我が儘に一々付き合うほど、我々に余裕は無いのですよ。未だに、この『コンラッド』を始め各コロニー内での混乱が完全には収まっていない。貴女には、今すぐにでも信徒達に無事を伝え、言葉を掛ける職責があるのです。お分かりですな?」


 どうやら、デルモート局長は端からパメラ嬢とまともに言葉を交わすつもりは無い様だ。自分が決めてきた流れに、彼女を無理矢理にでも乗せるつもりなのだろう。これは、早々に会談は終わりになりそうだな。


 「お断りします。星女としての私は、もう死にました。今の私に、貴方に従う義理はありません」

 「ハハハッ。そこの男と共にいる間に、随分とジョークも上手くなった様だ。……ですが、先も言った様に、貴女の我が儘に何時までも付き合うつもりは無い。我々と共に来て貰いますよ?」

 「力尽くで、私を連れて行くと?」

 「いえいえ、滅相も無い。貴女の意思で我々に同行していただく。……まぁ、多少は手荒な手段も使いますがな? 残念ながら、手段を選んでいる暇は無いのですよ」

 「なっ!?」


 そう言って、懐から取り出した拳銃の銃口をオッサンに向けるデルモート局長。多分、人質に取ったつもりなんだろうけど、甘過ぎだよね? 誰に対して、銃口を向けていると思っているんだ?


 オッサンだぞ!


 パァッン!!


 室内に響き渡る銃声、くぐもった奇声を挙げて片腕を押させるデルモート局長。驚愕の表情を浮かべるオルガ支部長に、何処か冷ややかな視線をオッサンに向けてくるパメラ嬢。


 「……き、貴様っ!?」

 「いや、人様に銃口を向けて無事に済むとでも思ったのか?」


 見る見る内に、どす黒く変色していく片腕の袖部分をもう片方の手で強く抑えながら、額に脂汗を浮かべオッサンを睨み付けるデルモート局長。いや、睨まれてもね? 銃口向けられたから、護身用の拳銃で腕を撃ち抜いただけですよ? 正当防衛です。うちの愉快ちゃん達風に言うならば、()られる前に()るですね。なので、睨まれるとか甚だ心外です。


 「……お前、容赦無いな」


 思わず口調が素に戻ったパメラ嬢にすら、何故か責められる始末。いや、銃口を向けられたら、誰だって撃つでしょ!?

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] 簡単に他人へ銃を突きつける奴ほど自分がそれをやられる覚悟がないんですよねぇ。 もう面倒だからプチッと潰してしまいたい。敵対行為されたから正当防衛主張できますしねぇ。 えっ、過剰防衛?知らな…
[一言] 懐に手を入れて銃を向けるまで待ったんだから、容赦してると思う。 米国は懐に手を入れた瞬間に撃たれるしねぇ。 武士社会でも刀の濃口切ったら。抜いたと見なされて命のやり取り始まるんだから それ…
[気になる点] なんでソコで頭を撃ち抜かないの? そ~したら話が早いのに。
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