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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第1章:歴史の始まり
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1-22:要塞司令官としての奮闘②

終わらない……だと!?

次へ続く。

 追跡してきた2隻の駆逐艦を沈めた事で、此方へと向かっていた貨客船ディーシー号の安全が確保された。さて、此処からはコロニー側での戦闘となる。いよいよ、本番だな。


 「さて、状況はどうなっている……?」


 第16コロニーを中心とした宙域図と、正面ディスプレイに表示された宇宙港の状況を合わせて確認していく。どうやら、既に補給艦は全艦が宇宙港へと入港した様だな。映像で見る限り、海兵隊及び戦闘車両が上陸を開始している様だ。タイミングとしては上々と言って良いだろう。あの状況ならば補給艦は実質的に行動不能と言って良いだろう。下手に動かれるのも厄介だからな。補給艦は最低限の自衛装備しか無いらしいが、宇宙港に入港中ならそれすら使用出来なくなる。


 「よし、補給艦は問題無いな。残りの敵艦隊は?」

 『ボギーαが宇宙港周辺の警戒を、βとγが臨時艦隊を編成して周辺宙域の警戒を開始した様です』

 「これは、運命の女神は俺達に微笑んだかもな」

 「女神すら味方に付ける、流石は司令官様ですわ!」

 「あはは……」


 シャンインはこうやって何だかんだと俺を持ち上げてくれる。嬉しいけれども、それで勘違いしないようにしないとな。上手く行っている時ほど、気を付けて無いと痛い目にあう。自重、自重。


 「よし、戦闘AI。第2分艦隊は攻撃開始。目標はボギーα!」

 『指令、受託。第2分艦隊、戦闘開始します』

 「いよいよですわね?」

 「あぁ、今回の山場だな」


 先ほどの戦闘は序章でしかない。今度は4隻で、此方の3倍以上にもなる13隻を相手にしなくてはならない。個艦毎の性能差は有れど、向こうには巡洋艦が3隻もいる。戦闘の趨勢は最初の一撃で如何に巡洋艦を沈めるかだ。


 「コロニー外部の映像に切り替えてくれ。状況を正確に把握したい!」

 『了解しました。映像、切り替わります』

 「巡洋艦を確実に沈めろ! 敵に立て直す時間を与えるな!」

 『戦端、開きます』

 「交戦……、開始ですわ!」


 コロニーの凹凸をレーダーからの盾代わりに使いつつ、十分な加速をした改アスローン級駆逐艦2隻が上方から艦隊中央を突破するコース取りでボギーαへの攻撃を開始する。艦砲射撃と共に、艦首左右から発射される対艦魚雷。敵艦隊は、エンジンをほぼ停止させていたのか、まともな回避行動すら取れずに初撃を受けた。艦橋とエンジン部分を砲弾が撃ち抜き、止めの対艦魚雷が船体中央に2発突き刺さった。駆逐艦より大型の巡洋艦の船体が内側から膨らみ、そして火の玉となって爆散していく。自分でやらせておいて何だけど、戦闘AIって容赦無いな。まぁ、下手に舐めプして、味方艦を失うよりマシだけどさ。

 ボギーαの被害はそれだけでは終わらないし、終わらせない。追加で発射された対艦魚雷1発の直撃を受けた駆逐艦が、爆発によって艦首を圧し折られた、無残な姿を晒しながら明後日の方向へと漂流していく。あれは、大破と見て良いだろう。まぁ、かつての大戦で艦首を失った艦が、後進で帰還したとか何かで読んだ様な気もする。


 『司令官。ボギーβ、γ。αに向けて移動を開始しました。救援に向かうものかと』

 「よし。頃合いだろう。第3分艦隊、攻撃開始! βとγの巡洋艦を喰らってやれ!」

 『指令、受託。第3分艦隊、戦闘開始します』

 「盛り上がって参りました!」

 「実況かよ!?」


 方向性がズレたシャンインにツッコミを入れつつ、俺はディスプレイに映し出された第3分艦隊へと目をやる。僅か2隻の駆逐艦で構成された第3分艦隊。一方のボギーβ、γは総数8隻からなる艦隊だ。実に4倍の差ともなるが、奇襲で艦隊の軸となる巡洋艦を沈められれば状況は大きく傾く。


 「第2艦隊は……、回頭中か。やっぱ、速度が有る分だけ回頭してくるだけで結構時間掛かるな」

 「そうですね。それだけは、何時の時代も悩みの種です。かと言って、速度を落とせば袋叩きにされるだけですからね」

 「脚の速さも善し悪しか……」

 『第3分艦隊、交戦開始』

 「頼むぞ!」


 ボギーαの救援に向かったβ及びγの側面へと第3分艦隊が奇襲を仕掛ける。流石に、αが狙われた事で警戒していたのだろう、複数の駆逐艦から艦砲射撃による迎撃が次々と向かってくる。しかし、脚の速さでそれらを最小限のスラスター制御のみで回避していく、第3分艦隊の改アスローン級駆逐艦。あっと言う間に、彼我の距離を縮め必殺の間合いへと潜り込む。最初の標的となったのは、当初の目的通り2隻の巡洋艦だった。第2艦隊と同じく、艦砲射撃及び対艦魚雷が襲い掛かる。


 『敵駆逐艦に命中弾、複数。続けて、敵巡洋……いえ駆逐艦に命中弾、複数』

 「……今のは、庇ったのか!?」

 「それは、どうでしょうか? 偶発的に射線上へと入ってしまったのでは?」

 「どっちにしろ、巡洋艦が1隻残ったのが痛いな」

 『更にもう1隻、駆逐艦に命中弾を確認』


 ディプレイには方向や距離の影響で映し出されない情報も、現場の駆逐艦と直接的に繋がっている戦闘AIは詳細を逐次報告してくれる。


 「第2の方は、2隻が戦力外になったのは確実だな。第3の方はどうだ?」

 「初撃を受けた駆逐艦2隻と巡洋艦は戦力外と考えて良いのでは? 何れの艦も脚が完全に止まっていますので」

 「これで残り8隻か。艦数の差はまだ有るな……」

 「回頭完了した第2艦隊、ボギーβへ攻撃開始しましたわ」

 「ん、β? αじゃなくて?」

 『巡洋艦の撃沈を優先しますので、攻撃目標を変更しました』

 「なるほど。確かに残艦の中で最大の脅威は巡洋艦だな」


 何だかんだ、戦闘AIは状況を見つつ適切に駆逐艦を操艦してくれている様だ。これも学習しているって事なのだろうか。


 『敵駆逐艦に命中弾、複数。爆散を確認』

 「これで残り7隻か」

 「はい。ですが、またしても巡洋艦を仕留め損ねましたわ」

 「運が良いと言うべきか……」


 ボギーβの巡洋艦は何だかんだで初撃も味方艦が盾になって生き残っているし、その後の第2分艦隊による攻撃も他の駆逐艦が被弾した結果、生き残っている。戦場で生き残る強運が、あの艦に宿っていると言うのだろうか。


 『敵残存艦、集結を開始しました』

 「あちゃー。参ったな」

 「巡洋艦1隻に駆逐艦6隻ですか。密集陣形で弾幕を張られると中々に厄介ですね」

 「戦闘AI。一旦、各艦距離を取らせてくれ。此方も態勢を立て直そう」

 『指令、受託。両艦隊、警戒態勢へと移行します』


 本当ならば、このまま勢いに乗って一気呵成に残存戦力を叩きたい所だけれども、どうにもあの巡洋艦の運の良さが気になる。敢えて敵に密集陣形を取らせて、あの艦の逃げ場を減らしてから仕掛けた方が良いかもしれない。


 「戦闘AI。敵艦隊の隊形は?」

 『巡洋艦を中心に、駆逐艦2隻ずつ3方向へ展開していますね』


 宙域図で見ると、角の潰れた三角形と言った所だろうか? 密集って言うからもう少し各艦の距離を詰めているのかと思ったが、意外と開いている様にも思える。


 「シャンイン。アレが密集陣形って言うのか?」

 「いえ、アレは迎撃陣形ですわ。意図的に狙い易い部分を作り出し、相手を誘い込む事を目的としています」

 「成る程。確かにそう言われると、狙いたくなる部分がある様な?」

 「実際には、その場所に各艦の射線が効率良く重なるので火力を集中出来ます」


 罠へと食い付いて来た敵を、逆に喰い殺すって訳か。あの手の艦隊陣形も勉強しないとな。相手の罠に馬鹿正直に入り込む未来だけは避けたい。実際には、戦闘AIなりソフィーやシャンインが止めてはくれるだろうけどさ。オッサン、余り恥をかきたくは有りません!




お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 割りと細かい設定書いてくれてて楽しんでます。 基本無料重課金(命Bet)は程ほどに [気になる点] 1-20「駆逐艦ボールダーがフリーダムと所属不明艦との間に艦体を滑り込ませてしまった為に…
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